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season3
ジェイマンの願い
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この国の側室は、他国でいうところの愛妾に位置付けられる存在だ。
国王と共に公務を行うのは王妃のみで、正式な場でエスコートされるのも王妃だけ。
側室が側室としていられるのはあくまでも国王の寵愛が続いている間のみであり、例え子を成していようと国王から暇を言い渡されれば即刻立ち去らざるを得ない。
側室の数が多ければ多いほど与えられる寵愛は必然的に少なくなり、生まれた子も継承権こそ得るが王妃の系統が優先される。
つまりは、王家の駒として扱われるに過ぎない。
暇を言い渡される者は王家から多額の慰労金が支払われることが周知されており、生んだ子の数によってその額も増えることから側室達は率先して子を身籠ろうと働きかける。
殆どが、ひとりふたり生んだところでお役御免となるのだが…中には、子よりも国王からの寵愛を求める者が当然だが出てくる。
そして、その為に邪魔な存在を排除しようとする動きも見せるわけで……
「祖父は、多くの側室を迎えながらも祖母の立場は磐石なものとして築き、尊重していた。それまでも、幾度となく祖母や父を害そうとする計略を謀る者はいたけれど…祖父がそれらを見逃すことはなく、その者達は即刻城を出されたそうよ」
血の気が引いた。
もしも…別館で暮らすトレーシアがナディアを手にかけようとしていたら…僕はそれに気付けていたのだろうか……
……きっと…気付くことなど出来ずに……
「王妃やその子を排除できないならば、さらに弱い存在…けれど愛されている存在を狙おうとした時…それは兄王子ではなく、わたくしだった」
弱い存在…
思わず、少し膨らみ始めたナディアのお腹に手を添えてしまった。
もしもこの子が狙われたならば…そう考えただけで怒りが溢れてくる。
そして、ナディアが子を作れないようにしていたのは……と考えてしまう。
「その日、祖父は祖母を…父は母を伴いそれぞれ公務に出て不在だった。恐らく狙ったのでしょうね。嫉妬に駆られ、善悪の判断など出来なくなっていた側室は、ノエルとその子供達と共に過ごしている王女であるわたくしの部屋へと訪れた」
「……そんな簡単に…?…」
「祖父母や父母がいなければ、側室の言うことを止める者などいないの」
そこでまたゾッとした。
僕やジェイマンがいない時、トレーシアは本館に来てはナディアに噛み付いていたという。
そして、自分に宛がわれた侍女を使いないことないこと吹聴し…それが真実とされていた中、僕に愛されている相手なのだからと止める事を躊躇する者がいたら……
「その場に居合わせた者によると、護衛の剣を引き抜きあっという間に斬りかかったそうよ」
「剣を!?そんなこと……」
「その側室は元女騎士でね…男性騎士にもひけをとらない腕前だったらしいわ。でも、まさか側室が帯剣を引き抜くなんて誰も思わない」
「それは…」
「現役の騎士でさえ隙を突かれた一瞬の事だったのに…乳母は…ノエルは反応し、わたくしを抱えるようにして……その刃を背に受けた。自身の子供達もいるというのに…わたくしを…」
……オリバーを亡くした時…ジェイマンと交わした会話が思い出される…
『オリバーは…ぼっちゃまを守り抜くという、騎士としての使命を全う致しました。それは誇られるべきことです』
あの時、ジェイマンはどんな気持ちでその言葉を僕にかけてくれたのだろうか…
「止めに入ろうとする者にも容赦なく斬りつけ、わたくしを庇うノエルは何度もその身に受けた。そして……わたくし達の近くにいたノエルの子供達にも…その刃は向けられてしまった」
「っ……!!」
「子供達へと刃が向いても…泣き叫ぶ声が聞こえても…ノエルはわたくしを決して離さなかった」
「プリシラ……」
流れ落ちる涙を、シャンク侯爵が優しくハンカチで拭っている。
ナディアの涙を拭うのは僕の役目だが、その僕も堪えるのに必死だ……
「……漸く取り押さえた頃には…もう子供達は息絶えていて……わたくしを庇い続けたノエルも、瀕死の状態だった。その時…抱き込む腕の力を弱めた時に見せたノエルの笑みを…わたくしは今も鮮明に覚えているわ」
………ジェイマンは…オリバーと僕に起きた出来事を、かつての王女と娘に…重ねただろうか…
「ノエルは…恐怖で震えていたわたくしに優しい微笑みを見せて言ったの…『ご無事でなによりです』って。それが、ノエルの最期の言葉だった」
「……ジェイマンは……」
「急ぎ登城を命じられ…ノエルと子供達の亡骸と対面して開口一番、わたくしの安否を確認した。かすり傷ひとつないと聞くと笑みを見せ、『臣下としての使命を全うした娘を誇りに思います』と…そう言って、祖父母を始めとしたわたくし達王家に深く礼をしたそうよ」
ジェイマン………………
「その事件は犯人が側室であることを慮られ、表沙汰になることはなく揉み消された。そして…わたくしの心が深く傷付いた事を理由に、ジェイマンは今後一切の交流を絶つことを求めてきた」
「……なぜ…」
「わたくしがノエルや斬りつけた側室を思い出すからと言っていたそうだけど…きっと、ジェイマン自身がツラかったんだと思うわ……わたくしを見れば、同時にノエルと子供達を思い出してしまうでしょうから」
オリバーの父も…トビアスおじさんも……そう思っていたからこそ、僕の元で働く道は選ばなかったのだろうか……
「祖父は慰謝料を支払う意思を伝えたけれど、ジェイマンはそれを固持した。娘はお金の為に命を懸けたわけではない…と。それでも支払うと引かない祖父に、それならば孤児達を救うべき道筋を立てて欲しいと申し出たそうよ」
確かに…二代前の国王が王位についていた頃、大規模な改革があげられたと聞いたことがある。
けれど……やはり異議を申し立てる貴族によって阻まれてしまった、と。
「その後、祖父は王位を退きその座を父へと譲り渡し……ジェイマンとの繋がりは途絶えたままとなった」
「あの……何故…ジェイマンは娘がいたことを秘したのでしょうか……」
王族を守り絶命したならば…悲しくとも悔しくとも、それは名誉とされるはず。
「……それだけ…深く傷付いたのだと思うわ。口端にも話題にあげられないほどに」
「…確かに……そうかもしれません……」
「貴方のお祖父様とお父様は流石にご存知の事だけれど…ジェイマンの事を思えばこそ、口を噤んだんだと思うわ」
僕には……ひとつも知り得なかったこと…
「ジェイマンは、年に一度必ず休みを取っているでしょう?」
「はい…その日だけは何があろうと休ませるようにと父からもきつく………」
「ノエル達の命日なのよ」
普段は休みなど取らないジェイマンだが、年に一度のその日だけは、何があろうと必ず休ませるようにと言われていた。
「……祖父と父は何も…」
「貴方、その理由をどのように受け取った?」
「……辺境に…ジェイマンの故郷に赴くべく…王命があるから……と…」
その内容は王命故に秘匿されており、決して触れてはならぬとの通達が保管されている。
どのような経緯で王命を授かったのかそれも触れてくれるな、と。
何故、ジェイマンが王命を担っているのか。
何故、それが毎年決まった日で何年も続けられているのか…気にならなかったわけではない。
ただジェイマンは辺境の出身だし、辺境伯家と多少の繋がりがあるとは聞いていたから…その関係なのかくらいに考えていた。
「その王命を出したのは父なのよ。ジェイマンに会うことは決してなかったけれど、年に一度は必ず娘の元へ会いに行けるように」
「先代が……」
「そして…あの日以来、繋がりを絶っていたジェイマンから父へ謁見が申し込まれた」
「……え?」
「捕縛されたトビアスの情状酌量を願う為よ。父への謁見を求めたジェイマンは
『かつて辞退した娘や孫達の命の代償を、今求めさせてはくださらぬか』
そう言って、父に温情を求めた」
堪えていた涙が溢れてしまった。
「……ジェイマン…が……温情を……」
「その願いを父は受け入れ、本来なら打ち首とされるところを…先行きのない病人に使われる薬で安らかに逝かせ…その亡骸を家族の元へ返した」
「………っ…」
「きっと…自分自身と重ねたのね……」
あの時…腐敗が始まるからと埋葬されようとするふたりを…最後まで引き延ばそうとしたのは…他でもないジェイマンだ……
「…このタイミングで貴方に伝える気になったのは…貴方達に子が出来たから…だそうよ」
「……え…」
「ジェイマン達使用人は、貴方達家族を守る責務を各々背負っている。けれど、中には内に悪意を秘めし者がいないとも限らない」
「…っ…………」
「特にナディア夫人は…ごめんなさいね、言い方が悪いかもしれないけれど、ある意味で人の悪意に慣れているとは思うの…けれど、貴族特有の優しさという仮面で隠されたものには気付けないかもしれないから…そういった人間もいるということを、覚えていてほしい…それがジェイマンからの伝言よ」
ナディアは、孤児であること…平民の出であることで、様々な悪意をぶつけられてきた。
けれど…仮面の下は…………
「どうして本人から話さないのかって責めないであげてね。話さないんじゃなくて…話せないんだと思うから……」
一掬の涙を流す僕は、コクコクと頷くしか出来なくて……帰ったら、ただ笑って「ただいま」と伝えようと心に決めた。
「喉が乾いたわよね」
明るい声で使用人を呼んだプリシラ様。
シャンク侯爵でさえも涙ぐんでいて、僕とナディアはボロボロ泣いていて…そんな中、侯爵家の使用人達はやはり手際よくその場を整えていく。
そして、渡された冷たいタオルはとてもいい香りがして心が落ち着いた。
国王と共に公務を行うのは王妃のみで、正式な場でエスコートされるのも王妃だけ。
側室が側室としていられるのはあくまでも国王の寵愛が続いている間のみであり、例え子を成していようと国王から暇を言い渡されれば即刻立ち去らざるを得ない。
側室の数が多ければ多いほど与えられる寵愛は必然的に少なくなり、生まれた子も継承権こそ得るが王妃の系統が優先される。
つまりは、王家の駒として扱われるに過ぎない。
暇を言い渡される者は王家から多額の慰労金が支払われることが周知されており、生んだ子の数によってその額も増えることから側室達は率先して子を身籠ろうと働きかける。
殆どが、ひとりふたり生んだところでお役御免となるのだが…中には、子よりも国王からの寵愛を求める者が当然だが出てくる。
そして、その為に邪魔な存在を排除しようとする動きも見せるわけで……
「祖父は、多くの側室を迎えながらも祖母の立場は磐石なものとして築き、尊重していた。それまでも、幾度となく祖母や父を害そうとする計略を謀る者はいたけれど…祖父がそれらを見逃すことはなく、その者達は即刻城を出されたそうよ」
血の気が引いた。
もしも…別館で暮らすトレーシアがナディアを手にかけようとしていたら…僕はそれに気付けていたのだろうか……
……きっと…気付くことなど出来ずに……
「王妃やその子を排除できないならば、さらに弱い存在…けれど愛されている存在を狙おうとした時…それは兄王子ではなく、わたくしだった」
弱い存在…
思わず、少し膨らみ始めたナディアのお腹に手を添えてしまった。
もしもこの子が狙われたならば…そう考えただけで怒りが溢れてくる。
そして、ナディアが子を作れないようにしていたのは……と考えてしまう。
「その日、祖父は祖母を…父は母を伴いそれぞれ公務に出て不在だった。恐らく狙ったのでしょうね。嫉妬に駆られ、善悪の判断など出来なくなっていた側室は、ノエルとその子供達と共に過ごしている王女であるわたくしの部屋へと訪れた」
「……そんな簡単に…?…」
「祖父母や父母がいなければ、側室の言うことを止める者などいないの」
そこでまたゾッとした。
僕やジェイマンがいない時、トレーシアは本館に来てはナディアに噛み付いていたという。
そして、自分に宛がわれた侍女を使いないことないこと吹聴し…それが真実とされていた中、僕に愛されている相手なのだからと止める事を躊躇する者がいたら……
「その場に居合わせた者によると、護衛の剣を引き抜きあっという間に斬りかかったそうよ」
「剣を!?そんなこと……」
「その側室は元女騎士でね…男性騎士にもひけをとらない腕前だったらしいわ。でも、まさか側室が帯剣を引き抜くなんて誰も思わない」
「それは…」
「現役の騎士でさえ隙を突かれた一瞬の事だったのに…乳母は…ノエルは反応し、わたくしを抱えるようにして……その刃を背に受けた。自身の子供達もいるというのに…わたくしを…」
……オリバーを亡くした時…ジェイマンと交わした会話が思い出される…
『オリバーは…ぼっちゃまを守り抜くという、騎士としての使命を全う致しました。それは誇られるべきことです』
あの時、ジェイマンはどんな気持ちでその言葉を僕にかけてくれたのだろうか…
「止めに入ろうとする者にも容赦なく斬りつけ、わたくしを庇うノエルは何度もその身に受けた。そして……わたくし達の近くにいたノエルの子供達にも…その刃は向けられてしまった」
「っ……!!」
「子供達へと刃が向いても…泣き叫ぶ声が聞こえても…ノエルはわたくしを決して離さなかった」
「プリシラ……」
流れ落ちる涙を、シャンク侯爵が優しくハンカチで拭っている。
ナディアの涙を拭うのは僕の役目だが、その僕も堪えるのに必死だ……
「……漸く取り押さえた頃には…もう子供達は息絶えていて……わたくしを庇い続けたノエルも、瀕死の状態だった。その時…抱き込む腕の力を弱めた時に見せたノエルの笑みを…わたくしは今も鮮明に覚えているわ」
………ジェイマンは…オリバーと僕に起きた出来事を、かつての王女と娘に…重ねただろうか…
「ノエルは…恐怖で震えていたわたくしに優しい微笑みを見せて言ったの…『ご無事でなによりです』って。それが、ノエルの最期の言葉だった」
「……ジェイマンは……」
「急ぎ登城を命じられ…ノエルと子供達の亡骸と対面して開口一番、わたくしの安否を確認した。かすり傷ひとつないと聞くと笑みを見せ、『臣下としての使命を全うした娘を誇りに思います』と…そう言って、祖父母を始めとしたわたくし達王家に深く礼をしたそうよ」
ジェイマン………………
「その事件は犯人が側室であることを慮られ、表沙汰になることはなく揉み消された。そして…わたくしの心が深く傷付いた事を理由に、ジェイマンは今後一切の交流を絶つことを求めてきた」
「……なぜ…」
「わたくしがノエルや斬りつけた側室を思い出すからと言っていたそうだけど…きっと、ジェイマン自身がツラかったんだと思うわ……わたくしを見れば、同時にノエルと子供達を思い出してしまうでしょうから」
オリバーの父も…トビアスおじさんも……そう思っていたからこそ、僕の元で働く道は選ばなかったのだろうか……
「祖父は慰謝料を支払う意思を伝えたけれど、ジェイマンはそれを固持した。娘はお金の為に命を懸けたわけではない…と。それでも支払うと引かない祖父に、それならば孤児達を救うべき道筋を立てて欲しいと申し出たそうよ」
確かに…二代前の国王が王位についていた頃、大規模な改革があげられたと聞いたことがある。
けれど……やはり異議を申し立てる貴族によって阻まれてしまった、と。
「その後、祖父は王位を退きその座を父へと譲り渡し……ジェイマンとの繋がりは途絶えたままとなった」
「あの……何故…ジェイマンは娘がいたことを秘したのでしょうか……」
王族を守り絶命したならば…悲しくとも悔しくとも、それは名誉とされるはず。
「……それだけ…深く傷付いたのだと思うわ。口端にも話題にあげられないほどに」
「…確かに……そうかもしれません……」
「貴方のお祖父様とお父様は流石にご存知の事だけれど…ジェイマンの事を思えばこそ、口を噤んだんだと思うわ」
僕には……ひとつも知り得なかったこと…
「ジェイマンは、年に一度必ず休みを取っているでしょう?」
「はい…その日だけは何があろうと休ませるようにと父からもきつく………」
「ノエル達の命日なのよ」
普段は休みなど取らないジェイマンだが、年に一度のその日だけは、何があろうと必ず休ませるようにと言われていた。
「……祖父と父は何も…」
「貴方、その理由をどのように受け取った?」
「……辺境に…ジェイマンの故郷に赴くべく…王命があるから……と…」
その内容は王命故に秘匿されており、決して触れてはならぬとの通達が保管されている。
どのような経緯で王命を授かったのかそれも触れてくれるな、と。
何故、ジェイマンが王命を担っているのか。
何故、それが毎年決まった日で何年も続けられているのか…気にならなかったわけではない。
ただジェイマンは辺境の出身だし、辺境伯家と多少の繋がりがあるとは聞いていたから…その関係なのかくらいに考えていた。
「その王命を出したのは父なのよ。ジェイマンに会うことは決してなかったけれど、年に一度は必ず娘の元へ会いに行けるように」
「先代が……」
「そして…あの日以来、繋がりを絶っていたジェイマンから父へ謁見が申し込まれた」
「……え?」
「捕縛されたトビアスの情状酌量を願う為よ。父への謁見を求めたジェイマンは
『かつて辞退した娘や孫達の命の代償を、今求めさせてはくださらぬか』
そう言って、父に温情を求めた」
堪えていた涙が溢れてしまった。
「……ジェイマン…が……温情を……」
「その願いを父は受け入れ、本来なら打ち首とされるところを…先行きのない病人に使われる薬で安らかに逝かせ…その亡骸を家族の元へ返した」
「………っ…」
「きっと…自分自身と重ねたのね……」
あの時…腐敗が始まるからと埋葬されようとするふたりを…最後まで引き延ばそうとしたのは…他でもないジェイマンだ……
「…このタイミングで貴方に伝える気になったのは…貴方達に子が出来たから…だそうよ」
「……え…」
「ジェイマン達使用人は、貴方達家族を守る責務を各々背負っている。けれど、中には内に悪意を秘めし者がいないとも限らない」
「…っ…………」
「特にナディア夫人は…ごめんなさいね、言い方が悪いかもしれないけれど、ある意味で人の悪意に慣れているとは思うの…けれど、貴族特有の優しさという仮面で隠されたものには気付けないかもしれないから…そういった人間もいるということを、覚えていてほしい…それがジェイマンからの伝言よ」
ナディアは、孤児であること…平民の出であることで、様々な悪意をぶつけられてきた。
けれど…仮面の下は…………
「どうして本人から話さないのかって責めないであげてね。話さないんじゃなくて…話せないんだと思うから……」
一掬の涙を流す僕は、コクコクと頷くしか出来なくて……帰ったら、ただ笑って「ただいま」と伝えようと心に決めた。
「喉が乾いたわよね」
明るい声で使用人を呼んだプリシラ様。
シャンク侯爵でさえも涙ぐんでいて、僕とナディアはボロボロ泣いていて…そんな中、侯爵家の使用人達はやはり手際よくその場を整えていく。
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