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番外編 366日後以降の花言葉
【大人風味】……ここはどこ?
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※イチャイチャからの注意報発令中
******
「んん……」
ぼんやりと目を覚ますと、見たことのない天蓋が目に入り…ここは一体どこ?…と回らない頭を働かせようと少し身動ぐと、隣にフリードリヒが座っていることに気付いた。
「ん?起きた?」
読んでいた本を閉じて、まだぼやけている私に軽く口付ける。
「今日泊まる宿の寝台だよ」
優しく起こしてもらってキョロキョロしていた私に、これまた優しく答えてくれて……髪を梳く指が擽ったい。
「家を出る前に手短に湯浴みはしたけど、食事を終えたらゆっくり浸かろうね」
え?家を出る前に湯浴み?と軽く混乱する私を置いてきぼりにして、フリードリヒはあちこちに口付けをしている。
「……もう夜?」
擽ったいけれど嫌ではないのでされるがままにしつつ、今が何時なのか聞いてみるとまだ夕食の時間にすらなっていないと言う。それならば!
「う~ん…」
折角なら観光したいとお願いしてみるも、フリードリヒの反応はイマイチで…ワンピースの包みボタンを指で弄んでいる。なるほど。
「明日からは一歩も外に出ないでしょう?それにフリードと夫婦になってから初めてのお出掛けなのよ?しかも初日!お願い…フリードと初めての思い出が作りたいの」
自分でもわざとらしいと思えるほどの上目遣いと、胸の前で手を組むおねだりポーズ…これはフリードリヒによって既に胸元が露になっていた事で効果を増大させること間違いなし!!
「……わざとやってる?」
うっ……バレてる。だけどボタンを外す手の動きは止まった…あと一押し!!がんばれ私!!フリードリヒとの思い出作りのために!!!
「そうだとしても出掛けたい。それに…どうしても行ってみたいお店があるの。キャロライン様から教えてもらったお店なんだけど…」
“キャロライン様”という名前が出たことにフリードリヒの指先がピクリと動き、エメラルドの瞳にトロリと欲が浮かんだのが分かった。
フリードリヒとの触れ合いは私だって欲してる。だからこそ、この街でお薦めされたお店にどうしても行きたい!!!
「キャロライン夫人が教えてくれたお店…?」
「そうなの。結婚式の前にキャロライン様自らお祝いを持っていらしたんだけど…その……」
「うん…」
外したボタンを留めながらも、不埒に動くフリードリヒの指先にいちいち反応してしまう。
「キャロライン様が仰るには、そのお店にはとても素敵な…その…し、下着や夜着が売られているそうなの」
言い切って、頬が染まっていくのが分かる。もう既にフリードリヒとは体を重ねているのに、それを連想させてしまう言葉を発するだけでも恥ずかしい。
「……すぐに行こう」
欲を孕んだ瞳に鋭さを加えた視線で射抜かれて、もう買いにいかなくてもいいんじゃない?これ以上は身がもたないかも??など思うも時既に遅し。
嬉々として軽い足取りのフリードリヒと手を繋ぎ、まだまだ人が多い街へと繰り出した。
***
(フリードリヒ視点)
夜の指南者とも呼び声高いキャロライン伯爵夫人からのお薦めと言う店に着いて…胸が高鳴った。
下級貴族の屋敷くらいに広い店内には、ところ狭しと女性ものの下着や夜着が展示されていて、これらをジュリエンヌが身につけて、寝台で思いきり乱れる姿を想像すると……
「この店ごと買ってしまおうか…」
「え?」
思わず声に出してしまっていていたものの、きょとんとするジュリエンヌの可愛さに癒される。
「それにしても…男性客も結構いるもんなんだな」
ジュリエンヌが身に付ける物は常に自分も関わっていたいから当然のように付いてきたが、女性物専門店なのに男性客が多いことに驚いた。
……しかも、チラチラとジュリエンヌに視線を寄越す輩の多さに舌打ちをしたくなる。連れの女性にも失礼だとは思わないのだろうか。
思わずグイッと抱き寄せると、商品を眺めていたジュリエンヌが「きゃっ」と可愛い声をあげて…さらに注目を浴びる羽目になってしまった。
「?? フリードリヒも一緒に選んでくれる?」
「もちろん」
艶のある髪を一房掬って口付けると、周りから小さくも黄色い歓声が起こった。悔しそうな顔をしている男達の本音は、ジュリエンヌを好きに扱える俺に対する嫉妬だろうと分かる。
「今夜着るものから選ぼう」
「っ…フリードが甘過ぎる……」
「ジュリエンヌ限定でね」
嬉しそうに顔を綻ばせる様子を見てから、さてどれにしようかと店内を見回す。
「ここはね、パートナー同伴に限り男性も入れるらしいの。殆どの方が同伴されているって聞いたわ」
「へぇ…成る程」
明らかに商売女性と分かる相手を連れ立っている者もいるが、そういった者達が選んでいるのは非常に扇情的なデザインをしていて興味をそそられる。ジュリエンヌが着たら…即座に理性が切り落とされるに違いない。
「……フリード」
「ん?」
ジュリエンヌに袖を引っ張られて振り向くと、頬を膨らませて何やらご立腹の様子…に焦る。
「どうした?」
「……ああいう人がタイプなの?」
「え?」
ジュリエンヌの視線の先には、先ほどまで観察していたふたりの姿があって…勘違いをさせてしまったことに苦しくなる。先に理由を告げてから観察すればよかった。
「違うよ。俺が愛していているのはジュリエンヌだけだし、タイプなんて…ジュリエンヌの存在自体がそうだとしか言えない」
ふたりを見ていた理由も述べれば膨れていた頬は元に戻り、変わりに赤く色付いた。
「じゃぁ…フリードリヒが今夜着る下着と夜着を選んでくれたら許してあげる」
なんとも可愛らしい罰を与えられて、それならばと先ほどのふたりが吟味していた系統が並ぶエリアに移動した。
どうやら店内はいくつかのエリアに分けられていて、慎ましいものから下着の意味を持たないようなものまで幅広く揃えられているらしい。
「どうしよう…時間が足りない」
「じゃぁ、また一緒に来よう?」
いっそのこと全てのデザインを購入してしまおうかとも思ったけれど、ジュリエンヌの申し出にそちらの方がいいと首肯し、3ヶ月の蜜月の間は通い詰めようと決意する。早い時間に出れば日帰りでも通える距離だ。
「フリードはどれがいい?」
キラキラと瞳を輝かせているジュリエンヌの期待に応えたいと選んだのは…
「…今夜はこれがいいな」
手にしたデザインをジュリエンヌに渡すと、みるみるうちに首まで真っ赤になって…ぷるぷると震えている。刺激が強すぎただろうか。
「こ…これ?」
ジュリエンヌが羞恥心に襲われているのは分かるが、これ以外は認められないと力強く頷けば…おずおずとデザインを隅々まで確認している。
華奢なジュリエンヌの指先が扇情的な下着をあれこれ弄る様子を見られただけでも、この店に来た価値があると思える…もちろん見るだけに終わらないけれど。
「フリード…」
「ん?」
ジュリエンヌが疑問に思うであろう箇所には気付いているが、敢えて俺からは何も言わない…ジュリエンヌに言わせたいから。
「これは……どうして…」
隠すつもりもないほどに薄く繊細なレースで作られているそれには、何故かスリットが入っていて…ジュリエンヌはそこに指を通して「穴が開いてる…」と抜き差ししている。
周りの男達が喉を鳴らすのが分かり、視線で牽制してからそれを取り上げた。
「どうしてかは今夜教えてあげる」
自分で引くほどに甘い声が出たが、ジュリエンヌがさらに赤くなったから問題はないだろう。
それから数点の下着と夜着を購入して、女性の間で重宝されていると言われているらしい、店舗のロゴが刺繍で施されている袋に詰めてもらった。
「想う相手からこの袋で下着を贈られると、とても幸せな時間を過ごすことが出来るって言われているの」
なるほど。都市伝説のようなものなのだろうけれど、恐らく事実は少し違う。幸せな時間が何を意味しているのか…ジュリエンヌにはたっぷりと時間をかけて知ってもらいたい。
「さぁ、もう帰ろう。夕食のあとは一緒に湯浴みしようね」
「…はい」
******
「んん……」
ぼんやりと目を覚ますと、見たことのない天蓋が目に入り…ここは一体どこ?…と回らない頭を働かせようと少し身動ぐと、隣にフリードリヒが座っていることに気付いた。
「ん?起きた?」
読んでいた本を閉じて、まだぼやけている私に軽く口付ける。
「今日泊まる宿の寝台だよ」
優しく起こしてもらってキョロキョロしていた私に、これまた優しく答えてくれて……髪を梳く指が擽ったい。
「家を出る前に手短に湯浴みはしたけど、食事を終えたらゆっくり浸かろうね」
え?家を出る前に湯浴み?と軽く混乱する私を置いてきぼりにして、フリードリヒはあちこちに口付けをしている。
「……もう夜?」
擽ったいけれど嫌ではないのでされるがままにしつつ、今が何時なのか聞いてみるとまだ夕食の時間にすらなっていないと言う。それならば!
「う~ん…」
折角なら観光したいとお願いしてみるも、フリードリヒの反応はイマイチで…ワンピースの包みボタンを指で弄んでいる。なるほど。
「明日からは一歩も外に出ないでしょう?それにフリードと夫婦になってから初めてのお出掛けなのよ?しかも初日!お願い…フリードと初めての思い出が作りたいの」
自分でもわざとらしいと思えるほどの上目遣いと、胸の前で手を組むおねだりポーズ…これはフリードリヒによって既に胸元が露になっていた事で効果を増大させること間違いなし!!
「……わざとやってる?」
うっ……バレてる。だけどボタンを外す手の動きは止まった…あと一押し!!がんばれ私!!フリードリヒとの思い出作りのために!!!
「そうだとしても出掛けたい。それに…どうしても行ってみたいお店があるの。キャロライン様から教えてもらったお店なんだけど…」
“キャロライン様”という名前が出たことにフリードリヒの指先がピクリと動き、エメラルドの瞳にトロリと欲が浮かんだのが分かった。
フリードリヒとの触れ合いは私だって欲してる。だからこそ、この街でお薦めされたお店にどうしても行きたい!!!
「キャロライン夫人が教えてくれたお店…?」
「そうなの。結婚式の前にキャロライン様自らお祝いを持っていらしたんだけど…その……」
「うん…」
外したボタンを留めながらも、不埒に動くフリードリヒの指先にいちいち反応してしまう。
「キャロライン様が仰るには、そのお店にはとても素敵な…その…し、下着や夜着が売られているそうなの」
言い切って、頬が染まっていくのが分かる。もう既にフリードリヒとは体を重ねているのに、それを連想させてしまう言葉を発するだけでも恥ずかしい。
「……すぐに行こう」
欲を孕んだ瞳に鋭さを加えた視線で射抜かれて、もう買いにいかなくてもいいんじゃない?これ以上は身がもたないかも??など思うも時既に遅し。
嬉々として軽い足取りのフリードリヒと手を繋ぎ、まだまだ人が多い街へと繰り出した。
***
(フリードリヒ視点)
夜の指南者とも呼び声高いキャロライン伯爵夫人からのお薦めと言う店に着いて…胸が高鳴った。
下級貴族の屋敷くらいに広い店内には、ところ狭しと女性ものの下着や夜着が展示されていて、これらをジュリエンヌが身につけて、寝台で思いきり乱れる姿を想像すると……
「この店ごと買ってしまおうか…」
「え?」
思わず声に出してしまっていていたものの、きょとんとするジュリエンヌの可愛さに癒される。
「それにしても…男性客も結構いるもんなんだな」
ジュリエンヌが身に付ける物は常に自分も関わっていたいから当然のように付いてきたが、女性物専門店なのに男性客が多いことに驚いた。
……しかも、チラチラとジュリエンヌに視線を寄越す輩の多さに舌打ちをしたくなる。連れの女性にも失礼だとは思わないのだろうか。
思わずグイッと抱き寄せると、商品を眺めていたジュリエンヌが「きゃっ」と可愛い声をあげて…さらに注目を浴びる羽目になってしまった。
「?? フリードリヒも一緒に選んでくれる?」
「もちろん」
艶のある髪を一房掬って口付けると、周りから小さくも黄色い歓声が起こった。悔しそうな顔をしている男達の本音は、ジュリエンヌを好きに扱える俺に対する嫉妬だろうと分かる。
「今夜着るものから選ぼう」
「っ…フリードが甘過ぎる……」
「ジュリエンヌ限定でね」
嬉しそうに顔を綻ばせる様子を見てから、さてどれにしようかと店内を見回す。
「ここはね、パートナー同伴に限り男性も入れるらしいの。殆どの方が同伴されているって聞いたわ」
「へぇ…成る程」
明らかに商売女性と分かる相手を連れ立っている者もいるが、そういった者達が選んでいるのは非常に扇情的なデザインをしていて興味をそそられる。ジュリエンヌが着たら…即座に理性が切り落とされるに違いない。
「……フリード」
「ん?」
ジュリエンヌに袖を引っ張られて振り向くと、頬を膨らませて何やらご立腹の様子…に焦る。
「どうした?」
「……ああいう人がタイプなの?」
「え?」
ジュリエンヌの視線の先には、先ほどまで観察していたふたりの姿があって…勘違いをさせてしまったことに苦しくなる。先に理由を告げてから観察すればよかった。
「違うよ。俺が愛していているのはジュリエンヌだけだし、タイプなんて…ジュリエンヌの存在自体がそうだとしか言えない」
ふたりを見ていた理由も述べれば膨れていた頬は元に戻り、変わりに赤く色付いた。
「じゃぁ…フリードリヒが今夜着る下着と夜着を選んでくれたら許してあげる」
なんとも可愛らしい罰を与えられて、それならばと先ほどのふたりが吟味していた系統が並ぶエリアに移動した。
どうやら店内はいくつかのエリアに分けられていて、慎ましいものから下着の意味を持たないようなものまで幅広く揃えられているらしい。
「どうしよう…時間が足りない」
「じゃぁ、また一緒に来よう?」
いっそのこと全てのデザインを購入してしまおうかとも思ったけれど、ジュリエンヌの申し出にそちらの方がいいと首肯し、3ヶ月の蜜月の間は通い詰めようと決意する。早い時間に出れば日帰りでも通える距離だ。
「フリードはどれがいい?」
キラキラと瞳を輝かせているジュリエンヌの期待に応えたいと選んだのは…
「…今夜はこれがいいな」
手にしたデザインをジュリエンヌに渡すと、みるみるうちに首まで真っ赤になって…ぷるぷると震えている。刺激が強すぎただろうか。
「こ…これ?」
ジュリエンヌが羞恥心に襲われているのは分かるが、これ以外は認められないと力強く頷けば…おずおずとデザインを隅々まで確認している。
華奢なジュリエンヌの指先が扇情的な下着をあれこれ弄る様子を見られただけでも、この店に来た価値があると思える…もちろん見るだけに終わらないけれど。
「フリード…」
「ん?」
ジュリエンヌが疑問に思うであろう箇所には気付いているが、敢えて俺からは何も言わない…ジュリエンヌに言わせたいから。
「これは……どうして…」
隠すつもりもないほどに薄く繊細なレースで作られているそれには、何故かスリットが入っていて…ジュリエンヌはそこに指を通して「穴が開いてる…」と抜き差ししている。
周りの男達が喉を鳴らすのが分かり、視線で牽制してからそれを取り上げた。
「どうしてかは今夜教えてあげる」
自分で引くほどに甘い声が出たが、ジュリエンヌがさらに赤くなったから問題はないだろう。
それから数点の下着と夜着を購入して、女性の間で重宝されていると言われているらしい、店舗のロゴが刺繍で施されている袋に詰めてもらった。
「想う相手からこの袋で下着を贈られると、とても幸せな時間を過ごすことが出来るって言われているの」
なるほど。都市伝説のようなものなのだろうけれど、恐らく事実は少し違う。幸せな時間が何を意味しているのか…ジュリエンヌにはたっぷりと時間をかけて知ってもらいたい。
「さぁ、もう帰ろう。夕食のあとは一緒に湯浴みしようね」
「…はい」
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