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第4章 王国の影
第40話 対決・たちの悪い男
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「オラァア!」
「ウルァア!」
ドゴォ! ボゴォ!
俺と男が同時に放ったパンチはお互いの顔面に直撃した。
「ウグゥ! 思ったよりやるじゃねえか……!」
「チイィ! テメェも大口叩くだけのことはあるなぁ!」
こいつ……たちは悪いが実力は本物らしい。
パンチの早さも威力も俺と互角だった。これはまずいかもしれない。今まで戦ってきた相手と違って実力差が無いに等しい。
「めんどくせぇ野郎だ! こうなりゃ徹底的に殴り合ってやるよぉ!」
男はパンチの乱打を浴びせてくる。
いや、パンチだけではない。キックも交えてとにかくこちらを押してくる。
「くそ……! ガードしてもこの威力とは……!?」
完全に防戦一方だ。ただ力任せなだけでなく、しっかりとした技も身に着けている。俺と純粋な能力でまともにやりあえる相手がいたとはな……。
「フ……フフフ……!」
「あん? 何がおかしいんだ?」
「いや、おかしいんじゃねえさ」
そう、おかしいのではない。むしろ……
「おもしれえのさ……俺と互角に殴り合える奴がいたことがなあ!」
「ぐお!?」
今度は俺の方からラッシュを仕掛ける。
男も負けじと同じようにラッシュを放つ。
ガチンッ! ゴチンッ!
お互いの攻撃が激しく衝突を繰り返す。パワーもスピードもテクニックも互角の殴り合いが続く。
「世の中は広いもんだな! 俺と素手で渡り合える奴がいたなんてよお!」
「こっちこそ驚いてるぜ! この俺にまともに戦える奴がいたなんてよぉ!」
いつの間にか俺も相手もこの喧嘩を楽しんでいた。武闘家として実力に自信を持っていてもそれと並ぶ相手が突如現れたことで、更なる高みを目指す意義をこの時感じることができた。
■
どれぐらいの時間が経っただろうか。俺も相手も息が切れて攻撃を中断した。
「ゼェ……ゼェ……。まだやるか……?」
「フゥ……フゥ……。いや、やめだ。ひとまずは満足だ……」
元々はこの男を落ち着かせることが目的だったが、いつの間にか俺の方まで熱くなってしまった。
「十分頭も冷えたぜ。悪かったな、変な因縁つけちまってよ」
「こっちこそ悪かったな。俺の方も熱くなり過ぎたぜ」
「ウハハハハ! 確かにな! でもそれぐらいでなきゃ俺も止まらなかったしな!」
「喧嘩両成敗……とは違うが、一件落着だな」
俺と男は奇妙だが爽快な気分でお互いの健闘を称えあった。
「なあ、あんたこの辺りじゃ見ねぇ顔だが、何て名前だ?」
「ゼロラだ」
「ゼロラ? するとあんたが【零の修羅】か?」
こんなところにまで俺の異名は届いていたらしい。
「ああ、そうだ。ここに来たのは初めてでな。それよりお前の名前も聞かせてくれねえか?」
「おっと、そうだな。俺の名は――」
ボォオオ! バチバチィ!
男が名乗ろうとしたタイミングで別の場所から轟音が聞こえた。
炎に雷……。魔法使いでも暴れてるのか?
「た……助け……ゼロラ……さ……」
轟音の中からかすかに声が聞こえた。ラルフルの声だ!
「すまねえ! 俺の連れが騒動に巻き込まれたみてえだ! 話の続きはまた今度だ!」
「お、おい!」
俺は騒動が起こっているところまで急いだ。
「行っちまったな……。ゼロラのことも気になるが、俺も立場上、状況確認ぐらいはしに行ったほうがいいか……」
「ウルァア!」
ドゴォ! ボゴォ!
俺と男が同時に放ったパンチはお互いの顔面に直撃した。
「ウグゥ! 思ったよりやるじゃねえか……!」
「チイィ! テメェも大口叩くだけのことはあるなぁ!」
こいつ……たちは悪いが実力は本物らしい。
パンチの早さも威力も俺と互角だった。これはまずいかもしれない。今まで戦ってきた相手と違って実力差が無いに等しい。
「めんどくせぇ野郎だ! こうなりゃ徹底的に殴り合ってやるよぉ!」
男はパンチの乱打を浴びせてくる。
いや、パンチだけではない。キックも交えてとにかくこちらを押してくる。
「くそ……! ガードしてもこの威力とは……!?」
完全に防戦一方だ。ただ力任せなだけでなく、しっかりとした技も身に着けている。俺と純粋な能力でまともにやりあえる相手がいたとはな……。
「フ……フフフ……!」
「あん? 何がおかしいんだ?」
「いや、おかしいんじゃねえさ」
そう、おかしいのではない。むしろ……
「おもしれえのさ……俺と互角に殴り合える奴がいたことがなあ!」
「ぐお!?」
今度は俺の方からラッシュを仕掛ける。
男も負けじと同じようにラッシュを放つ。
ガチンッ! ゴチンッ!
お互いの攻撃が激しく衝突を繰り返す。パワーもスピードもテクニックも互角の殴り合いが続く。
「世の中は広いもんだな! 俺と素手で渡り合える奴がいたなんてよお!」
「こっちこそ驚いてるぜ! この俺にまともに戦える奴がいたなんてよぉ!」
いつの間にか俺も相手もこの喧嘩を楽しんでいた。武闘家として実力に自信を持っていてもそれと並ぶ相手が突如現れたことで、更なる高みを目指す意義をこの時感じることができた。
■
どれぐらいの時間が経っただろうか。俺も相手も息が切れて攻撃を中断した。
「ゼェ……ゼェ……。まだやるか……?」
「フゥ……フゥ……。いや、やめだ。ひとまずは満足だ……」
元々はこの男を落ち着かせることが目的だったが、いつの間にか俺の方まで熱くなってしまった。
「十分頭も冷えたぜ。悪かったな、変な因縁つけちまってよ」
「こっちこそ悪かったな。俺の方も熱くなり過ぎたぜ」
「ウハハハハ! 確かにな! でもそれぐらいでなきゃ俺も止まらなかったしな!」
「喧嘩両成敗……とは違うが、一件落着だな」
俺と男は奇妙だが爽快な気分でお互いの健闘を称えあった。
「なあ、あんたこの辺りじゃ見ねぇ顔だが、何て名前だ?」
「ゼロラだ」
「ゼロラ? するとあんたが【零の修羅】か?」
こんなところにまで俺の異名は届いていたらしい。
「ああ、そうだ。ここに来たのは初めてでな。それよりお前の名前も聞かせてくれねえか?」
「おっと、そうだな。俺の名は――」
ボォオオ! バチバチィ!
男が名乗ろうとしたタイミングで別の場所から轟音が聞こえた。
炎に雷……。魔法使いでも暴れてるのか?
「た……助け……ゼロラ……さ……」
轟音の中からかすかに声が聞こえた。ラルフルの声だ!
「すまねえ! 俺の連れが騒動に巻き込まれたみてえだ! 話の続きはまた今度だ!」
「お、おい!」
俺は騒動が起こっているところまで急いだ。
「行っちまったな……。ゼロラのことも気になるが、俺も立場上、状況確認ぐらいはしに行ったほうがいいか……」
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