4 / 37
season1
離縁
しおりを挟む
ナディアから届けられた手紙を読み終わると、知らず涙が溢れていた。
記憶がないならもしかして…とあわよくば期待していた希望が、粉々に打ち砕かれてしまった。
ナディアが手紙を書くようならと医師に渡していた便箋には、一切の躊躇がないように見受けられる文字が綺麗に並びんでいる。
そして最後に記されている署名は家名を除いたもので…それが一番心を抉られ、本当にもう戻れないのだと実感した。
「ナディア…ナディア・モリス……」
思わず首元に手をもっていき、そこにある存在に触れて…これが癖になってからだいぶ経つなと寂しく思う。
首に下げている鎖には小さな指輪…かつてナディアの細い指にはめられていた結婚指輪が通されていて、ナディアが事故に遭ってから肌身離さず身に付けている。
『さすがに捨てるわけにはいかないから、タイミングを見てジェイマンに渡してくれる?』
そう言って家を出るときに侍女に渡していったものを、あの日ナディアが事故に遭ったとの報せを受けて駆け付け、その後帰宅した時に投げつけられるようにして渡された。
『そんなにあの女を好いているなら、最初からあの女と結婚すればよかったんです!!』
そう僕を詰った侍女はナディアと一番親しくしていた者で、彼女はその日のうちに退職を願い出て屋敷を去った。
きっと、僕が結婚前からトレーシアに懸想していたと思ったのだろう。
だから親友亡きあと囲い、甲斐甲斐しく世話をし殆どを彼女達と過ごしているのだと。
「…ナディアもそう思っていたの?」
孤児でひとり逞しく働いている姿が好ましくて、平民だからと渋る君を『しがない子爵』だからと口説き落とし、それなりにある貴族との付き合いも懸命にこなしてくれて…いつか生まれる子供には、温かな家庭を築いてあげたいと…自分にはなかったものだからと…そう言っていたのに。
トレーシアに懸想したことなど一度もない。
カクラスの寝台で手を伸ばされた時も、そんなつもりは起きなかったしするつもりもなかった。
それでも、夫を亡くして寂しいから傍にいるだけでいいと言われてそれを許容した。
だけど…もし君が他の男と同じ寝台で眠るなどあればそれはあり得ないことだし、たとえそこに子供が共に寝ていたと言われても、朝まで過ごすなど許せない。
今となっては簡単に分かることなのに、どこまでも僕は愚かだった。
「……ずっと苦しめていたよね…だから君は、僕に知られないように…」
ナディアが事故に遭って治療院へと搬送されたあと、僕の知らない薬などを服用していなかったかの確認の為に訪れたかかりつけ医院で、ナディアは避妊薬を処方されていたと聞いた。
行為後に飲むもので、確実な効果を出す為に作られていて負担が大きいから、明確な理由もなく渡すことは出来ないと問い詰めたところ、いつか家を出ていくことになるだろうから…その時に可能な限り身軽でいたいと…そう言っていたと教えられ、きつく叱責された。
『責任を感じてほしくないからと口止めされていたが、こんなことになるならお前を問い詰めておくべきだった』
幼少期からお世話になっている老医師から一頻りの叱責を受けたあと、冷たい失望の眼差しを向けられたままその場を後にした。
トレーシアが来るまでの三年は、泊まり込みと月のものがある時以外抱いていたのに…彼女達を迎え入れてからは、月に数度あるかないかだった。
その数少ない行為のあと、僕にとっては幸せの余韻に浸ってナディアを抱き締め微睡んで過ごしていても、別館の侍女からカクラスが泣いて呼んでいると言われれば、ナディアを置いて朝まで戻らなかったこともある。
ナディアが出ていってから気付いたことだが、僕の私物や衣服の殆どが別館に移されていて…それだけ別館でトレーシア達と多くの時間を過ごしていることに、愚かな僕は全く気付かなかった。
『今夜はここにいてほしい』
ナディアと最後の夜になった日、その日は侍女ではなく直接トレーシアが泣くカクラスを連れて本館に来ていると呼ばれ、珍しく縋るナディアを宥めて言い聞かせ、三人で別館に赴き…そのまま三人で朝まで過ごした。
トレーシアの部屋ではないからと。
子供も一緒だからと…そんな勝手な言い訳を自分にして、ひとり置いていかれるナディアのことは後回しにした。
「何をやっていたんだろう…」
きっと、あの夜が最後のチャンスだった。
伸ばしてくれていた手を振り払ったのは僕だ。
あの日、あの時…もしもナディアの傍を離れずにいたら…そう思うと後悔が押し寄せる。
やり直したい。
もう君の気持ちを踏みにじるようなことはしないと誓うから…もう一度やり直したい。
******
執務室で仕事をしていると、別館から荷物の運び出しが始まったと報告が入った。
「お見送りはよろしいのですか?」
「もう渡せる情もないんだ…酷い人間だよな」
ジェイマンは苦笑しながらも、眼差しからそれでいいのだと言ってくれているのが分かる。
早くに両親を亡くした僕にとって、ジェイマンは親代わりのような存在だ。
それなのに、そんな彼の進言を悉く聞き入れることなく…結果として一番大切なものを失った。
「もう間違いたくない」
「それでよろしいかと」
予定より一週間遅くなったが、漸くトレーシア達はここを出て実家に帰る。
早急な引き受けを頼んでいたが、何かと理由をつけては拒まれ、トレーシアから話をされたのだろう…ここまで面倒を見たのだから、もう家族同然で暮らしているのだから娶って欲しいとの手紙を何通も受け取った。
けれど何を言われようと僕の意思は変わることはないし、もしも譲歩した期日までに引き取らないのであればしかるべく機関に突き出すとまで言って漸く動いた。
この二週間、昼夜問わず本館に押し掛けてくることも続き、カクラスが泣いていると毎晩のように侍女が報告に来ても追い返し、痺れを切らしたトレーシアがカクラスを抱いて来ても、一切取り合わずに別館へ戻させた。
酷いことをしているとは思う。
それでも、トレーシアがナディアにあらぬことを吹き込んでいたことは許せなかった。
「離縁の手続きを始めようと思う」
「…畏まりました」
ナディアから離縁を望むと返事が来てから、なんだかんだと延ばしてきた離縁。
もういい加減解放してやるべきなのだと思いながら、どうしても踏ん切りがつかなかった。
「爵位譲渡の件も進めていく」
「……宜しいのですか?」
「ナディア以外と結婚するつもりはないし、誰かと子を儲けるつもりもないから」
「畏まりました」
「……ナディアは…治療院を出たあとどこに行くんだろうな…」
願わくば──────
******
「こことここに署名をしてくれる?」
「はい」
およそ半年ぶりに会ったナディアは、最後に見た時より健康的な体つきになっていて…改めて窶れさせていたんだなと気付いた。
トレーシア達が来てからの三年…どれだけの心労を与えていたのだろうか。
「────はい、出来ました」
躊躇わずに記された署名は家名入りのもので…これがナディアが書く最後の名前なのだと思うと、込み上げるものを抑えきれなかった。
「あの……大丈夫ですか?」
『大丈夫?どうしたの?』
気遣う声に、初めて会った時の声が思い出されて耳に響き、どうして大切に出来なかったのだと自分に怒りが沸いてくる。
両親が亡くなり、ジェイマンに守られながらも貴族社会に立ち向かう息苦しさに限界を感じていた頃、ふらふらと歩いて気付くと座り込んでいた。
その時が、ナディアとの初めての出会い。
心配するように覗く茶色の目は大きくて、貴族女性には見ない短い髪が印象的に思えた。
『何かツラいことでもあったの?』
そう言って背中を擦ってくれた手は温かくて、その手を離したくないと強く思った…のに……
「…っ…やっぱ、り…だめ…っ、だろ…か……」
「え…」
僕と貴族社会で生きていくためにと敬語を話す練習を始め、お気に入りだと言っていた短い髪を伸ばし始め、慣れないドレスやダンス…なにもかも僕のためだったのに…
「わか……っ…れた、く……な…っ……」
君を失いたくない。
詰っていいから…
「……ごめんなさい…」
『元気出して!頑張ろう!』
いつも励ましてくれていた君を失った僕は、これからどうやって生きていけばいいのだろうか。
自業自得だと…因果応報なのだと…分かっているのに心が追い付いていかない。
「…幸せになってくださいね」
席をたって部屋を出ていくナディアを止める術などなく、取り残された僕はただ泣き続けることしか出来なかった。
窶れてしまうほどに苦しめていたナディアは、こんな僕以上にツラかったはずだし、僕に泣く権利なんてないけれど…それでも涙は止まらない。
「ナディ……ア…ッ……」
【ナディア・モリス】
もう二度と君の手で書かれることのない、僕とお揃いの名前。
『お揃いってなんでも嬉しいけれど、名前がお揃いって……最高だわ!!大好きよ!!』
生まれてからひとりだった君が、僕からの贈り物で一番喜んでくれたのは名前だった。
ナディア…ナディア・モリス……
「君が好きだ……っ……」
二度と届かないと分かっていても、僕はこれからも君を愛し続けてしまう。
記憶がないならもしかして…とあわよくば期待していた希望が、粉々に打ち砕かれてしまった。
ナディアが手紙を書くようならと医師に渡していた便箋には、一切の躊躇がないように見受けられる文字が綺麗に並びんでいる。
そして最後に記されている署名は家名を除いたもので…それが一番心を抉られ、本当にもう戻れないのだと実感した。
「ナディア…ナディア・モリス……」
思わず首元に手をもっていき、そこにある存在に触れて…これが癖になってからだいぶ経つなと寂しく思う。
首に下げている鎖には小さな指輪…かつてナディアの細い指にはめられていた結婚指輪が通されていて、ナディアが事故に遭ってから肌身離さず身に付けている。
『さすがに捨てるわけにはいかないから、タイミングを見てジェイマンに渡してくれる?』
そう言って家を出るときに侍女に渡していったものを、あの日ナディアが事故に遭ったとの報せを受けて駆け付け、その後帰宅した時に投げつけられるようにして渡された。
『そんなにあの女を好いているなら、最初からあの女と結婚すればよかったんです!!』
そう僕を詰った侍女はナディアと一番親しくしていた者で、彼女はその日のうちに退職を願い出て屋敷を去った。
きっと、僕が結婚前からトレーシアに懸想していたと思ったのだろう。
だから親友亡きあと囲い、甲斐甲斐しく世話をし殆どを彼女達と過ごしているのだと。
「…ナディアもそう思っていたの?」
孤児でひとり逞しく働いている姿が好ましくて、平民だからと渋る君を『しがない子爵』だからと口説き落とし、それなりにある貴族との付き合いも懸命にこなしてくれて…いつか生まれる子供には、温かな家庭を築いてあげたいと…自分にはなかったものだからと…そう言っていたのに。
トレーシアに懸想したことなど一度もない。
カクラスの寝台で手を伸ばされた時も、そんなつもりは起きなかったしするつもりもなかった。
それでも、夫を亡くして寂しいから傍にいるだけでいいと言われてそれを許容した。
だけど…もし君が他の男と同じ寝台で眠るなどあればそれはあり得ないことだし、たとえそこに子供が共に寝ていたと言われても、朝まで過ごすなど許せない。
今となっては簡単に分かることなのに、どこまでも僕は愚かだった。
「……ずっと苦しめていたよね…だから君は、僕に知られないように…」
ナディアが事故に遭って治療院へと搬送されたあと、僕の知らない薬などを服用していなかったかの確認の為に訪れたかかりつけ医院で、ナディアは避妊薬を処方されていたと聞いた。
行為後に飲むもので、確実な効果を出す為に作られていて負担が大きいから、明確な理由もなく渡すことは出来ないと問い詰めたところ、いつか家を出ていくことになるだろうから…その時に可能な限り身軽でいたいと…そう言っていたと教えられ、きつく叱責された。
『責任を感じてほしくないからと口止めされていたが、こんなことになるならお前を問い詰めておくべきだった』
幼少期からお世話になっている老医師から一頻りの叱責を受けたあと、冷たい失望の眼差しを向けられたままその場を後にした。
トレーシアが来るまでの三年は、泊まり込みと月のものがある時以外抱いていたのに…彼女達を迎え入れてからは、月に数度あるかないかだった。
その数少ない行為のあと、僕にとっては幸せの余韻に浸ってナディアを抱き締め微睡んで過ごしていても、別館の侍女からカクラスが泣いて呼んでいると言われれば、ナディアを置いて朝まで戻らなかったこともある。
ナディアが出ていってから気付いたことだが、僕の私物や衣服の殆どが別館に移されていて…それだけ別館でトレーシア達と多くの時間を過ごしていることに、愚かな僕は全く気付かなかった。
『今夜はここにいてほしい』
ナディアと最後の夜になった日、その日は侍女ではなく直接トレーシアが泣くカクラスを連れて本館に来ていると呼ばれ、珍しく縋るナディアを宥めて言い聞かせ、三人で別館に赴き…そのまま三人で朝まで過ごした。
トレーシアの部屋ではないからと。
子供も一緒だからと…そんな勝手な言い訳を自分にして、ひとり置いていかれるナディアのことは後回しにした。
「何をやっていたんだろう…」
きっと、あの夜が最後のチャンスだった。
伸ばしてくれていた手を振り払ったのは僕だ。
あの日、あの時…もしもナディアの傍を離れずにいたら…そう思うと後悔が押し寄せる。
やり直したい。
もう君の気持ちを踏みにじるようなことはしないと誓うから…もう一度やり直したい。
******
執務室で仕事をしていると、別館から荷物の運び出しが始まったと報告が入った。
「お見送りはよろしいのですか?」
「もう渡せる情もないんだ…酷い人間だよな」
ジェイマンは苦笑しながらも、眼差しからそれでいいのだと言ってくれているのが分かる。
早くに両親を亡くした僕にとって、ジェイマンは親代わりのような存在だ。
それなのに、そんな彼の進言を悉く聞き入れることなく…結果として一番大切なものを失った。
「もう間違いたくない」
「それでよろしいかと」
予定より一週間遅くなったが、漸くトレーシア達はここを出て実家に帰る。
早急な引き受けを頼んでいたが、何かと理由をつけては拒まれ、トレーシアから話をされたのだろう…ここまで面倒を見たのだから、もう家族同然で暮らしているのだから娶って欲しいとの手紙を何通も受け取った。
けれど何を言われようと僕の意思は変わることはないし、もしも譲歩した期日までに引き取らないのであればしかるべく機関に突き出すとまで言って漸く動いた。
この二週間、昼夜問わず本館に押し掛けてくることも続き、カクラスが泣いていると毎晩のように侍女が報告に来ても追い返し、痺れを切らしたトレーシアがカクラスを抱いて来ても、一切取り合わずに別館へ戻させた。
酷いことをしているとは思う。
それでも、トレーシアがナディアにあらぬことを吹き込んでいたことは許せなかった。
「離縁の手続きを始めようと思う」
「…畏まりました」
ナディアから離縁を望むと返事が来てから、なんだかんだと延ばしてきた離縁。
もういい加減解放してやるべきなのだと思いながら、どうしても踏ん切りがつかなかった。
「爵位譲渡の件も進めていく」
「……宜しいのですか?」
「ナディア以外と結婚するつもりはないし、誰かと子を儲けるつもりもないから」
「畏まりました」
「……ナディアは…治療院を出たあとどこに行くんだろうな…」
願わくば──────
******
「こことここに署名をしてくれる?」
「はい」
およそ半年ぶりに会ったナディアは、最後に見た時より健康的な体つきになっていて…改めて窶れさせていたんだなと気付いた。
トレーシア達が来てからの三年…どれだけの心労を与えていたのだろうか。
「────はい、出来ました」
躊躇わずに記された署名は家名入りのもので…これがナディアが書く最後の名前なのだと思うと、込み上げるものを抑えきれなかった。
「あの……大丈夫ですか?」
『大丈夫?どうしたの?』
気遣う声に、初めて会った時の声が思い出されて耳に響き、どうして大切に出来なかったのだと自分に怒りが沸いてくる。
両親が亡くなり、ジェイマンに守られながらも貴族社会に立ち向かう息苦しさに限界を感じていた頃、ふらふらと歩いて気付くと座り込んでいた。
その時が、ナディアとの初めての出会い。
心配するように覗く茶色の目は大きくて、貴族女性には見ない短い髪が印象的に思えた。
『何かツラいことでもあったの?』
そう言って背中を擦ってくれた手は温かくて、その手を離したくないと強く思った…のに……
「…っ…やっぱ、り…だめ…っ、だろ…か……」
「え…」
僕と貴族社会で生きていくためにと敬語を話す練習を始め、お気に入りだと言っていた短い髪を伸ばし始め、慣れないドレスやダンス…なにもかも僕のためだったのに…
「わか……っ…れた、く……な…っ……」
君を失いたくない。
詰っていいから…
「……ごめんなさい…」
『元気出して!頑張ろう!』
いつも励ましてくれていた君を失った僕は、これからどうやって生きていけばいいのだろうか。
自業自得だと…因果応報なのだと…分かっているのに心が追い付いていかない。
「…幸せになってくださいね」
席をたって部屋を出ていくナディアを止める術などなく、取り残された僕はただ泣き続けることしか出来なかった。
窶れてしまうほどに苦しめていたナディアは、こんな僕以上にツラかったはずだし、僕に泣く権利なんてないけれど…それでも涙は止まらない。
「ナディ……ア…ッ……」
【ナディア・モリス】
もう二度と君の手で書かれることのない、僕とお揃いの名前。
『お揃いってなんでも嬉しいけれど、名前がお揃いって……最高だわ!!大好きよ!!』
生まれてからひとりだった君が、僕からの贈り物で一番喜んでくれたのは名前だった。
ナディア…ナディア・モリス……
「君が好きだ……っ……」
二度と届かないと分かっていても、僕はこれからも君を愛し続けてしまう。
23
お気に入りに追加
2,604
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

醜い傷ありと蔑まれてきた私の顔に刻まれていたのは、選ばれし者の証である聖痕でした。今更、態度を改められても許せません。
木山楽斗
恋愛
エルーナの顔には、生まれつき大きな痣がある。
その痣のせいで、彼女は醜い傷ありと蔑まれて生きてきた。父親や姉達から嫌われて、婚約者からは婚約破棄されて、彼女は、痣のせいで色々と辛い人生を送っていたのである。
ある時、彼女の痣に関してとある事実が判明した。
彼女の痣は、聖痕と呼ばれる選ばれし者の証だったのだ。
その事実が判明して、彼女の周囲の人々の態度は変わった。父親や姉達からは媚を売られて、元婚約者からは復縁を迫られて、今までの態度とは正反対の態度を取ってきたのだ。
流石に、エルーナもその態度は頭にきた。
今更、態度を改めても許せない。それが彼女の素直な気持ちだったのだ。
※5話目の投稿で、間違って別の作品の5話を投稿してしまいました。申し訳ありませんでした。既に修正済みです。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

9番と呼ばれていた妻は執着してくる夫に別れを告げる
風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から言いたいことを言えずに、両親の望み通りにしてきた。
結婚だってそうだった。
良い娘、良い姉、良い公爵令嬢でいようと思っていた。
夫の9番目の妻だと知るまでは――
「他の妻たちの嫉妬が酷くてね。リリララのことは9番と呼んでいるんだ」
嫉妬する側妃の嫌がらせにうんざりしていただけに、ターズ様が側近にこう言っているのを聞いた時、私は良い妻であることをやめることにした。
※最後はさくっと終わっております。
※独特の異世界の世界観であり、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~
キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。
両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。
ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。
全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。
エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。
ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。
こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる