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リクエスト☆番外編
押しの強い令嬢と逃げ腰の令息 (3/3)
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「お父様、わたくしポーター男爵家のデイビス様と結婚したいですわ。彼以外には嫁ぎません。無理強いをなさるなら修道院に参ります」
舞踏会から早すぎる帰宅をした愛娘の言葉に、筆頭公爵である父親は頭を抱えた。
普通の男爵家なら身分差で拒否出来る…が、ポーター家となれば話は別。
あえて男爵位に留まっているに過ぎず、その功績と価値は他国にさえ知れ渡っている。
加えて美形揃いと評判で、子供が生まれた瞬間から…いや、懐妊が分かった時点で縁談が申し込まれているとも伝え聞く家系。
その殆どがポーター家の持つ“権利”と本来得られるであろう“利益”目当てだが、中には真に心を寄せる者もいる。
しかし何故か縁談を受け入れることはなく、ある日いきなり婚約が発表される事でも有名。
それまで接点などなかったはずの家と、あっという間に婚約が結ばれ結婚するのだ。
それらを高速で脳内に巡らせた公爵は、娘の行動にまさかと思いを寄せる。
こういうことか?と。
本音を言えば反対したい。
一年の大半が雪に覆われているような僻地で、ピーク時には辿り着く事に過酷を極める。
しかも妻を深く寵愛するとも言われており、歴代の当主夫婦は年に数回しか表舞台に出てこない。
嫁いだら最後…きっと帰らないだろう。
目の前で決意を固くしている愛娘に目をやると…とても反対出来る雰囲気ではない。
反対すれば家出してしまうかもしれない。
いやお転婆だったのは幼少期…さすがにそんな無茶はしないだろう…本当に?など混乱する。
「……釣書は送ろう。だが、あちらが断るならそれまでだ。諦めなさい」
「いやです」
「え?」
思わず高い声が出た。
それもそうだろう、断られたら終わりだよと言っているのに『いや』とは何事だ。
「……聞き間違えかな?今、嫌だと──」
「いやです!!と申し上げました」
被せ気味に言われ、頭が痛くなってきた。
こんなに聞き分けの悪い娘だっただろうかと、ここ数年の様子を思い返して…現実逃避する。
「お父様…わたくし、たとえ二度三度と断られても諦めるつもりはございません。受け入れて下さるまで気持ちをお伝え致します」
「シャル…それは相手にとって迷惑になる。人の嫌がることはしてはいけないよ」
「デイビス様は嫌がりませんわ」
どこからその自信が沸くのかと問いたくなるが、長くなりそうなので言葉を飲み込んだ。
「……とにかく、釣書は送る。それでいいな?」
「わたくしからの手紙も同封して下さいまし」
「…分かった」
「すぐにお持ち致しますわっ!!」
娘は上機嫌で執務室を出ていき、私は急いで釣書を用意し早馬を準備させた。
ポーター家の長男が女性不信に陥っている事は聞いているから、恐らく断るだろう…と目論み、早く諦めさせる為にも早馬の使いに賃金を上乗せして、一刻も早い到着を依頼した。
せめてのも抵抗で、釣書の片隅に小さく本音を書き記したのは娘に内緒だ。
*~*~*~*~*~*
「旦那様!!おじょ、、お嬢様がおりません!!」
嫌な予感はしていた。
最初の釣書は早々に断りを入れられたが、その後も娘が手紙を送り続けていたのは知っていたし、王宮では親しげに寄り添っていたと耳にした。
そもそも、釣書に手紙を同封したのは娘が初めてではないのに、返事を貰ったのは娘だけ。
その時点で、相手が本当は娘との婚姻を望んでいるのだとも察していた。
だが、シャーロットは筆頭公爵家の娘。
その娘を受け入れるには、やはりあのポーター家でも躊躇したのだろうと安心していたのだ。
しかし公爵は娘を甘くみていた。
いや、正確には忘れていた。
今でこそ“深窓の令嬢”などと呼ばれているが、かつては野山を裸足で駆け回るほど、お転婆で手がつけられなかった事を。
「……行き先は分かっている」
娘の不在を知らせに来た侍女長にそう言うと、公爵は秘かに用意していた書類を引き出しから取り出した。
【婚約契約書】
貴族の結婚は家同士の繋がりが強い。
その為、たとえ恋愛結婚でも最小限の内容で契約を結ぶ事になる。
互いの子供を守る為だ。
恐らく数日の内にポーター家から連絡が入るであろうから、すぐに対応出来るように公爵は愛用の万年筆を手に取る。
父親として願うのはただひとつ。
娘が末永く一途に愛される、幸せな未来だけだ。
*~*~*~*~*~*
父親の心配などどこ吹く風で、シャーロットはひたすら雪深い山道を登っていた。
かつては簡単に動かせた体も、長年の淑女教育でうまく自由が利かない。
それでも足を前に進めるのは、ただデイビスに会いたいという想いがあるから。
「……っ、寒いわ」
命を落としてもおかしくない状況でシャーロットが平気なのは、珍しく雪がやんでいたせい。
降り積もったものは仕方ないにしても、体に降りかかったり視界を遮られないだけ幸運だった。
「あとどのくらいかしら」
さすがに野宿は出来ない、凍死する。
深夜に家を出て、麓までは馬に乗せてもらい全速力で駆けてきてもらった。
あとは自力で登るだけ。
僅かな休憩だけを挟みつつ、やがてデイビスが住まう地域に足を踏み入れたところで、先程までやんでいた雪が降り始め…一気に吹雪となった。
「……天はわたくしの味方なんだわ」
雪まみれとなりながらも胸は高鳴り、先触れも何もないが男爵家の玄関扉を叩いた。
出迎えてくれたデイビスに抱き締められた時は、思わず「ご褒美♡」と呟いてしまったが、それに気付く様子はなく…それどころか焦ったことで呼び捨てにされ、ますます心は踊り出す。
湯船で体を温め終わるとデイビスの母親がやって来て、ポーター家特製だと言うボディクリームを渡してくれた。
「あの子が調合したものなのよ」
それを塗り込んで貰っている間、なんだかデイビスに包まれているような気分になり…顔の火照りは増してしまう。
結局、湯上がりと高揚というW効果で頬を染めたままデイビスの元へ戻り、そこでさらなるご褒美を享受して、シャーロットは一気に攻めた。
本当は少し怖い。
こんな風に迫って、めんどくさい女だと嫌われてしまうかもしれないと不安になりつつ、こうでもしなければ向き合ってはくれないと…どこか本能的に感じていた。
顔を近づけ見つめ合えば、明らかに自分を欲しているのだと分かり…触れ合う部分の高揚も伝わってきて、だめ押しする。
突き飛ばされてもいい…そう思いながら心のうちを全て伝えたら、デイビスが唇を重ねてきた。
何度も何度も繰り返し、初めての口付けはデイビスの雄的本能によって夢中となり、いっそそのまま一線を越えてしまいたくなる。
が、その願いが叶ったのは数日後。
せめて婚約が整ってからと言うデイビスに痺れを切らし、母親全面協力のもと夜這いをかけた。
押して押して押しまくり、何かと言い訳するデイビスを文字通り押し倒して箍を外させる事に成功し…そこからは言葉では言い表せないほど、熱く甘い時間をたっぷりと過ごすことに。
いつの間にか婚約が整い、最短の半年後に結婚式をしようかと準備を始めたところで妊娠発覚。
超特急で挙げられることとなった。
「シャル」
夫となったデイビスがシャーロットを呼ぶ声はどこまでも甘く、いつまでも心を溶かしてくる。
抱き合って横になれば深く愛し合うが、気が付くと研究にのめりこんでしまう夫。
幾度となく研究室に乗り込み、時には無理やり腕を引いて寝室へ籠ったこともある。
そのお陰か、ふたりは三人の子に恵まれた。
*~*~*~*~*~*
妻を溺愛するデイビスによって、シャーロットは年齢を重ねても尚若々しく、その肌艶の良さはもはや生きる伝説とまで云われ始め、人妻となり母となった彼女に多くの熱い視線を集めていた。
しかし実際に皆が目にするのは年に数回。
もう見納めかもしれないと男達が凝視すると、それに気付いたデイビスは嫉妬に駆られてしまい、それはそれは熱い常夏のような夜となる。
なのに普段は研究に没頭しがち。
そんな夫を尊敬しているし愛しているが、やはり深く愛されたいのが女心。
父親の血を強く引いた娘に頼み、男をその気にさせる薬を調合してもらった。
「シャル……ッ!!」
これが期待以上の効果を生み、ただでさえ艶々しいシャーロットはさらに輝きを増し、デイビスの嫉妬心と劣情は煽られ続け、まさかの四人目作成中!?と疑われるほどの睦まじさとなった。
ちなみに、構って欲しくなるたびに連れ出すのも気が引けてしまう(時もある)ので、研究室の隣室を簡易な寝室に改装した。
特に隠していたわけではないが、研究に入ると思考や聴覚が遮断されるデイビスは気付かず、ある日突然シャーロットに連れていかれ…その妖しさに瞠目してしまった。
どう見ても情事の為に誂えられており、備え付けの備品も心遣いが行き届いている。
湯を張り巡らせた保温庫には濡れタオルがあり、小さなクローゼットには下着や部屋着が数組み用意されていた。
火照った体に効きそうな雪解け水は、いつでも飲めるように水路まで完備。
シャーロット愛用の【雪の花】美容グッズも並べられている。
ふたりが寄り添い入れるサイズの浴槽まで設置されていて、夫婦の寝室より使用頻度は格段に高いものとなった。
デイビスの技巧は妻を愛する本能的なものだが、シャーロットのテクニックは年々巧みさを増す。
いつしか閨の悩みを聞いては助言をするようになり、やがてポーター家には【お悩み相談】と書かれた箱が用意された。
中には常にぎっしりと手紙が入っており、その殆どが女性達からの閨指南を乞うもの。
時折男性からも来るが、それらはデイビスの手によってビリビリに千切られ暖炉に投げ入れられてしまうのであった。
舞踏会から早すぎる帰宅をした愛娘の言葉に、筆頭公爵である父親は頭を抱えた。
普通の男爵家なら身分差で拒否出来る…が、ポーター家となれば話は別。
あえて男爵位に留まっているに過ぎず、その功績と価値は他国にさえ知れ渡っている。
加えて美形揃いと評判で、子供が生まれた瞬間から…いや、懐妊が分かった時点で縁談が申し込まれているとも伝え聞く家系。
その殆どがポーター家の持つ“権利”と本来得られるであろう“利益”目当てだが、中には真に心を寄せる者もいる。
しかし何故か縁談を受け入れることはなく、ある日いきなり婚約が発表される事でも有名。
それまで接点などなかったはずの家と、あっという間に婚約が結ばれ結婚するのだ。
それらを高速で脳内に巡らせた公爵は、娘の行動にまさかと思いを寄せる。
こういうことか?と。
本音を言えば反対したい。
一年の大半が雪に覆われているような僻地で、ピーク時には辿り着く事に過酷を極める。
しかも妻を深く寵愛するとも言われており、歴代の当主夫婦は年に数回しか表舞台に出てこない。
嫁いだら最後…きっと帰らないだろう。
目の前で決意を固くしている愛娘に目をやると…とても反対出来る雰囲気ではない。
反対すれば家出してしまうかもしれない。
いやお転婆だったのは幼少期…さすがにそんな無茶はしないだろう…本当に?など混乱する。
「……釣書は送ろう。だが、あちらが断るならそれまでだ。諦めなさい」
「いやです」
「え?」
思わず高い声が出た。
それもそうだろう、断られたら終わりだよと言っているのに『いや』とは何事だ。
「……聞き間違えかな?今、嫌だと──」
「いやです!!と申し上げました」
被せ気味に言われ、頭が痛くなってきた。
こんなに聞き分けの悪い娘だっただろうかと、ここ数年の様子を思い返して…現実逃避する。
「お父様…わたくし、たとえ二度三度と断られても諦めるつもりはございません。受け入れて下さるまで気持ちをお伝え致します」
「シャル…それは相手にとって迷惑になる。人の嫌がることはしてはいけないよ」
「デイビス様は嫌がりませんわ」
どこからその自信が沸くのかと問いたくなるが、長くなりそうなので言葉を飲み込んだ。
「……とにかく、釣書は送る。それでいいな?」
「わたくしからの手紙も同封して下さいまし」
「…分かった」
「すぐにお持ち致しますわっ!!」
娘は上機嫌で執務室を出ていき、私は急いで釣書を用意し早馬を準備させた。
ポーター家の長男が女性不信に陥っている事は聞いているから、恐らく断るだろう…と目論み、早く諦めさせる為にも早馬の使いに賃金を上乗せして、一刻も早い到着を依頼した。
せめてのも抵抗で、釣書の片隅に小さく本音を書き記したのは娘に内緒だ。
*~*~*~*~*~*
「旦那様!!おじょ、、お嬢様がおりません!!」
嫌な予感はしていた。
最初の釣書は早々に断りを入れられたが、その後も娘が手紙を送り続けていたのは知っていたし、王宮では親しげに寄り添っていたと耳にした。
そもそも、釣書に手紙を同封したのは娘が初めてではないのに、返事を貰ったのは娘だけ。
その時点で、相手が本当は娘との婚姻を望んでいるのだとも察していた。
だが、シャーロットは筆頭公爵家の娘。
その娘を受け入れるには、やはりあのポーター家でも躊躇したのだろうと安心していたのだ。
しかし公爵は娘を甘くみていた。
いや、正確には忘れていた。
今でこそ“深窓の令嬢”などと呼ばれているが、かつては野山を裸足で駆け回るほど、お転婆で手がつけられなかった事を。
「……行き先は分かっている」
娘の不在を知らせに来た侍女長にそう言うと、公爵は秘かに用意していた書類を引き出しから取り出した。
【婚約契約書】
貴族の結婚は家同士の繋がりが強い。
その為、たとえ恋愛結婚でも最小限の内容で契約を結ぶ事になる。
互いの子供を守る為だ。
恐らく数日の内にポーター家から連絡が入るであろうから、すぐに対応出来るように公爵は愛用の万年筆を手に取る。
父親として願うのはただひとつ。
娘が末永く一途に愛される、幸せな未来だけだ。
*~*~*~*~*~*
父親の心配などどこ吹く風で、シャーロットはひたすら雪深い山道を登っていた。
かつては簡単に動かせた体も、長年の淑女教育でうまく自由が利かない。
それでも足を前に進めるのは、ただデイビスに会いたいという想いがあるから。
「……っ、寒いわ」
命を落としてもおかしくない状況でシャーロットが平気なのは、珍しく雪がやんでいたせい。
降り積もったものは仕方ないにしても、体に降りかかったり視界を遮られないだけ幸運だった。
「あとどのくらいかしら」
さすがに野宿は出来ない、凍死する。
深夜に家を出て、麓までは馬に乗せてもらい全速力で駆けてきてもらった。
あとは自力で登るだけ。
僅かな休憩だけを挟みつつ、やがてデイビスが住まう地域に足を踏み入れたところで、先程までやんでいた雪が降り始め…一気に吹雪となった。
「……天はわたくしの味方なんだわ」
雪まみれとなりながらも胸は高鳴り、先触れも何もないが男爵家の玄関扉を叩いた。
出迎えてくれたデイビスに抱き締められた時は、思わず「ご褒美♡」と呟いてしまったが、それに気付く様子はなく…それどころか焦ったことで呼び捨てにされ、ますます心は踊り出す。
湯船で体を温め終わるとデイビスの母親がやって来て、ポーター家特製だと言うボディクリームを渡してくれた。
「あの子が調合したものなのよ」
それを塗り込んで貰っている間、なんだかデイビスに包まれているような気分になり…顔の火照りは増してしまう。
結局、湯上がりと高揚というW効果で頬を染めたままデイビスの元へ戻り、そこでさらなるご褒美を享受して、シャーロットは一気に攻めた。
本当は少し怖い。
こんな風に迫って、めんどくさい女だと嫌われてしまうかもしれないと不安になりつつ、こうでもしなければ向き合ってはくれないと…どこか本能的に感じていた。
顔を近づけ見つめ合えば、明らかに自分を欲しているのだと分かり…触れ合う部分の高揚も伝わってきて、だめ押しする。
突き飛ばされてもいい…そう思いながら心のうちを全て伝えたら、デイビスが唇を重ねてきた。
何度も何度も繰り返し、初めての口付けはデイビスの雄的本能によって夢中となり、いっそそのまま一線を越えてしまいたくなる。
が、その願いが叶ったのは数日後。
せめて婚約が整ってからと言うデイビスに痺れを切らし、母親全面協力のもと夜這いをかけた。
押して押して押しまくり、何かと言い訳するデイビスを文字通り押し倒して箍を外させる事に成功し…そこからは言葉では言い表せないほど、熱く甘い時間をたっぷりと過ごすことに。
いつの間にか婚約が整い、最短の半年後に結婚式をしようかと準備を始めたところで妊娠発覚。
超特急で挙げられることとなった。
「シャル」
夫となったデイビスがシャーロットを呼ぶ声はどこまでも甘く、いつまでも心を溶かしてくる。
抱き合って横になれば深く愛し合うが、気が付くと研究にのめりこんでしまう夫。
幾度となく研究室に乗り込み、時には無理やり腕を引いて寝室へ籠ったこともある。
そのお陰か、ふたりは三人の子に恵まれた。
*~*~*~*~*~*
妻を溺愛するデイビスによって、シャーロットは年齢を重ねても尚若々しく、その肌艶の良さはもはや生きる伝説とまで云われ始め、人妻となり母となった彼女に多くの熱い視線を集めていた。
しかし実際に皆が目にするのは年に数回。
もう見納めかもしれないと男達が凝視すると、それに気付いたデイビスは嫉妬に駆られてしまい、それはそれは熱い常夏のような夜となる。
なのに普段は研究に没頭しがち。
そんな夫を尊敬しているし愛しているが、やはり深く愛されたいのが女心。
父親の血を強く引いた娘に頼み、男をその気にさせる薬を調合してもらった。
「シャル……ッ!!」
これが期待以上の効果を生み、ただでさえ艶々しいシャーロットはさらに輝きを増し、デイビスの嫉妬心と劣情は煽られ続け、まさかの四人目作成中!?と疑われるほどの睦まじさとなった。
ちなみに、構って欲しくなるたびに連れ出すのも気が引けてしまう(時もある)ので、研究室の隣室を簡易な寝室に改装した。
特に隠していたわけではないが、研究に入ると思考や聴覚が遮断されるデイビスは気付かず、ある日突然シャーロットに連れていかれ…その妖しさに瞠目してしまった。
どう見ても情事の為に誂えられており、備え付けの備品も心遣いが行き届いている。
湯を張り巡らせた保温庫には濡れタオルがあり、小さなクローゼットには下着や部屋着が数組み用意されていた。
火照った体に効きそうな雪解け水は、いつでも飲めるように水路まで完備。
シャーロット愛用の【雪の花】美容グッズも並べられている。
ふたりが寄り添い入れるサイズの浴槽まで設置されていて、夫婦の寝室より使用頻度は格段に高いものとなった。
デイビスの技巧は妻を愛する本能的なものだが、シャーロットのテクニックは年々巧みさを増す。
いつしか閨の悩みを聞いては助言をするようになり、やがてポーター家には【お悩み相談】と書かれた箱が用意された。
中には常にぎっしりと手紙が入っており、その殆どが女性達からの閨指南を乞うもの。
時折男性からも来るが、それらはデイビスの手によってビリビリに千切られ暖炉に投げ入れられてしまうのであった。
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通知がきていて飛んできました!!嬉しい(*^^*)優しい人が多いお話なので番外編楽しみです(*^^*)お兄ちゃん!!
ありがとうございます♡
四人が主人公…ちょっと頭を使いましたが、お楽しみ頂けたようで何よりです😊
男爵夫妻、私も気になります🤔
こりゃ、番外編でありかな??🙈