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第7章 家族
第76話 勘違い
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「だーからその調味料じゃなくてこっちを入れるのです! 塩と砂糖を間違えるんじゃないのです!」
「し、仕方ないでしょ! 見た目が似てるんだから!」
「……大人しく聖堂の料理人に作ってもらった方がいいんじゃないかな?」
どうも。スタアラ魔法聖堂の偉大なる天才美人神官、リョウ大神官だよ。
現在ミリア様はガルペラ侯爵指南の元、クッキー作りに挑戦中だ。
「それは小麦粉じゃなくて片栗粉なのです! なんで間違えるですか!?」
「あー、もう! なんでこんなに見た目が似通ったものばっかりあるのよ!」
なお、現状は悲惨な模様。
ミリア様はラルフル君に手作りクッキーを渡したいらしく、ガルペラ侯爵に頼んで作り方を教わっているのだが……下手過ぎる。
ミリア様がここまで料理下手だったとは……。
こういうポンコツ要素もポイント高いよね。
「あー……お楽しみのところ、いや、楽しんでるのはボクの方かな? いずれにせよ、もうそろそろ妥協して料理人のクッキーをラルフル君に差し入れる結論に落ち着くべきじゃないかな?」
だってもう十回以上失敗してるし。
「う~……リョウ大神官にたしなめられる日が来るなんて……」
ミリア様の中でのボクのイメージってどうなってるのかな?
「いいから早く料理人のクッキーを持っていくですよ。手作りはまた今度の機会にするです」
「わ、わかったわよ……」
ようやく折れたミリア様を連れてボク達はラルフル君が修行しているシアの洞穴前広場へ向かった。
■
「むむぅ? ラルフル君の他に誰かいるのです」
「一人はゼロラさんに……もう一人は女の人……!?」
「おや、珍しい。マカロンちゃんも来てるとはね」
ゼロラ殿がいなければアタックチャンスだったんだけど。
「そのマカロンちゃんさんはゼロラさんの彼女なのです?」
「いやいや。二人はただの友達だよ。今のところは」
「……なんだかラルフルとマカロンって人が話してるみたいだけど」
ああ、二人ともマカロンちゃんには会ったことなかったのか。そういえばラルフル君もなかったね。
「……すごく嬉しそうに話してるのです」
「本当……。ラルフルのあんな顔、アタシだって見たことないわよ」
本当に嬉しそうに話してるね。
……そういえばマカロンちゃんとラルフル君って容姿が似てるよね。同じ赤い髪に緑色の瞳……。
ふむ、天才のボクには読めたよ。
「ゼロラ殿も粋な事を考えたものだね」
「そうなのです……。まさかミリア様とラルフル君が付き合いだして早々に別の女性を紹介するとはです……」
……あれ? ガルペラ侯爵、何か勘違いしてないかな?
「ガルペラ侯爵、勘違いしないでほしい。あれは……」
「ええ……そうね。ラルフルがアタシよりもあの人を選んだのなら、アタシは潔く身を引くわ……!」
ミリア様!? いや、ミリア様も盛大に勘違いしてるからね!?
「二人とも、落ち着いて二人の姿を見比べてほしい。何か気付くことはないかな?」
「似通った容姿をしてるわね……。アタシとラルフルよりもお似合いっぽい……」
「あれは巷で聞く"ペアルック"に違いないのです!」
似通ってて当然だよね!? それにペアルックは髪や瞳の色までは合わせないよね!?
「アタシよりも断然美人だもん……。ラルフルが心奪われるのも仕方ないわよ……」
「ラルフル君をそのまま成長させて髪を伸ばして胸を付けて女性にしたらあんな感じになるぐらいの美人です!」
だろうね!? そこまで考えれて何で気付かないのかな!?
「よし、二人ともよーく考えてほしい。ラルフル君とマカロンちゃんはすごく似た容姿をしている。それはつまり、二人は家族であると考えるのが自然で――」
「本当に自然と家族に見えるぐらいお似合いよね……」
「うわ!? 二人とも抱き合ったのです! これは完全にクロなのです!」
どうしてここまで言っても気付かないかな!? それに何がクロなんだい!? ボクからしてみれば君達二人の頭の中の方が真っ黒だよ! 完全に曇って何も見えてないよ!
「こうなったらラルフル君に直接問い詰めるのです!」
「アタシも……素直に身を引くためにも話をするわ!」
ダメだね! ボクの手には負えない! もうやだ! スタアラ魔法聖堂に帰りたい! あ、ここもスタアラ魔法聖堂だった! 帰れない!
「ラルフル君! ミリア様という人がいながらこれはどういうことなのです!?」
「ラルフル……。アンタにアタシよりいい人がいるなら、アタシは……!」
二人ともボクの話を聞かずにラルフル君に責め寄っちゃったよ。ボク、もう知~らない。
「あ! ミリアさんにガルペラ侯爵! 丁度良かったです。紹介します。こちらは自分のお姉ちゃんのマカロンです」
「……です?」
「……お姉ちゃん?」
ほら、やっぱりそういうオチじゃないか。ミリア様もガルペラ侯爵も口をあんぐり開けて動かないよ。
「……おい、リョウ神官。大体の事情は察した。お前、あの二人を止められなかったのか?」
「うん、無理」
ゼロラ殿が呆れ顔でボクに尋ねてきた。
無茶言わないでほしい。だって二人とも話を聞かないから……。
「し、仕方ないでしょ! 見た目が似てるんだから!」
「……大人しく聖堂の料理人に作ってもらった方がいいんじゃないかな?」
どうも。スタアラ魔法聖堂の偉大なる天才美人神官、リョウ大神官だよ。
現在ミリア様はガルペラ侯爵指南の元、クッキー作りに挑戦中だ。
「それは小麦粉じゃなくて片栗粉なのです! なんで間違えるですか!?」
「あー、もう! なんでこんなに見た目が似通ったものばっかりあるのよ!」
なお、現状は悲惨な模様。
ミリア様はラルフル君に手作りクッキーを渡したいらしく、ガルペラ侯爵に頼んで作り方を教わっているのだが……下手過ぎる。
ミリア様がここまで料理下手だったとは……。
こういうポンコツ要素もポイント高いよね。
「あー……お楽しみのところ、いや、楽しんでるのはボクの方かな? いずれにせよ、もうそろそろ妥協して料理人のクッキーをラルフル君に差し入れる結論に落ち着くべきじゃないかな?」
だってもう十回以上失敗してるし。
「う~……リョウ大神官にたしなめられる日が来るなんて……」
ミリア様の中でのボクのイメージってどうなってるのかな?
「いいから早く料理人のクッキーを持っていくですよ。手作りはまた今度の機会にするです」
「わ、わかったわよ……」
ようやく折れたミリア様を連れてボク達はラルフル君が修行しているシアの洞穴前広場へ向かった。
■
「むむぅ? ラルフル君の他に誰かいるのです」
「一人はゼロラさんに……もう一人は女の人……!?」
「おや、珍しい。マカロンちゃんも来てるとはね」
ゼロラ殿がいなければアタックチャンスだったんだけど。
「そのマカロンちゃんさんはゼロラさんの彼女なのです?」
「いやいや。二人はただの友達だよ。今のところは」
「……なんだかラルフルとマカロンって人が話してるみたいだけど」
ああ、二人ともマカロンちゃんには会ったことなかったのか。そういえばラルフル君もなかったね。
「……すごく嬉しそうに話してるのです」
「本当……。ラルフルのあんな顔、アタシだって見たことないわよ」
本当に嬉しそうに話してるね。
……そういえばマカロンちゃんとラルフル君って容姿が似てるよね。同じ赤い髪に緑色の瞳……。
ふむ、天才のボクには読めたよ。
「ゼロラ殿も粋な事を考えたものだね」
「そうなのです……。まさかミリア様とラルフル君が付き合いだして早々に別の女性を紹介するとはです……」
……あれ? ガルペラ侯爵、何か勘違いしてないかな?
「ガルペラ侯爵、勘違いしないでほしい。あれは……」
「ええ……そうね。ラルフルがアタシよりもあの人を選んだのなら、アタシは潔く身を引くわ……!」
ミリア様!? いや、ミリア様も盛大に勘違いしてるからね!?
「二人とも、落ち着いて二人の姿を見比べてほしい。何か気付くことはないかな?」
「似通った容姿をしてるわね……。アタシとラルフルよりもお似合いっぽい……」
「あれは巷で聞く"ペアルック"に違いないのです!」
似通ってて当然だよね!? それにペアルックは髪や瞳の色までは合わせないよね!?
「アタシよりも断然美人だもん……。ラルフルが心奪われるのも仕方ないわよ……」
「ラルフル君をそのまま成長させて髪を伸ばして胸を付けて女性にしたらあんな感じになるぐらいの美人です!」
だろうね!? そこまで考えれて何で気付かないのかな!?
「よし、二人ともよーく考えてほしい。ラルフル君とマカロンちゃんはすごく似た容姿をしている。それはつまり、二人は家族であると考えるのが自然で――」
「本当に自然と家族に見えるぐらいお似合いよね……」
「うわ!? 二人とも抱き合ったのです! これは完全にクロなのです!」
どうしてここまで言っても気付かないかな!? それに何がクロなんだい!? ボクからしてみれば君達二人の頭の中の方が真っ黒だよ! 完全に曇って何も見えてないよ!
「こうなったらラルフル君に直接問い詰めるのです!」
「アタシも……素直に身を引くためにも話をするわ!」
ダメだね! ボクの手には負えない! もうやだ! スタアラ魔法聖堂に帰りたい! あ、ここもスタアラ魔法聖堂だった! 帰れない!
「ラルフル君! ミリア様という人がいながらこれはどういうことなのです!?」
「ラルフル……。アンタにアタシよりいい人がいるなら、アタシは……!」
二人ともボクの話を聞かずにラルフル君に責め寄っちゃったよ。ボク、もう知~らない。
「あ! ミリアさんにガルペラ侯爵! 丁度良かったです。紹介します。こちらは自分のお姉ちゃんのマカロンです」
「……です?」
「……お姉ちゃん?」
ほら、やっぱりそういうオチじゃないか。ミリア様もガルペラ侯爵も口をあんぐり開けて動かないよ。
「……おい、リョウ神官。大体の事情は察した。お前、あの二人を止められなかったのか?」
「うん、無理」
ゼロラ殿が呆れ顔でボクに尋ねてきた。
無茶言わないでほしい。だって二人とも話を聞かないから……。
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