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③初恋を実らせたい男(前編) side夫
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向き合って両手を繋ぎ、俺の話を聞いていたミリアンナは当然の事ながら言葉を失った。
あの女にされた事には眉を顰め。
あの女が妊娠した事には瞳を潤ませ。
あの女が出産した事には目を伏せた。
子供が生まれたと告げたところでミリアンナが手を放そうとしたのが伝わり、離れるのが怖くて強く握り締めてしまった。
「息子は可愛いし大切にしている」
「………うん」
「だけど、あの女に想いを寄せたことはない」
徐に顔をあげ…俺を見つめる瞳は、その言葉が本心からなのかを探ってくる。
これだけは疑われたくない。
薬を盛られて子を成すなど情けないの一言だが、そこから芽生えた情などひと欠片もない。
「薬を盛られてからは一度も関係を持っていないし、エスコート以外では指一本触れていない。領地や家業に関する執務をする為に屋敷に行くことはあっても、寝泊まりはこちらでしている」
屋敷に“帰る”とは言わずに過ごしてきた。
言ってしまえば、あの女が俺の帰る場所となる。
そんなもの受け入れられない。
「……ミリア…」
「………アベルはもう…父親なのね……」
微笑むと同時に流れ落ちた涙。
あの日の俺を殴り飛ばしてやりたい。
夜会になど行くなと怒鳴り付けてやりたい。
人脈がなんだと言うんだと殺してやりたい。
「もう……結婚してるのよね……」
俺を諦めたような笑みに、絶望が襲う。
何もかも…家族さえも捨てて、俺を追いかけてきてくれたミリアンナ。
それなのに俺は…抗う術がないからと塞ぎこみ、叶わない想いを消化する為に仕事に逃げた。
その結果が今の状況だ。
「私……諦めなくちゃって思ってたの…あなたはもう別の人のもので…私とは……もう…っ……」
すっと後ろに身を引いたミリアンナを、勢いよく引き寄せ抱き締めた。
ここで手を離したら、きっと俺の前から姿を消すことを選び……今度こそ二度と会えなくなる。
それだけは嫌だ。
「ミリアンナ…ごめん」
離してと抵抗するミリアンナを抱き上げ、私室の奥にある簡易な寝室へ向かった。
本当はこんな場所ではなくて、もっと豪華で…一生の思い出となるような所で迎えたかったが、もう迷ってなどいられない。
この先、誰に何を言われようと…たとえあの王子が何かをしてこようと…もう二度と離してやれないんだ。
*~*~*~*~*~*
「ミリア……」
まだ誰のものでもない華奢な体を組み敷き、制服と下着を脱がせていると、ミリアンナから小さな笑いがこぼれた。
「……どうした?」
「ううん……本当に…慣れてないんだなって…」
どうやら、脱がすのに不慣れな手付きが証明してくれたらしい。
些か悔しい部分もあるが、信じてもらえるならなんでもいい。
そんなもの、これからミリアンナでいくらでも慣れるのだから。
「ミリア…凄く綺麗だ……」
露になった極め細やかな白い肌に唇を這わせ、徐々に紅潮していく体に幾つも赤い痕を残した。
その間、柔らかな双房を揉んだり頂を口に含んだり…しっとり濡れている秘所に口淫したり。
閨に関しては座学のみを受け、実技は嫌だと拒否して受けていない。
だからこれは本能的なものなのだが、ミリアンナにしてみれば疑問に思ったようだ。
やはり慣れていると言われてしまい、そのたびに刺激を与え否定した。
「っ……う、、、、そ、、」
「嘘じゃない…必死なだけだ」
過去に見た教材や話に聞いた事…持ちうる知識を総動員しながらミリアンナを解し、中へ身を沈めて体が繋がった瞬間には、言い知れぬ感動と快感が同時に襲い掛かってきた。
「…ミリアンナ……」
動かずとも気持ちよくて温かくて…このまま死ぬまで繋がっていたいと思えてしまう。
ずっと想い続けてきた愛しい人。
恋い焦がれて仕方なかった人。
その相手と体を繋げることが、こんなにも心を満たしてくれるなんて思わなかった。
「…………いた…ぃ…」
「……ごめん…何せよく分かっていなくて…」
深い感動に浸って動かずにいたら可愛く睨まれ、それすらも愛しくて頬が緩んだ。
情けない事情を吐露すれば、ミリアンナは困ったように眉を下げる。
「誰かを愛したことなどない。誰かと体を繋げたいと思ったこともない」
「…………」
「ミリアンナだけを愛してるし、こうしたいと思うのもするのもミリアだけだ」
「…んっ……」
人間は動物である…というのは本当だと思った。
経験などなくとも本能的に体は動き、更に愛しい相手だと思うと体に走る快感も尋常ではない。
薬に冒されたあの夜も、体が快感を得ようと心は冷え込む一方だった。
嫌悪感しかない行為では無理やり高められた性欲しかなく、ただ熱を解放したに過ぎない。
それがミリアンナ相手となればこんなにも違う。
沸き上がる欲望もあるけれど、それよりもとにかく愛しくて仕方ない。
俺に組み敷かれ、俺を受け入れている姿に滾りは増し、否応なしに激しく穿ってしまう。
「アベ、、ッ…ル……激し…っ、、」
俺の下で揺さぶられる姿も、
獣のように後ろから穿たれる姿も、
俺の上で淫らに踊る姿も、
何もかもが愛しくて俺を昂らせる。
何度も達したミリアンナがくたりと弛緩しても劣情は止められず、尚も中へ精を放った。
やがて流し込む量も少なくなり、気が付けば夜もすっかり更けた時間。
散々俺に喘がされたミリアンナは、目をとろんとさせて眠そうにしている。
俺も隣に寝転んだ。
「……ミリア…」
汗ばんだ顔にかかっていた短い髪をよけると、眦は赤く腫れている。
ただでさえ泣いていたのに、追い討ちをかけるように快楽に沈めて啼かせてしまった。
痛々しい瞼に口付けを落とし、目覚めた時の為にに水を用意しておこうと寝室を出ると、そこには温められた手巾と水差しが置かれていた。
「……ベントレか…」
腹心の心遣いに感謝し、そのまま寝室へと戻ってミリアンナの体に手巾をあてて、弛緩している体を丁寧に拭いていく。
うつらうつらしているミリアンナは、時折反応するも基本的にされるがまま。
「……凄い数だな」
自分でしたことだが、身体中についている痕に思わず自嘲した笑いが漏れてしまう。
これでもかと至るところについていて、己の独占欲の強さに驚く。
ふと備え付けの鏡を見ると、同じように俺の体にも多数の痕が残されていた。
他人からは見えない秘密の印に胸が高鳴る。
一通り拭き終わり、細い足を広げさせ…柔らかな太ももの内側に口付けた。
白い肌には、赤い痕がよく映える。
「…俺だけのミリアンナ……」
幾つもつけていると、こぽりと秘所から白濁が溢れ出てきて…つい悪戯心が沸いてしまう。
指を差し入れ掻き出すように動かしていると、夢現のミリアンナが反応した。
「ん……っ…」
ベントレが用意した物の中には、液体が入った小瓶も添えられていて…その中身を察して、ツキリと胸が痛む。
こんなにも愛していて、こんなにも注いだのに…それを根付かせることは出来ない。
正確に言えば出来なくもないが、それはミリアンナを“愛人として”迎え、“愛人に”子を生ませることになる。
それは俺の本意ではなく、ベントレもそれを分かっているから用意したのだろう。
「……アベ…ル…ッ」
色々と思いに耽りながら指を動かしていたら、ミリアンナがゆっくり意識を浮上させた。
「ぁ、、、ん……っ…」
二度と離さない。
二度と離れたくない。
「ミリア……愛してる」
小瓶の中身を一気に煽り、それがなんなのかを言わずにミリアンナへ口移して流し込んだ。
咄嗟の事にごくりと嚥下すると…瞳を揺らし、悲痛に顔を歪めて涙が流れ落ちた。
これからも泣かせてしまう。
これからも苦しめてしまう。
それでも……
「いつか俺の子を生んでくれる?」
不倫する男の常套句だなと思うが、それが本心なのだから仕方ない。
今はまだ叶えられないけれど、必ずミリアンナと添い遂げる。
ふわりと微笑み広げられた両手がその答えだと受け取り、ミリアンナを腕の中に閉じ込めた。
あの女にされた事には眉を顰め。
あの女が妊娠した事には瞳を潤ませ。
あの女が出産した事には目を伏せた。
子供が生まれたと告げたところでミリアンナが手を放そうとしたのが伝わり、離れるのが怖くて強く握り締めてしまった。
「息子は可愛いし大切にしている」
「………うん」
「だけど、あの女に想いを寄せたことはない」
徐に顔をあげ…俺を見つめる瞳は、その言葉が本心からなのかを探ってくる。
これだけは疑われたくない。
薬を盛られて子を成すなど情けないの一言だが、そこから芽生えた情などひと欠片もない。
「薬を盛られてからは一度も関係を持っていないし、エスコート以外では指一本触れていない。領地や家業に関する執務をする為に屋敷に行くことはあっても、寝泊まりはこちらでしている」
屋敷に“帰る”とは言わずに過ごしてきた。
言ってしまえば、あの女が俺の帰る場所となる。
そんなもの受け入れられない。
「……ミリア…」
「………アベルはもう…父親なのね……」
微笑むと同時に流れ落ちた涙。
あの日の俺を殴り飛ばしてやりたい。
夜会になど行くなと怒鳴り付けてやりたい。
人脈がなんだと言うんだと殺してやりたい。
「もう……結婚してるのよね……」
俺を諦めたような笑みに、絶望が襲う。
何もかも…家族さえも捨てて、俺を追いかけてきてくれたミリアンナ。
それなのに俺は…抗う術がないからと塞ぎこみ、叶わない想いを消化する為に仕事に逃げた。
その結果が今の状況だ。
「私……諦めなくちゃって思ってたの…あなたはもう別の人のもので…私とは……もう…っ……」
すっと後ろに身を引いたミリアンナを、勢いよく引き寄せ抱き締めた。
ここで手を離したら、きっと俺の前から姿を消すことを選び……今度こそ二度と会えなくなる。
それだけは嫌だ。
「ミリアンナ…ごめん」
離してと抵抗するミリアンナを抱き上げ、私室の奥にある簡易な寝室へ向かった。
本当はこんな場所ではなくて、もっと豪華で…一生の思い出となるような所で迎えたかったが、もう迷ってなどいられない。
この先、誰に何を言われようと…たとえあの王子が何かをしてこようと…もう二度と離してやれないんだ。
*~*~*~*~*~*
「ミリア……」
まだ誰のものでもない華奢な体を組み敷き、制服と下着を脱がせていると、ミリアンナから小さな笑いがこぼれた。
「……どうした?」
「ううん……本当に…慣れてないんだなって…」
どうやら、脱がすのに不慣れな手付きが証明してくれたらしい。
些か悔しい部分もあるが、信じてもらえるならなんでもいい。
そんなもの、これからミリアンナでいくらでも慣れるのだから。
「ミリア…凄く綺麗だ……」
露になった極め細やかな白い肌に唇を這わせ、徐々に紅潮していく体に幾つも赤い痕を残した。
その間、柔らかな双房を揉んだり頂を口に含んだり…しっとり濡れている秘所に口淫したり。
閨に関しては座学のみを受け、実技は嫌だと拒否して受けていない。
だからこれは本能的なものなのだが、ミリアンナにしてみれば疑問に思ったようだ。
やはり慣れていると言われてしまい、そのたびに刺激を与え否定した。
「っ……う、、、、そ、、」
「嘘じゃない…必死なだけだ」
過去に見た教材や話に聞いた事…持ちうる知識を総動員しながらミリアンナを解し、中へ身を沈めて体が繋がった瞬間には、言い知れぬ感動と快感が同時に襲い掛かってきた。
「…ミリアンナ……」
動かずとも気持ちよくて温かくて…このまま死ぬまで繋がっていたいと思えてしまう。
ずっと想い続けてきた愛しい人。
恋い焦がれて仕方なかった人。
その相手と体を繋げることが、こんなにも心を満たしてくれるなんて思わなかった。
「…………いた…ぃ…」
「……ごめん…何せよく分かっていなくて…」
深い感動に浸って動かずにいたら可愛く睨まれ、それすらも愛しくて頬が緩んだ。
情けない事情を吐露すれば、ミリアンナは困ったように眉を下げる。
「誰かを愛したことなどない。誰かと体を繋げたいと思ったこともない」
「…………」
「ミリアンナだけを愛してるし、こうしたいと思うのもするのもミリアだけだ」
「…んっ……」
人間は動物である…というのは本当だと思った。
経験などなくとも本能的に体は動き、更に愛しい相手だと思うと体に走る快感も尋常ではない。
薬に冒されたあの夜も、体が快感を得ようと心は冷え込む一方だった。
嫌悪感しかない行為では無理やり高められた性欲しかなく、ただ熱を解放したに過ぎない。
それがミリアンナ相手となればこんなにも違う。
沸き上がる欲望もあるけれど、それよりもとにかく愛しくて仕方ない。
俺に組み敷かれ、俺を受け入れている姿に滾りは増し、否応なしに激しく穿ってしまう。
「アベ、、ッ…ル……激し…っ、、」
俺の下で揺さぶられる姿も、
獣のように後ろから穿たれる姿も、
俺の上で淫らに踊る姿も、
何もかもが愛しくて俺を昂らせる。
何度も達したミリアンナがくたりと弛緩しても劣情は止められず、尚も中へ精を放った。
やがて流し込む量も少なくなり、気が付けば夜もすっかり更けた時間。
散々俺に喘がされたミリアンナは、目をとろんとさせて眠そうにしている。
俺も隣に寝転んだ。
「……ミリア…」
汗ばんだ顔にかかっていた短い髪をよけると、眦は赤く腫れている。
ただでさえ泣いていたのに、追い討ちをかけるように快楽に沈めて啼かせてしまった。
痛々しい瞼に口付けを落とし、目覚めた時の為にに水を用意しておこうと寝室を出ると、そこには温められた手巾と水差しが置かれていた。
「……ベントレか…」
腹心の心遣いに感謝し、そのまま寝室へと戻ってミリアンナの体に手巾をあてて、弛緩している体を丁寧に拭いていく。
うつらうつらしているミリアンナは、時折反応するも基本的にされるがまま。
「……凄い数だな」
自分でしたことだが、身体中についている痕に思わず自嘲した笑いが漏れてしまう。
これでもかと至るところについていて、己の独占欲の強さに驚く。
ふと備え付けの鏡を見ると、同じように俺の体にも多数の痕が残されていた。
他人からは見えない秘密の印に胸が高鳴る。
一通り拭き終わり、細い足を広げさせ…柔らかな太ももの内側に口付けた。
白い肌には、赤い痕がよく映える。
「…俺だけのミリアンナ……」
幾つもつけていると、こぽりと秘所から白濁が溢れ出てきて…つい悪戯心が沸いてしまう。
指を差し入れ掻き出すように動かしていると、夢現のミリアンナが反応した。
「ん……っ…」
ベントレが用意した物の中には、液体が入った小瓶も添えられていて…その中身を察して、ツキリと胸が痛む。
こんなにも愛していて、こんなにも注いだのに…それを根付かせることは出来ない。
正確に言えば出来なくもないが、それはミリアンナを“愛人として”迎え、“愛人に”子を生ませることになる。
それは俺の本意ではなく、ベントレもそれを分かっているから用意したのだろう。
「……アベ…ル…ッ」
色々と思いに耽りながら指を動かしていたら、ミリアンナがゆっくり意識を浮上させた。
「ぁ、、、ん……っ…」
二度と離さない。
二度と離れたくない。
「ミリア……愛してる」
小瓶の中身を一気に煽り、それがなんなのかを言わずにミリアンナへ口移して流し込んだ。
咄嗟の事にごくりと嚥下すると…瞳を揺らし、悲痛に顔を歪めて涙が流れ落ちた。
これからも泣かせてしまう。
これからも苦しめてしまう。
それでも……
「いつか俺の子を生んでくれる?」
不倫する男の常套句だなと思うが、それが本心なのだから仕方ない。
今はまだ叶えられないけれど、必ずミリアンナと添い遂げる。
ふわりと微笑み広げられた両手がその答えだと受け取り、ミリアンナを腕の中に閉じ込めた。
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