記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第7章 家族

第82話 師弟

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「応答せよ! こちらジフウ! 全隊員、状況を伝えろ!」

 ジフウさんは"無線"という道具を使って他の黒蛇部隊に連絡を取り始めました。
 "無線"は距離が離れていても連絡が取れるようです。

『……こちら、ボブ。隊長、すまなイ。オクバは亜人隊を別動隊に分けテ、マカロンを攫わせタようダ』
「小癪な真似してくれるぜ。亜人隊がどこに集まるかは分かるか?」
『……調査中ダ。分かり次第報告スル』

『こちら、アーサーね! シットよ! エネミーサイドがワンランクオーバーね!』
「アーサー、お前は王都に戻って救援要請をしろ。……俺達の頼みじゃダメ元だがな」

『こっちゃ、ポール! "ドク"さ動きますばい。すぐさ戻りやす!』
「分かった。そのまま"ドク"の護衛についてくれ」

『押忍! こちら、トム! オジャル伯爵が動いたで、押忍! 向かう先は"フォーレスの森"で、押忍!』
「フォーレスの森だな! 分かった! 恐らく亜人隊と合流するはずだ! 他の隊員も各々の役目を終え次第、フォーレスの森に向かってくれ!」

 ジフウさんは"無線"を使って他の隊員の報告を聞き、指示を飛ばしているようです。
 "無線"の相手の声は聞こえませんでしたが、ジフウさんの話し方から"フォーレスの森"に亜人隊がいるようです。

「"フォーレスの森"……。そこにマカロンが囚われているんだな?」
「恐らくな。だが亜人隊は魔力で人の気配を感知することができる。このまま突っ込んでも罠に嵌められちまうかもな」

 亜人隊は人の魔力に敏感です。自分達がいつの間にか囲まれていたのも、お姉ちゃんを見つけられたのも、その能力によるものでしょう。

「なら俺が行こう。俺は魔力ゼロだ。連中の能力の範囲外だろう」
「なに!? そうだったのか!? いや、今はその能力とお前の実力に賭けるしかねえな」
「お前はスタアラ魔法聖堂に助けを求めに行ってくれ。あそこなら事情を話せば来てくれるはずだ」
「リョウのいるところかよ……。いやいや、今はそんなこと言ってる場合じゃねえな」

 ゼロラさんはフォーレスの森に向かい、ジフウさんはスタアラ魔法聖堂に救援要請をしに行くようです。
 ジフウさんはリョウ大神官が苦手みたいですが、それでもすぐにスタアラ魔法聖堂目指して走っていきました。

「ゼロラさん! 自分も一緒に行きます!」

 今の自分はゼロラさんと同じ魔力ゼロです! それならば、自分も亜人隊の目を欺けます!

「ダメだ。お前は宿場村に戻れ」

 ……なぜ、ですか? なぜゼロラさんは自分を連れて行ってくれないのですか?

「ここから先はモンスターとの戦いだ。"喧嘩"ではない命のやり取りになる。回復できる味方もいない。今の俺にはお前を守りながら戦う余裕がない」

 ……それは自分が弱いと言いたいのですか?

「お前が一緒にきても無駄死にするだけだ。わかったら大人しく―― !?」

 ドガァア!

 自分は……ゼロラさんに全力で殴り掛かっていました。

「どういうつもりだ? ……ラルフル!」
「今の一撃はどうでしたか? 自分で言うのもなんですが、これでもかなり強くなってます」
「…………」

 自分の拳はガードされてしまいましたが、ゼロラさんを後逸させるほどの威力はありました。
 ゼロラさんが自分を"弱いから"という理由で置いていくなら、"強くなった"ことを証明してみせます!

「どうしても引き下がるつもりはないんだな?」
「お姉ちゃんは……自分の唯一の家族です。たとえ何を言われようと、自分も助けに行きます!」

 自分は大切な人を守るために強くなりました! もう……あの時のように失いたくなんてありません!

「……力で止めるしかねえってことか」

 自分の覚悟を認めてくれたのか、ゼロラさんはこちらに対して身構えます。

「死ぬとわかっている場所にお前を連れていくわけにはいかねえ。男としても……お前の"師匠"としてもだ」
「自分がそんなにやわな男かどうか、その身でお確かめください……!」

 自分もゼロラさんに対して身構えます。

「一発だ。一発俺に直撃させることができれば、お前がついてくることを認めてやる」

 一発。聞くだけなら簡単ですが、今の自分とゼロラさんの力の差では、それも難しいでしょう。
 それでもやるしかありません! 自分は……ラルフルは……マカロンの弟なんですから!
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