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第3章 汚れ仕事からの脱却
第28話 侯爵邸突入戦①
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ガラララ……
リョウ神官に言われた通り、俺は下水道を通ってガルペラ侯爵邸の裏庭に出ることができた。
幸い辺りには誰もいなかった。物陰から正門の方を見てみると護衛の兵士がずらりと並んでいる。兵士達にはかなりの緊張感が走っており、とても正面から頭を下げて入れる様子ではなかった。
抜け道を使って正解だったな。
「それにしても広い屋敷だってのに、異様に人の気配がないな……」
人員を門の警備に回しているにしてもこの人気のなさはおかしい……。
ボォオ!
俺が疑問を抱いていると上空から突如火球が飛んできた。慌てながらもなんとか避ける。
「ちぃ!?」
「地下からこのガルペラ様のお屋敷に潜入するとは、中々に考えたものね」
火球が放たれたと思われる屋敷のベランダを見ると、一人の女がこちらを見下ろしていた。
「……下手に言い訳しても無駄みたいだな」
「ええ。あなたのことは存じております。ドーマン男爵より我らが主、ガルペラ侯爵の殺害を命じられた、通称【零の修羅】。仮の名をゼロラ。見張りからあなたの姿が途絶えたと聞いて、こちらに戦力を割いて正解だったわ」
女が語り始めるとこれまで隠れていたらしい屋敷の従者達が姿を見せて俺を取り囲んできた。
依頼も俺のことも調べ済みって訳か。それに万が一屋敷に潜入された時の戦力配置。ガルペラ侯爵はやはりドーマン男爵よりもあらゆる面で上手だな。
「なあ、姉ちゃん。見たところあんたは結構な地位にあるみてえだが……」
「私はローゼス。侯爵、ガルペラ様の側近よ」
「なら話が早い。俺は別にガルペラ侯爵を襲いに来たわけじゃねえ。ただ、話を聞いてもらいてえだけなんだ」
「殺しの密命を受けた人間の話を簡単に信じるとでも?」
そりゃあ信じないだろうな。俺を囲む従者たちがすぐにでも俺を襲えるように身構える。
「あなたの噂を聞く限り、このままただで返すわけにもいかないわ」
「だったら牢屋越しにでも話を聞いては……」
「聞けないわね」
完全に聞く耳持たずか。仕方ないか。主を殺そうとしてる相手の話など聞くわけにもいくまい。
……できれば穏便に済ませたかったが、強硬手段に出るか。
「俺の話を聞いてもらえねえなら、ちょいと痛い目を見てもらうことになるぜ?」
「この状況でよくそんなことが言えるわね? 痛い目を見るのはあなたの方でしょう?」
「……警告はしたからな」
従者たちが一斉に襲い掛かってきた。
ドカァ! バキィ!
数は十人ほど。一人一人の実力もそこそこあるが、俺一人で対処できないレベルではない。武器や魔法を使ってくる者もいたが、これぐらいの実力なら、この間戦ったサイバラのほうが手ごわかったぜ。
「くぅ……!? 想像以上に強いわね……」
「今やめてくれればこれ以上の危害は加えない。俺は本当にガルペラ侯爵に頼みがあってきただけなんだ」
ベランダから様子をうかがっていたローゼスは俺をにらみつけながら少し考える。
「……全部隊に伝令するわ! 侵入者ゼロラを無力化しなさい! なんとしてもガルペラ様をお守りするのよ!」
「あくまで主の身が優先か。大した忠誠心だぜ」
ここまで来たらもう力づくで行くしかねえな。頼みごとがある立場なのに失礼極まりないのは承知だが……。
「向かってくる以上、こっちも抵抗させてもらうぜ」
俺は侯爵邸の中へと入っていった。
リョウ神官に言われた通り、俺は下水道を通ってガルペラ侯爵邸の裏庭に出ることができた。
幸い辺りには誰もいなかった。物陰から正門の方を見てみると護衛の兵士がずらりと並んでいる。兵士達にはかなりの緊張感が走っており、とても正面から頭を下げて入れる様子ではなかった。
抜け道を使って正解だったな。
「それにしても広い屋敷だってのに、異様に人の気配がないな……」
人員を門の警備に回しているにしてもこの人気のなさはおかしい……。
ボォオ!
俺が疑問を抱いていると上空から突如火球が飛んできた。慌てながらもなんとか避ける。
「ちぃ!?」
「地下からこのガルペラ様のお屋敷に潜入するとは、中々に考えたものね」
火球が放たれたと思われる屋敷のベランダを見ると、一人の女がこちらを見下ろしていた。
「……下手に言い訳しても無駄みたいだな」
「ええ。あなたのことは存じております。ドーマン男爵より我らが主、ガルペラ侯爵の殺害を命じられた、通称【零の修羅】。仮の名をゼロラ。見張りからあなたの姿が途絶えたと聞いて、こちらに戦力を割いて正解だったわ」
女が語り始めるとこれまで隠れていたらしい屋敷の従者達が姿を見せて俺を取り囲んできた。
依頼も俺のことも調べ済みって訳か。それに万が一屋敷に潜入された時の戦力配置。ガルペラ侯爵はやはりドーマン男爵よりもあらゆる面で上手だな。
「なあ、姉ちゃん。見たところあんたは結構な地位にあるみてえだが……」
「私はローゼス。侯爵、ガルペラ様の側近よ」
「なら話が早い。俺は別にガルペラ侯爵を襲いに来たわけじゃねえ。ただ、話を聞いてもらいてえだけなんだ」
「殺しの密命を受けた人間の話を簡単に信じるとでも?」
そりゃあ信じないだろうな。俺を囲む従者たちがすぐにでも俺を襲えるように身構える。
「あなたの噂を聞く限り、このままただで返すわけにもいかないわ」
「だったら牢屋越しにでも話を聞いては……」
「聞けないわね」
完全に聞く耳持たずか。仕方ないか。主を殺そうとしてる相手の話など聞くわけにもいくまい。
……できれば穏便に済ませたかったが、強硬手段に出るか。
「俺の話を聞いてもらえねえなら、ちょいと痛い目を見てもらうことになるぜ?」
「この状況でよくそんなことが言えるわね? 痛い目を見るのはあなたの方でしょう?」
「……警告はしたからな」
従者たちが一斉に襲い掛かってきた。
ドカァ! バキィ!
数は十人ほど。一人一人の実力もそこそこあるが、俺一人で対処できないレベルではない。武器や魔法を使ってくる者もいたが、これぐらいの実力なら、この間戦ったサイバラのほうが手ごわかったぜ。
「くぅ……!? 想像以上に強いわね……」
「今やめてくれればこれ以上の危害は加えない。俺は本当にガルペラ侯爵に頼みがあってきただけなんだ」
ベランダから様子をうかがっていたローゼスは俺をにらみつけながら少し考える。
「……全部隊に伝令するわ! 侵入者ゼロラを無力化しなさい! なんとしてもガルペラ様をお守りするのよ!」
「あくまで主の身が優先か。大した忠誠心だぜ」
ここまで来たらもう力づくで行くしかねえな。頼みごとがある立場なのに失礼極まりないのは承知だが……。
「向かってくる以上、こっちも抵抗させてもらうぜ」
俺は侯爵邸の中へと入っていった。
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