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元妻《前編》
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𓂃𓈒𓏸︎︎︎︎
紗也加と再婚してからの翔太郎はご機嫌続き。
「......可愛いなぁ.........」
今日も今日とて、ふと目を覚ました時に愛する女性が腕の中にいることが嬉しくて仕方ない。
昨夜は休み前夜だからと深く愛し合い、そのまま眠ってしまったふたりは何も纏っておらず、肌が直接触れ合えば余韻と熱がぶり返す。
「紗也加」
小さく声をかけてみるが反応はなく、時計を見ればまだ明け方。
生理現象も手伝って下半身は元気一杯。
そっと紗也加の秘所に手を伸ばせばくちゅりと音が響いて、それが昨夜散々に吐き出したものだと分かり体が熱くなる。
幸いにも娘は友人宅に泊まりがけで不在にしており、朝から夫婦でのんびり過ごそうと誰に迷惑をかけるでもないのだから。
しかも裸のまま。
そう出来るのもオマセな友人に影響を受けた娘が『あたしもひとりでねる!!』と言い出したからで、そんな娘に感謝しつつ愛し合う日々。
幼いながらに元妻との離婚前は不穏な空気を察してあまり笑わなかった娘も、紗也加と交流を持つようになってからはよく笑うようになり、今では子供らしい笑い声が響く家庭となった。
『まだ幼い子供には母親が必要』『離婚は考え直した方がいい』と言う者もいたが、あのまま元妻と婚姻関係を継続し続ける方が悪影響だったのだと断言できる。
「...ん......」
色々と思考を巡らせながらもついつい悪戯に手を動かしていると、静かに寝息を立てていた紗也加がもぞもぞと身じろいだ。
「………...なんじ...?」
「起こしちゃったね、ごめん。まだ5時前だよ」
「...そぅ...」
このままあわよくば...と思ったが、微睡みながら身を寄せ再び寝息を立て始めた紗也加。
その甘えるような仕草に心は温かくなり、悪戯はやめて翔太郎も再び夢の中へと落ちていった。
★・。・゚゚・*:.。..。.:*・゚
二度寝から目覚めたのは9時を過ぎた頃。
軽めの朝食をとってのんびりコーヒーを飲んでいる時、携帯に届いたメッセージ通知を見て翔太郎の表情は曇る。
表示されている送り主の名は“灰原円香”で、その名は元妻の旧姓。
接近禁止命令を出してはいるが、一切の連絡手段を無くすと逆に何を仕出かすか分からない人間性であり、弁護士の勧めもあって電話番号の登録だけは残していた。
滅多に届くことのない元妻からのメッセージ内容には「話しがしたい」とだけ記され、聞かずとも何が目的か察してしまう。
自然と眉間に皺が寄るのは、これまでも同様の連絡が何度か届き、その度に同じやり取りを繰り返してきたから。
今の勤め先は教えていないし自宅を知られてはいないと思うが、地元に戻っていることは人伝に聞いて知っている為、無視をすればどんな行動に移るか分からない。
探偵を使って相手の住居を突き止め、それが傷害や殺害事件に発展したニュースもある。
自分ひとりであれば如何様にも対応出来るけれど、守るべき存在がいる以上は対応をせざるを得ないと判断し、キッチンで洗い物をする紗也加に声をかけた。
「紗也加…少し出てくる」
突然の申し出に「え?」と反応するが、神妙な面持ちの翔太郎に事態を察して「分かった」とだけ返した。
「……すぐ戻るから…ごめん」
申し訳なさそうに謝る翔太郎にふるふると首を振って応え、大丈夫だよと言い抱き締める。
単なる元カノが相手なら到底容認出来ないが、訳ありの元妻となれば話は別。
離婚に至るまでの経緯やその人間性を知っているからこそ、複雑ながらもやり取りを繰り返す翔太郎を見守ってきた。
「………愛してる」
「私も」
かつては愛した相手で子供を儲けた“元妻”という立場に嫉妬心がないわけではなく、可能ならばもう2度と関わらないで欲しいとも思う。
実際そう出来ないかと弁護士に相談したこともあるが、相手は何事も自分に都合よく解釈するような思考の持ち主で話が通じない。
無理に関係を絶つより適当にあしらう方が得策と判断され、現在のような対応になった。
けれどいつもはメッセージのやり取りが主で、稀に電話で話す事はあれど会うことはなかったのに…と紗也加の心に黒い靄が生まれてしまう。
「行ってくる」
玄関で見送る翔太郎は明らかに不機嫌で、今さら元妻とどうこうなるとは思っていないし信じてもいるがやり切れず、腕を引いて振り向かせると唇を重ねた。
掻き抱くように抱き締められ、絡まる舌の動きは行為の最中を思わせるような激しさで、湧き上がってきたのは猛烈な独占欲。
濃厚な口付けのせいで翔太郎の股間は硬くなっており、その状況で元妻に会わせるわけにはいかない…と足元にしゃがみ込んだ。
★・。・゚゚・*:.。..。.:*・゚
自家用車ではなくタクシーで向かった先にいたのは、露出度の高い装いをした元妻。
翔太郎の姿に気付くと満面の笑みを見せ、弾んだ声で名を呼び駆け寄ってくる。
「翔太郎!!久しぶり!!」
その甘ったるい声音が耳障りに思えた。
紗也加と再婚してからの翔太郎はご機嫌続き。
「......可愛いなぁ.........」
今日も今日とて、ふと目を覚ました時に愛する女性が腕の中にいることが嬉しくて仕方ない。
昨夜は休み前夜だからと深く愛し合い、そのまま眠ってしまったふたりは何も纏っておらず、肌が直接触れ合えば余韻と熱がぶり返す。
「紗也加」
小さく声をかけてみるが反応はなく、時計を見ればまだ明け方。
生理現象も手伝って下半身は元気一杯。
そっと紗也加の秘所に手を伸ばせばくちゅりと音が響いて、それが昨夜散々に吐き出したものだと分かり体が熱くなる。
幸いにも娘は友人宅に泊まりがけで不在にしており、朝から夫婦でのんびり過ごそうと誰に迷惑をかけるでもないのだから。
しかも裸のまま。
そう出来るのもオマセな友人に影響を受けた娘が『あたしもひとりでねる!!』と言い出したからで、そんな娘に感謝しつつ愛し合う日々。
幼いながらに元妻との離婚前は不穏な空気を察してあまり笑わなかった娘も、紗也加と交流を持つようになってからはよく笑うようになり、今では子供らしい笑い声が響く家庭となった。
『まだ幼い子供には母親が必要』『離婚は考え直した方がいい』と言う者もいたが、あのまま元妻と婚姻関係を継続し続ける方が悪影響だったのだと断言できる。
「...ん......」
色々と思考を巡らせながらもついつい悪戯に手を動かしていると、静かに寝息を立てていた紗也加がもぞもぞと身じろいだ。
「………...なんじ...?」
「起こしちゃったね、ごめん。まだ5時前だよ」
「...そぅ...」
このままあわよくば...と思ったが、微睡みながら身を寄せ再び寝息を立て始めた紗也加。
その甘えるような仕草に心は温かくなり、悪戯はやめて翔太郎も再び夢の中へと落ちていった。
★・。・゚゚・*:.。..。.:*・゚
二度寝から目覚めたのは9時を過ぎた頃。
軽めの朝食をとってのんびりコーヒーを飲んでいる時、携帯に届いたメッセージ通知を見て翔太郎の表情は曇る。
表示されている送り主の名は“灰原円香”で、その名は元妻の旧姓。
接近禁止命令を出してはいるが、一切の連絡手段を無くすと逆に何を仕出かすか分からない人間性であり、弁護士の勧めもあって電話番号の登録だけは残していた。
滅多に届くことのない元妻からのメッセージ内容には「話しがしたい」とだけ記され、聞かずとも何が目的か察してしまう。
自然と眉間に皺が寄るのは、これまでも同様の連絡が何度か届き、その度に同じやり取りを繰り返してきたから。
今の勤め先は教えていないし自宅を知られてはいないと思うが、地元に戻っていることは人伝に聞いて知っている為、無視をすればどんな行動に移るか分からない。
探偵を使って相手の住居を突き止め、それが傷害や殺害事件に発展したニュースもある。
自分ひとりであれば如何様にも対応出来るけれど、守るべき存在がいる以上は対応をせざるを得ないと判断し、キッチンで洗い物をする紗也加に声をかけた。
「紗也加…少し出てくる」
突然の申し出に「え?」と反応するが、神妙な面持ちの翔太郎に事態を察して「分かった」とだけ返した。
「……すぐ戻るから…ごめん」
申し訳なさそうに謝る翔太郎にふるふると首を振って応え、大丈夫だよと言い抱き締める。
単なる元カノが相手なら到底容認出来ないが、訳ありの元妻となれば話は別。
離婚に至るまでの経緯やその人間性を知っているからこそ、複雑ながらもやり取りを繰り返す翔太郎を見守ってきた。
「………愛してる」
「私も」
かつては愛した相手で子供を儲けた“元妻”という立場に嫉妬心がないわけではなく、可能ならばもう2度と関わらないで欲しいとも思う。
実際そう出来ないかと弁護士に相談したこともあるが、相手は何事も自分に都合よく解釈するような思考の持ち主で話が通じない。
無理に関係を絶つより適当にあしらう方が得策と判断され、現在のような対応になった。
けれどいつもはメッセージのやり取りが主で、稀に電話で話す事はあれど会うことはなかったのに…と紗也加の心に黒い靄が生まれてしまう。
「行ってくる」
玄関で見送る翔太郎は明らかに不機嫌で、今さら元妻とどうこうなるとは思っていないし信じてもいるがやり切れず、腕を引いて振り向かせると唇を重ねた。
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★・。・゚゚・*:.。..。.:*・゚
自家用車ではなくタクシーで向かった先にいたのは、露出度の高い装いをした元妻。
翔太郎の姿に気付くと満面の笑みを見せ、弾んだ声で名を呼び駆け寄ってくる。
「翔太郎!!久しぶり!!」
その甘ったるい声音が耳障りに思えた。
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