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初めましての“ぎゅっ”
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𓂃𓈒𓏸︎︎︎︎
大陸にある国のなかでも古い歴史を持ち、穏健派の王家が治めるリースリング王国。
王家の紋章に使われている花は、ある山の頂上にしか咲かないことで知られている。
その花の花弁を煎じれば芳醇な香りをたて、根や茎は傷の治りを早める効能を持っていた。
その山はふたつの領地を平等にまたぐようにしてそびえ立っており、元は建国当時の王弟が公爵となり治めていたひとつの領地。
それを次代に継承する際、ふたつの領地に分けて2人いる息子達へ譲渡した。
「ひとりで管理するには広すぎる」
そんな理由を述べていたが、要は息子可愛さにどちらにもいい顔をしたかっただけとも言える。
「確かに、ちょっとした小国ほどありますしね。俺は賛成ですよ。弟とお隣さんなんて心強い」
「兄さんが認めてくれるなら僕も賛成です。いずれは兄さんの力になれるようにと努力してきましたが、これからは自分の領地となる民の為にも尽力して参ります」
こうして長男は父親の爵位を継いでグルナッシュ公爵となり、次男は母親が祖父から継いでいた爵位のみの侯爵位を継いでメルロー侯爵になった。
領地を分かつことを懸念した者もいたが、仲のよい兄弟は国は元より、自分達を支えてくれる領民の為にと各々の領地繁栄に努め続けた。
勿論、仲違いなど1度もしたことはない。
その精神は爵位と共に代々受け継がれ、建国から数百年経とうと変わらずに続いている。
元を辿れば王家の血筋であり同じ祖先を持つ両家だが、数百年の時を経れば他人も同然。
数代前から両家の当主は“いつか姻戚を結んで血の繋がりを濃くしたい”と考えるようになった。
しかし、不思議なことにこの両家に生まれてくるのは何故か男児ばかり。
どちらかに女児さえ生まれればすぐにでも婚約させよう!!と意気込んで子作りに励むも、やはり生まれてくるのは男の子。
結果として、ここ数代の両家は子沢山であった。
そして現在。
公爵家にはひとり息子がいる。
嫁いだ夫人が嫡男を出産したのち産褥で急逝した為、公爵家の歴史上で初めてのひとりっ子。
しかも早産だった事が起因して、生まれてきた息子はとても病弱でよく体調を崩しており、体の成長もほかの子供達と比べて遅い。
高熱を何度も出したことから、もしかすると子を成せないかもしれぬと担当医師は嘆いた。
となると黙っていられないのは傍系。
建国から続く誇り高き公爵家であり、その血には王家と同じものが流れている。
本家の血筋を守る為にも後妻を娶る事を周囲は強く要望したが、亡きあとも妻を深く愛している公爵は拒否し続けた。
ある時には過激派の分家筋が年若い娘を寝室に裸で放り込んできたが、近衛騎士を務める敏感な公爵の寝込みなど襲えるはずもなく。
またある時には買収した使用人を使って強力な媚薬を飲ませたが、薄れても王家の血筋。幼い頃からあらゆる毒に慣らされていて効果なし。
結局は、既成事実を企んだ分家が縁切られるだけとなっていった。
ちなみに、子供を人質に取られて買収された使用人には温情がかけられ、その後は家族揃って住み込みで働いている。
そんなこんなで息子が生まれてから6年。
お隣さんである侯爵家の夫人が第5子を懐妊したとの知らせが内々に届けられた。
侯爵も“血を繋げる”という数代前からの思想に思いを馳せていたが、子を何人も作るのはその為だけではない。
単に妻が好きすぎるだけである。
むしろ、“血を繋げる事”を口実としていた。
休む間もなく妊娠と出産を繰り返している侯爵夫人だが、医師も驚くほどの健康体であり、心身ともに調子を崩したことは1度もない。
自身も6人姉妹であり、母親もまた8人兄弟姉妹、祖母もまた…ということから、多産の家系なのだろうと結論づけられた。
そんな侯爵夫人が身篭った第5子。
言わずもがな上の4人は男の子ばかり。
「この子も男の子かしら。元気に生まれてきてくれるのなら、どちらでもいいけれどね」
まだ膨らまない腹を撫でながら、穏やかな笑みを浮かべる夫人。
夫の侯爵もそれは同じ思いなのだが…
「そうだな。でも、そうだったらもうひとり作ってみるのはどうだ?」
後ろから抱き締め夫人の手に自身の手を重ねた。
「気が早いですわ。まずはこの子を無事に生んであげなくてはなりません」
とはいえ、夫人も愛する夫の子なら何人でも生みたいと思っている。
「でも…そうですね。もしこの子が男の子なら、もうひとり挑戦してみようかしら」
「…女の子だったら、もう僕の子を生んではくれないのか?」
拗ねたように肩口へ顔を埋める夫に、夫人は心の奥がキュンキュンしてしまう。
「いいえ、旦那様。あなたが望んでくれるなら、わたくしは何人でも生みたいですわ」
「ならば生んでくれ。君との愛の証でもある子供は何人でも欲しいんだ」
「ふふっ、わたくしもですわ」
そうして時は流れ、生まれてきたのは女の子。
両家の歴史上、初めてのことである。
それを知る領民達もこぞって喜び、メルロー侯爵家には次々に祝いの品が贈られてきた。
「この子の名前はリリーチェとしよう」
侯爵は生まれてきた娘に祖先である初代公爵夫人の名前を与え、かつての当主達が願ってきた通りにグルナッシュ公爵家の嫡男と婚約が結ばれた。
晴れて婚約者となった2人が初めて顔を合わせたのは、リリーチェ誕生からひと月後。
「アルバート、君の婚約者だ」
「婚約者…」
7歳になった公爵家嫡男のアルバートは、赤ん坊の小さな手に優しく触れてみた。
赤ん坊はその手をきゅっと握る。
「……可愛い」
「優しくするんだぞ。この子はお前の妻になるんだからな。幸せにする為にも、今まで以上に励まなくてはならない」
「妻……」
父親である公爵にそう言われ、アルバートは頬を染めながら小さく頷いた。
成長するに従い体調を崩すことは減ってきたものの、未だに病弱であることに変わりはない。
それでも、アルバートは自身の置かれた状況を理解し努力を続けていた。
父親が自分の為に孤軍奮闘している姿に、早く力添えが出来るようにと勉学に勤しみ、体を鍛える為に護衛騎士に頼んで鍛錬もしている。
体の成長は未だゆっくりで、背丈は5歳の子と変わらず線も細い。
それでも昔よりは確実に成長しているし、体調を崩して鍛練は出来なくともベッドで勉強を続けているおかげで、そちら方面は同年代の子よりも秀でた能力を手に入れていた。
「僕の婚約者…リリーチェ」
小さくそう言った時、赤ん坊はふわりと笑った。
グルナッシュ公爵家アルバート。
メルロー侯爵家リリーチェ。
16年後に2人は結婚して夫婦となる。
大陸にある国のなかでも古い歴史を持ち、穏健派の王家が治めるリースリング王国。
王家の紋章に使われている花は、ある山の頂上にしか咲かないことで知られている。
その花の花弁を煎じれば芳醇な香りをたて、根や茎は傷の治りを早める効能を持っていた。
その山はふたつの領地を平等にまたぐようにしてそびえ立っており、元は建国当時の王弟が公爵となり治めていたひとつの領地。
それを次代に継承する際、ふたつの領地に分けて2人いる息子達へ譲渡した。
「ひとりで管理するには広すぎる」
そんな理由を述べていたが、要は息子可愛さにどちらにもいい顔をしたかっただけとも言える。
「確かに、ちょっとした小国ほどありますしね。俺は賛成ですよ。弟とお隣さんなんて心強い」
「兄さんが認めてくれるなら僕も賛成です。いずれは兄さんの力になれるようにと努力してきましたが、これからは自分の領地となる民の為にも尽力して参ります」
こうして長男は父親の爵位を継いでグルナッシュ公爵となり、次男は母親が祖父から継いでいた爵位のみの侯爵位を継いでメルロー侯爵になった。
領地を分かつことを懸念した者もいたが、仲のよい兄弟は国は元より、自分達を支えてくれる領民の為にと各々の領地繁栄に努め続けた。
勿論、仲違いなど1度もしたことはない。
その精神は爵位と共に代々受け継がれ、建国から数百年経とうと変わらずに続いている。
元を辿れば王家の血筋であり同じ祖先を持つ両家だが、数百年の時を経れば他人も同然。
数代前から両家の当主は“いつか姻戚を結んで血の繋がりを濃くしたい”と考えるようになった。
しかし、不思議なことにこの両家に生まれてくるのは何故か男児ばかり。
どちらかに女児さえ生まれればすぐにでも婚約させよう!!と意気込んで子作りに励むも、やはり生まれてくるのは男の子。
結果として、ここ数代の両家は子沢山であった。
そして現在。
公爵家にはひとり息子がいる。
嫁いだ夫人が嫡男を出産したのち産褥で急逝した為、公爵家の歴史上で初めてのひとりっ子。
しかも早産だった事が起因して、生まれてきた息子はとても病弱でよく体調を崩しており、体の成長もほかの子供達と比べて遅い。
高熱を何度も出したことから、もしかすると子を成せないかもしれぬと担当医師は嘆いた。
となると黙っていられないのは傍系。
建国から続く誇り高き公爵家であり、その血には王家と同じものが流れている。
本家の血筋を守る為にも後妻を娶る事を周囲は強く要望したが、亡きあとも妻を深く愛している公爵は拒否し続けた。
ある時には過激派の分家筋が年若い娘を寝室に裸で放り込んできたが、近衛騎士を務める敏感な公爵の寝込みなど襲えるはずもなく。
またある時には買収した使用人を使って強力な媚薬を飲ませたが、薄れても王家の血筋。幼い頃からあらゆる毒に慣らされていて効果なし。
結局は、既成事実を企んだ分家が縁切られるだけとなっていった。
ちなみに、子供を人質に取られて買収された使用人には温情がかけられ、その後は家族揃って住み込みで働いている。
そんなこんなで息子が生まれてから6年。
お隣さんである侯爵家の夫人が第5子を懐妊したとの知らせが内々に届けられた。
侯爵も“血を繋げる”という数代前からの思想に思いを馳せていたが、子を何人も作るのはその為だけではない。
単に妻が好きすぎるだけである。
むしろ、“血を繋げる事”を口実としていた。
休む間もなく妊娠と出産を繰り返している侯爵夫人だが、医師も驚くほどの健康体であり、心身ともに調子を崩したことは1度もない。
自身も6人姉妹であり、母親もまた8人兄弟姉妹、祖母もまた…ということから、多産の家系なのだろうと結論づけられた。
そんな侯爵夫人が身篭った第5子。
言わずもがな上の4人は男の子ばかり。
「この子も男の子かしら。元気に生まれてきてくれるのなら、どちらでもいいけれどね」
まだ膨らまない腹を撫でながら、穏やかな笑みを浮かべる夫人。
夫の侯爵もそれは同じ思いなのだが…
「そうだな。でも、そうだったらもうひとり作ってみるのはどうだ?」
後ろから抱き締め夫人の手に自身の手を重ねた。
「気が早いですわ。まずはこの子を無事に生んであげなくてはなりません」
とはいえ、夫人も愛する夫の子なら何人でも生みたいと思っている。
「でも…そうですね。もしこの子が男の子なら、もうひとり挑戦してみようかしら」
「…女の子だったら、もう僕の子を生んではくれないのか?」
拗ねたように肩口へ顔を埋める夫に、夫人は心の奥がキュンキュンしてしまう。
「いいえ、旦那様。あなたが望んでくれるなら、わたくしは何人でも生みたいですわ」
「ならば生んでくれ。君との愛の証でもある子供は何人でも欲しいんだ」
「ふふっ、わたくしもですわ」
そうして時は流れ、生まれてきたのは女の子。
両家の歴史上、初めてのことである。
それを知る領民達もこぞって喜び、メルロー侯爵家には次々に祝いの品が贈られてきた。
「この子の名前はリリーチェとしよう」
侯爵は生まれてきた娘に祖先である初代公爵夫人の名前を与え、かつての当主達が願ってきた通りにグルナッシュ公爵家の嫡男と婚約が結ばれた。
晴れて婚約者となった2人が初めて顔を合わせたのは、リリーチェ誕生からひと月後。
「アルバート、君の婚約者だ」
「婚約者…」
7歳になった公爵家嫡男のアルバートは、赤ん坊の小さな手に優しく触れてみた。
赤ん坊はその手をきゅっと握る。
「……可愛い」
「優しくするんだぞ。この子はお前の妻になるんだからな。幸せにする為にも、今まで以上に励まなくてはならない」
「妻……」
父親である公爵にそう言われ、アルバートは頬を染めながら小さく頷いた。
成長するに従い体調を崩すことは減ってきたものの、未だに病弱であることに変わりはない。
それでも、アルバートは自身の置かれた状況を理解し努力を続けていた。
父親が自分の為に孤軍奮闘している姿に、早く力添えが出来るようにと勉学に勤しみ、体を鍛える為に護衛騎士に頼んで鍛錬もしている。
体の成長は未だゆっくりで、背丈は5歳の子と変わらず線も細い。
それでも昔よりは確実に成長しているし、体調を崩して鍛練は出来なくともベッドで勉強を続けているおかげで、そちら方面は同年代の子よりも秀でた能力を手に入れていた。
「僕の婚約者…リリーチェ」
小さくそう言った時、赤ん坊はふわりと笑った。
グルナッシュ公爵家アルバート。
メルロー侯爵家リリーチェ。
16年後に2人は結婚して夫婦となる。
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