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第2章 動く運命の前兆
第17話 あくまで悪役
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「ここか。依頼場所の酒場ってのは」
川辺を後にした俺は依頼場所の酒場の前に来ていた。街一番の酒場と言われるだけのことはあり、店の規模は大きく、客の出入りも多い。
「気は乗らねえが……やるとするか」
俺は店の中へと足を踏み入れる。
カラン
「いらっしゃいませ、お客様。申し訳ございませんが、ただいま満席でございまして……」
「席の用意はいらねえ。俺はドーマン男爵の使いだ」
「ド、ドーマン男爵の!?」
俺に話しかけてきた店員にドーマン男爵の名を出すと、店員は怯えて店の奥に目を向ける。
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ
店の用心棒……ギャングレオ盗賊団の連中のお出ましのようだ。
「店員さ~ん。俺たちの出番のようでヤンスね~」
変な語尾の奴が一人。
「ドーマン男爵も懲りないでゴンスな」
変な語尾の奴がまた一人。
「俺たちが『泣かぬ子も喚き叫ぶ』恐怖のギャングレオ盗賊団と知っての狼藉でアリンスか?」
またまた変な語尾の奴が一人。
変な語尾の奴多いな……。
「待ちなおめえら。見たところ今回の刺客はおっさん一人だけか?」
さらにもう一人、今度は変な語尾じゃない奴が出てきた。
……語尾は普通だが、容貌がおかしい。サングラスに半裸って、もうちょっとマシなコーディネートは思いつかなかったのか? ギャングレオ盗賊団ってのは変人しかいないのか?
「サイバラの兄貴! ここは俺ら三人に任せてくださいでヤン……ス……?」
「ホクチ。急に何を黙ってるでゴン……スゥ!?」
「ナンコ。お前何を驚いた顔してるでアリ……ンスゥ!?」
「トーカイ。なんでおめえまで黙っちまうんだ? このおっさんの顔に見覚えでもあんのか?」
ホクチ、ナンコ、トーカイと呼ばれた三人は俺の顔を見て急に固まってしまった。なんだ? 俺の知り合いか? まさか俺が記憶を失う前の……!?
「ああああ!? こいつ、二年前に俺たちが襲った村にいたおっさんでヤンス!」
「ん? 二年前? 村を襲った? ……ああ、あの時の話か」
「思い出したでゴンスか! あの時はよくもやってくれたでゴンスね!」
「あの件は自業自得だろ……。あと、お前らがあの時いたかまでは思い出せない」
「ひどいでアリンス!?」
そうか、こいつら二年前に俺が流れ着いた村を襲った盗賊団だった連中か。こいつらの顔、全然覚えてねえけど。あの時逃れて、今はギャングレオ盗賊団の世話になってるってわけか。
「ほーう。おっさん、この三人とは因縁があるみてえだなー?」
最後の一人、このグラサン半裸はあの時のメンツではないようだ。だが、さっきの話を聞く限りこいつがこの四人のリーダー……つまり。
「おい。お前がギャングレオ盗賊団の幹部だな?」
「おうとも! このおれこそが、栄えあるギャングレオ盗賊団の幹部が一人! "特攻隊長"のサイバラ様だ!」
そう言って派手に名乗りを上げるグラサン半裸……もとい、特攻隊長のサイバラ。見た目こそ奇抜だが、その体躯から豪快なパワーと気迫を感じることができる。
「おっさん、ドーマン男爵の使いだって言ってたな? あいにくこの店の権利はドーマン男爵の手にはねえ。領主の侯爵様がそう言ってるんだからなあ! 分かったらお引き取り願おうかねえ!」
「俺も雇い主のドーマン男爵から『店の用心棒を倒せ』と言われてるもんでな。簡単には引き下がれねえよ」
ザワ ザワ
店の中にいた客がざわつき始める。
「あの男、ドーマン男爵の手下なのか!?」
「ドーマン男爵にこの店をまた取られるわけには……!」
「頼む! ギャングレオの用心棒さん! あんたらだけが頼みの綱だ!」
ああ……。やはりこの状況だと俺が悪者になっちまうのか。むしろ店を守るギャングレオ盗賊団のほうが味方なんだな。本当に胸糞悪い仕事だぜ……。
「随分店から頼りにされてるみてえだな、ギャングレオ"盗賊団"さんよぉ。なんで用心棒してるのかは知らねえがな」
「最近は盗賊団も……その……なんだ? "ターカック・ケイエー"……だったか?」
「兄貴。"多角経営"でヤンス」
「そう、それだ! とにかくそういう経営をする時代なんだよ!」
盗賊団が経営か……。時代も変わったんだろうが、それはもう盗賊団なのだろうか?
そんなことはどうでもいいか。俺の仕事はこの用心棒たちを、ギャングレオ盗賊団の四人を倒すことだ。
「サイバラの兄貴! ここは俺たちに任せてほしいでゴンス!」
「二年前の恨み! ここで晴らさせてもらうでアリンス!」
そう言って俺の前にサイバラの部下三人が躍り出る。
「なんだ? 俺の実力を知らねえわけじゃねえだろ? それなのにかかってくるのか?」
「あの時と同じだと思ったら大間違いでヤンス!」
三人は各々の武器を構える。そしてサイバラが三人に命令を下した。
「ダハハハ! いいだろう! おめえら、そのおっさんをぶちのめして、ギャングレオ盗賊団の恐ろしさをその身に刻んじまいな!!」
川辺を後にした俺は依頼場所の酒場の前に来ていた。街一番の酒場と言われるだけのことはあり、店の規模は大きく、客の出入りも多い。
「気は乗らねえが……やるとするか」
俺は店の中へと足を踏み入れる。
カラン
「いらっしゃいませ、お客様。申し訳ございませんが、ただいま満席でございまして……」
「席の用意はいらねえ。俺はドーマン男爵の使いだ」
「ド、ドーマン男爵の!?」
俺に話しかけてきた店員にドーマン男爵の名を出すと、店員は怯えて店の奥に目を向ける。
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ
店の用心棒……ギャングレオ盗賊団の連中のお出ましのようだ。
「店員さ~ん。俺たちの出番のようでヤンスね~」
変な語尾の奴が一人。
「ドーマン男爵も懲りないでゴンスな」
変な語尾の奴がまた一人。
「俺たちが『泣かぬ子も喚き叫ぶ』恐怖のギャングレオ盗賊団と知っての狼藉でアリンスか?」
またまた変な語尾の奴が一人。
変な語尾の奴多いな……。
「待ちなおめえら。見たところ今回の刺客はおっさん一人だけか?」
さらにもう一人、今度は変な語尾じゃない奴が出てきた。
……語尾は普通だが、容貌がおかしい。サングラスに半裸って、もうちょっとマシなコーディネートは思いつかなかったのか? ギャングレオ盗賊団ってのは変人しかいないのか?
「サイバラの兄貴! ここは俺ら三人に任せてくださいでヤン……ス……?」
「ホクチ。急に何を黙ってるでゴン……スゥ!?」
「ナンコ。お前何を驚いた顔してるでアリ……ンスゥ!?」
「トーカイ。なんでおめえまで黙っちまうんだ? このおっさんの顔に見覚えでもあんのか?」
ホクチ、ナンコ、トーカイと呼ばれた三人は俺の顔を見て急に固まってしまった。なんだ? 俺の知り合いか? まさか俺が記憶を失う前の……!?
「ああああ!? こいつ、二年前に俺たちが襲った村にいたおっさんでヤンス!」
「ん? 二年前? 村を襲った? ……ああ、あの時の話か」
「思い出したでゴンスか! あの時はよくもやってくれたでゴンスね!」
「あの件は自業自得だろ……。あと、お前らがあの時いたかまでは思い出せない」
「ひどいでアリンス!?」
そうか、こいつら二年前に俺が流れ着いた村を襲った盗賊団だった連中か。こいつらの顔、全然覚えてねえけど。あの時逃れて、今はギャングレオ盗賊団の世話になってるってわけか。
「ほーう。おっさん、この三人とは因縁があるみてえだなー?」
最後の一人、このグラサン半裸はあの時のメンツではないようだ。だが、さっきの話を聞く限りこいつがこの四人のリーダー……つまり。
「おい。お前がギャングレオ盗賊団の幹部だな?」
「おうとも! このおれこそが、栄えあるギャングレオ盗賊団の幹部が一人! "特攻隊長"のサイバラ様だ!」
そう言って派手に名乗りを上げるグラサン半裸……もとい、特攻隊長のサイバラ。見た目こそ奇抜だが、その体躯から豪快なパワーと気迫を感じることができる。
「おっさん、ドーマン男爵の使いだって言ってたな? あいにくこの店の権利はドーマン男爵の手にはねえ。領主の侯爵様がそう言ってるんだからなあ! 分かったらお引き取り願おうかねえ!」
「俺も雇い主のドーマン男爵から『店の用心棒を倒せ』と言われてるもんでな。簡単には引き下がれねえよ」
ザワ ザワ
店の中にいた客がざわつき始める。
「あの男、ドーマン男爵の手下なのか!?」
「ドーマン男爵にこの店をまた取られるわけには……!」
「頼む! ギャングレオの用心棒さん! あんたらだけが頼みの綱だ!」
ああ……。やはりこの状況だと俺が悪者になっちまうのか。むしろ店を守るギャングレオ盗賊団のほうが味方なんだな。本当に胸糞悪い仕事だぜ……。
「随分店から頼りにされてるみてえだな、ギャングレオ"盗賊団"さんよぉ。なんで用心棒してるのかは知らねえがな」
「最近は盗賊団も……その……なんだ? "ターカック・ケイエー"……だったか?」
「兄貴。"多角経営"でヤンス」
「そう、それだ! とにかくそういう経営をする時代なんだよ!」
盗賊団が経営か……。時代も変わったんだろうが、それはもう盗賊団なのだろうか?
そんなことはどうでもいいか。俺の仕事はこの用心棒たちを、ギャングレオ盗賊団の四人を倒すことだ。
「サイバラの兄貴! ここは俺たちに任せてほしいでゴンス!」
「二年前の恨み! ここで晴らさせてもらうでアリンス!」
そう言って俺の前にサイバラの部下三人が躍り出る。
「なんだ? 俺の実力を知らねえわけじゃねえだろ? それなのにかかってくるのか?」
「あの時と同じだと思ったら大間違いでヤンス!」
三人は各々の武器を構える。そしてサイバラが三人に命令を下した。
「ダハハハ! いいだろう! おめえら、そのおっさんをぶちのめして、ギャングレオ盗賊団の恐ろしさをその身に刻んじまいな!!」
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