42 / 476
第4章 王国の影
第42話 拷問
しおりを挟む
ジャコウ様は魔法での攻撃を続けてきました。
「ハァ、ハァ、ハァ……!」
「しぶとい奴じゃ! 大人しく殺されんか!」
ボォオオ!
「うぐぅ!? ハァ……ハァ……!」
仮にも王国内でも上位に入る魔法の使い手というだけのことはあり、ジャコウ様の魔法は自分を逃がしません。
ですが自分もただ殺されるわけにはいきません! 避けきれなくても耐えることは自分にもできます! 少しでも長く耐えてゼロラさんがこの騒動に気付いてくれるのを待つしかありません!
「おのれぇ……! 魔法が使えなくなったらただの貧弱な小僧だと思っておったのに……! じゃが、さすがにわしに攻撃する気にはなれないようじゃな?」
そう、この人には下手に攻撃を加えることができません。この人は"魔法使い"の技だけでなく"魔術師"の技を使います。"魔術師"の技の中には攻撃してきた相手の体の自由を奪うものがあります。距離を詰めるとこちらが危険になってしまいます。
「では……そうじゃな。例えばこうしてみてはどうじゃ?」
「!? そ、それは……!?」
ジャコウ様はおもむろに懐から宝玉を取り出しました。
"聖女のオーブ"……!
ミリアさんが長年に渡って魔力を注ぎ続けた神聖な宝玉。この国の安寧を願って作ったミリアさんの努力の結晶です。
「おーっと。手が滑ってしまったわい」
その宝玉がジャコウ様の手から零れ落ちてしまいました!
「ダメ! それを壊すわけには……!」
自分は慌てて聖女のオーブを拾おうとジャコウ様に近づきました。
「馬鹿者が! 簡単に引っ掛かりおって!」
ガキン!
自分の両手両足が見えない拘束具をつけられたように動かなくなってしまいました。
「"聖女のオーブ"がこんなところにあるわけないじゃろう? これはわしの魔力で作った偽物じゃよ。ヒヒヒ!」
自分が聖女のオーブだと思っていた宝玉は霧のように消えてしまいました。
うかつでした。よく考えればわかることだったのに……!
「うあぁ!?」
「こうやって四肢を大の字に開かれてしまえば、避けることはおろか、まともに耐えることもできまい」
完全に無防備な態勢を取らされた自分にジャコウ様が魔法を放つ準備をします。
「さて、どこまで耐えれるかのう?」
バチバチバチィ!
「アアアアァアアァ!!!??」
そこからはジャコウ様による一方的な拷問が始まりました。
まともに体を守ることもできない状態で雷や炎、氷や風といった様々な魔法を自分に浴びせてきます。
ジャコウ様は自分が苦しむ様子を楽しんでいるようです。
「あ……あぅ……」
何発か耐えたところで自分の体力が限界に来ました。もうまともに言葉を発することもできません。
意識もどんどんと薄れていきます……。
ミリアさんとまた会う約束をしたのに……。
お姉ちゃんがどうなったかまだ分からないのに……。
ゼロラさんと会えて新しい道を見つけられたのに……。
「た……助け……ゼロラ……さ……」
渾身の力を振り絞ってゼロラさんの名前を呼びました。小さな声しか出ませんでしたが、こんなところで死にたくありませんでした。そんな必死の思いから放った精いっぱいの願いを込めた助けの声……。
「これで終わりにし、テベラァ!?」
バキィイイ!!
凄まじい衝撃音と共にジャコウ様が吹き飛びました。自分にかけられていた魔術の拘束も解かれて地面に倒れこもうとしたところで自分の体は大きくて暖かい腕に抱きかかえられました。
ああ……この感覚はよく知っています……。
「しっかりしろ、ラルフル!」
「ゼロラ……さん……!」
「ハァ、ハァ、ハァ……!」
「しぶとい奴じゃ! 大人しく殺されんか!」
ボォオオ!
「うぐぅ!? ハァ……ハァ……!」
仮にも王国内でも上位に入る魔法の使い手というだけのことはあり、ジャコウ様の魔法は自分を逃がしません。
ですが自分もただ殺されるわけにはいきません! 避けきれなくても耐えることは自分にもできます! 少しでも長く耐えてゼロラさんがこの騒動に気付いてくれるのを待つしかありません!
「おのれぇ……! 魔法が使えなくなったらただの貧弱な小僧だと思っておったのに……! じゃが、さすがにわしに攻撃する気にはなれないようじゃな?」
そう、この人には下手に攻撃を加えることができません。この人は"魔法使い"の技だけでなく"魔術師"の技を使います。"魔術師"の技の中には攻撃してきた相手の体の自由を奪うものがあります。距離を詰めるとこちらが危険になってしまいます。
「では……そうじゃな。例えばこうしてみてはどうじゃ?」
「!? そ、それは……!?」
ジャコウ様はおもむろに懐から宝玉を取り出しました。
"聖女のオーブ"……!
ミリアさんが長年に渡って魔力を注ぎ続けた神聖な宝玉。この国の安寧を願って作ったミリアさんの努力の結晶です。
「おーっと。手が滑ってしまったわい」
その宝玉がジャコウ様の手から零れ落ちてしまいました!
「ダメ! それを壊すわけには……!」
自分は慌てて聖女のオーブを拾おうとジャコウ様に近づきました。
「馬鹿者が! 簡単に引っ掛かりおって!」
ガキン!
自分の両手両足が見えない拘束具をつけられたように動かなくなってしまいました。
「"聖女のオーブ"がこんなところにあるわけないじゃろう? これはわしの魔力で作った偽物じゃよ。ヒヒヒ!」
自分が聖女のオーブだと思っていた宝玉は霧のように消えてしまいました。
うかつでした。よく考えればわかることだったのに……!
「うあぁ!?」
「こうやって四肢を大の字に開かれてしまえば、避けることはおろか、まともに耐えることもできまい」
完全に無防備な態勢を取らされた自分にジャコウ様が魔法を放つ準備をします。
「さて、どこまで耐えれるかのう?」
バチバチバチィ!
「アアアアァアアァ!!!??」
そこからはジャコウ様による一方的な拷問が始まりました。
まともに体を守ることもできない状態で雷や炎、氷や風といった様々な魔法を自分に浴びせてきます。
ジャコウ様は自分が苦しむ様子を楽しんでいるようです。
「あ……あぅ……」
何発か耐えたところで自分の体力が限界に来ました。もうまともに言葉を発することもできません。
意識もどんどんと薄れていきます……。
ミリアさんとまた会う約束をしたのに……。
お姉ちゃんがどうなったかまだ分からないのに……。
ゼロラさんと会えて新しい道を見つけられたのに……。
「た……助け……ゼロラ……さ……」
渾身の力を振り絞ってゼロラさんの名前を呼びました。小さな声しか出ませんでしたが、こんなところで死にたくありませんでした。そんな必死の思いから放った精いっぱいの願いを込めた助けの声……。
「これで終わりにし、テベラァ!?」
バキィイイ!!
凄まじい衝撃音と共にジャコウ様が吹き飛びました。自分にかけられていた魔術の拘束も解かれて地面に倒れこもうとしたところで自分の体は大きくて暖かい腕に抱きかかえられました。
ああ……この感覚はよく知っています……。
「しっかりしろ、ラルフル!」
「ゼロラ……さん……!」
0
お気に入りに追加
134
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。
言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。
喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。
12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。
====
●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。
前作では、二人との出会い~同居を描いています。
順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。
※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【完結済】病弱な姉に婚約者を寝取られたので、我慢するのをやめる事にしました。
夜乃トバリ
恋愛
シシュリカ・レーンには姉がいる。儚げで美しい姉――病弱で、家族に愛される姉、使用人に慕われる聖女のような姉がいる――。
優しい優しいエウリカは、私が家族に可愛がられそうになるとすぐに体調を崩す。
今までは、気のせいだと思っていた。あんな場面を見るまでは……。
※他の作品と書き方が違います※
『メリヌの結末』と言う、おまけの話(補足)を追加しました。この後、当日中に『レウリオ』を投稿予定です。一時的に完結から外れますが、本日中に完結設定に戻します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる