裏切る者と、裏切られた者

Ringo

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①独占したい女(前編) side妻

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「ふぅん……なるほどね」


先頃、夫に関する素行調査を頼んでいた調査員から報告書が届けられた。

ここ数ヵ月、必要最低限の執務をこなす以外は帰宅しなくなっていた夫。

この二週間に至っては一度も帰宅せず。

もしやと思って調べてみれば、予想通りだった。


【アベル=トレンジア(24)は、リリアンヌ(21)と不貞関係にあり。詳細は別紙参照】


同じ女と二度目の浮気。

同封されていた別紙に目を通せば、不貞とは思えない行動や言動の数々。

平民でしかない卑しい女のくせに、夫の執務室に
入り浸っていて…息子とも顔を合わせている。

息子の母親は私で、あの女は愛人なのに。

見目がよく稼ぎのいい夫に群がる毒女。


「コレント、リディルは?」

「侯爵様についておいでです」


控えている侍女に息子の所在を確認すれば、王宮へ出向いているという。


「まったく、王宮が自分の家だとでも思っているのかしら?母親を置き去りにして、自分だけあの人の傍にいるなんてズルいわ」

「はい、奥様」


実家から連れてきた侍女だけれど、特に親しいわけではなく、一番ってだけ。

使用人なんてそんなもの。

思えばこの屋敷にいる使用人は、当主夫人である私に対して気に食わない態度の者ばかり。

結婚した時からだけれど、夫が帰らなくなってからはその態度がさらに悪化したように思う。


「あの女、今度こそ国外追放にしてやるわ」


身元も怪しく、いつまでも夫から離れようとしない寄生虫のような女。

今度こそ国外追放にして、身ぐるみ剥いでから息の根を止めてやるわ。






*~*~*~*~*~*






私と夫が初めて会ったのは七年前、王家主催の大規模な夜会でのこと。

彼は十七歳、私は十九歳。

初めて見る彼は背が高く、淡い金髪に濃いブルーの瞳をしていて、その高貴な佇まいに一目で釘付けとなった。


「お父様、あの方はどなた?」

「あぁ、彼はトレンジア侯爵のご嫡男だよ。ずっと諸外国を回っていたけど、戻られたようだ」

「へぇ…素敵な方ね」


夜会後に詳しく聞くと、交易を手広く手掛ける侯爵家嫡男として生まれた彼は、幼い頃から長く遊学に出ていたことで婚約者がいなかった。

あんなに素敵なのだから、既にいて当たり前だと思っていた私の胸は高鳴る。

私にも婚約者は

けれど浮気をされ、相手は駆け落ち。

以降二年間、“捨てられた令嬢”として社交界で多くの好奇的な目に晒され続けてきた。

しかも十九歳…そろそろ、どこか後妻に入るか働くかしないといけなくなる。

そんな私の前に、彼は王子様の如く現れた。


「お父様、彼と結婚したいわ」

「彼と?んー…それはどうだろうか。トレンジア侯爵家は、妻となる者にも経営に携われるだけの資質が求められるんだ」

「あら、それなら大丈夫よ。私は学園でも優秀な成績を収めていたもの。それに、いざとなれば代行できる人間を雇えばいいのよ」

「いや、でも……」

「いいから!!申し込んでくださいまし!!」


渋るお父様に頼んで縁談を申し込んで貰うも、まだ婚姻は考えていないと断られた。

流れてきた噂によると、彼に申し込んだ全員が同様の理由で断られたらしい。


「なんだ、私だけじゃなかったのね」


そう安堵したものの、彼を狙う女は想像以上に多い事も分かり、一刻も早く彼を自分のものにしてしまいたくなった。

手段は選んでいられない。








機会が巡ってきたのは、それから三ヶ月後。

私に甘いお父様でさえも、嫡男である兄に押されて嫁ぎ先を探し始めてしまった。


「彼も来ているみたいだよ」

「あら、本当だわ」


父のエスコートで訪れた、公爵家の別館で開かれた夜会で彼の姿を見つけた。

挨拶に忙しいお父様から離れ、常に彼の行動が確認できる位置を取り、僅かに隙を見せた瞬間に薬を

早く、早く…と様子を窺っていると、じわじわと効果が出始めたようで、侍従に付き添われ休憩室へ向かう為に会場を出ていく。


「ひとりで大丈夫だ……」

「ですが…」

「いいから……お前は戻れ」


そんな会話が聞こえてきて、心配する侍従を残し彼はひとり部屋の中へ。

それでも部屋の前に待機しようとする侍従をと、買収した使用人に鍵を開けてもらい私も入室した。

躊躇いなく寝室へと向かうと、そこには酷く酩酊して悶え苦しむ様子の彼の姿。


「な、、なぜ……っ…鍵、、は……」

「鍵は開いておりましたわ。それより、だいぶ具合が悪そう…大丈夫ですの?」

「…出てってくれ…っ」

「ひどい汗だわ」

「やめっ、、、」


少し触れただけで、彼は体を跳ねさせた。

あまりの効き目に鼓動が速まる。


「大丈夫、すぐ楽にして差し上げます」

「、、さわ…るなっ、、、」


調合してある痺れ薬が効いているからか、抵抗する力はまるでか弱い乙女のよう。

触られるたびにビクリと反応し、なす術もなく衣服を剥ぎ取られた彼は、理想的な体をしていた。

細身だと思っていたのに、綺麗に割れた腹筋に束の間見惚れ…次いで舌を這わせる。


「やめ、、、っ」


既に硬く反っているものの先端を舐めたら、腰を小さく震わせ目を固く瞑ってしまった…そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに。

それに、女性の中に吐精し暫くそのまま留まらない事には、この薬の効果は鎮まらない。


「大丈夫よ」


何度目かになる慰めの言葉をかける。

もっと彼の体を味わいたいけれど時間がないし、無駄打ちをさせたくもない。

既に潤っている秘所に昂りを宛がった。


「な、、……っ…」


感触が伝わったのか彼は目を開いた。

そんな彼の顔を見つめながら、私はゆっくりと腰を下ろして飲み込んでいく。

部屋に入る前に飲んだ媚薬のお陰か、破瓜の痛みは感じない。


「やめっ、、っ……!!…」


力なく手を伸ばして抵抗しようとするから、その手をシーツに縫い止め一気に奥まで迎え入れた。

体の中に彼がいる事への充足感と、未知の快感に全身が悦びに打ち震えるのが分かる。


「はぁ…気持ちいい…すごく大きくて、、ん…大丈夫よ、すぐに貴方も夢中になるわ」


そのまま腰を動かし始めれば、媚薬の効果ですぐに達しそうになってしまう。

彼は私に押さえ付けられたまま、頬を紅潮させてこちらを睨み付けていた。

だけどその目は欲情しているし、僅かながら彼の腰が突き上げようとしているのも感じる。

女性が優位でこんなことするなんて、やっぱり男性からしたら恥ずかしかったかしら。

だけど仕方ないわ、手に入れる為だもの。


「……ぐ、、ぅ…っ……」


彼のものが膨らんだと思った瞬間、私の奥へじんわりと温かいものが広がった。

つい頬が緩んでしまう。


「……どい、、て…くれ……」


彼は顔を横に背けてそんなことを言う。

ふふっ、可愛い人。

飲み込んだままの昂りは硬いまま。

確実に彼の子を孕む為には、もっともっと注いでもらわないと困る。


「まだ苦しいでしょう?お手伝いするわ」


組み敷いたまま動けない彼の唇を奪い、腰を動かして慰め始めると、徐々に漏れ始めた甘い喘ぎ。


「っ、、く…そ……ッ、、んぁ……っ」

「そう…全部出して、、スッキリしましょ」


何度も何度も彼の熱を奥で受け止め、やがて疲れ果てて彼は寝てしまった。


「…寝顔も素敵」


不遇な立場にいた私を救い出す為に現れた、私の為の王子様。

今は突然の事に驚いているけれど、私を知れば夢中になるに決まってるわ。

それに、これだけ注がれたなら孕んだはず。

だって……私が飲んだ媚薬には、妊娠しやすくさせる効果もあるんだから。


「おやすみなさい」


彼の隣に寝転び、私も深い眠りについた。






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