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夫婦間の決まり事~その1~

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【スキンシップは欠かさない】

これは新婚当初に決めたもの。

とは言えふたりがそれを義務的に行ったことはなく、常に自然体のままで無意識にスキンシップを図っていた。

キスは1日の中で数え切れぬほどに交わし、常に寄り添っては体の何処かを触れ合わせ、比較的頻繁に営んでもいる。

それは妊娠中であっても変わらない。






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「立川さんてさ、カッコイイのにあんまり笑わないよね。てか見たことないんだけど」


ある日の給湯室で、そんな疑問を口にした女子社員の言葉に頷く面々。

よく言えばクール…悪く言えば冷たい透は近寄り難い雰囲気があり、少しでも接点を持ちたい話したいと思う女性達は悶々としていた。


「確かに…でもさ、噂によると帰り際に見ることが出来るらしいよ」

「帰り際?なんで?」

「奥さんに帰るコールしてるからじゃないかって話だけど…すっごい笑顔なんだって」

「聞いたことある…蕩けるような笑顔で『今から帰るよ』とか言ってるとか…」

「何それ、最高かよ」


かくして、透の笑顔を見るべく❝帰るコール❞のタイミングに鉢合わせようと目論むことに。

しかし多忙を極める透の動向はなかなか掴めず、ましてどのタイミングで❝帰るコール❞をしているのかも分からない。

運良く社内で見かけることが出来ても残業が殆どで、定時上がりが基本の彼女達は後ろ髪を引かれながら帰宅する他なかった。

そしていつしか諦めムードが濃厚になってきたある日の定時直後……


「立川くん、これ以前言ってたやつ。桜ちゃんに渡してあげて」


透の元を訪ねたひとりの女性。

同い年の中途採用者だが、偶然にも桜が高校時代に親しくしていた先輩でもあった人物で、珍しく透の方からも声をかける女性である。


「あぁ、これか。ありがとう」

「元気にしてる?桜ちゃん。相変わらず鳥籠に囲って大事にしてるの?」

「大事にしてますよ」


聞き耳を立てる女子社員達は❝鳥籠❞というワードに首を傾げるが、透が事も無げに流したので深く考えるまでには至らない。

それよりも、不意に見せた小さな口元の綻びに目が釘付けとなった。


「じゃぁ、よろしくね」


ヒラヒラと手を振ってフロアを出ていく女性。

透も同じように返してから、「定時か…」と呟き携帯を取り出した。

その様子に女子社員達は「まさか!?」と色めき立ち、帰宅準備をしながらも横目で盗み見る。


「……もしもし、桜?お疲れ様」


彼女達は心の中で「きたぁぁぁ!!」と叫び、横目で見るのをやめて堂々と視線を向ける者もいる中で、透は愛妻との会話を続けた。


「うん、まだ会社。もう少し仕事してから帰るからいつも通りになるかな。…うん…俺もだよ。何か買って帰るものある?…ん?……なるべく早く帰るから待ってて…うん…分かった、じゃあね」


通話を終えて静かに携帯を置く透。

ふと視線を感じて顔をあげるが、周囲にいる女性達は皆一様に帰り支度をしているだけ。


「? さて、さっさと片付けるか」


いつものクール…もとい感情の読めない面持ちに戻った透の様子に「あっぶねぇぇぇ!!」と内心叫び、「眼福!!あざっす!!」と続けて頬を染めた女子社員達はそそくさと帰宅の途についた。

その道中で彼女達が盛り上がったのは言うまでもなく、一同は居酒屋へと繰り出す。


「何あれ!!ヤバいんだけど!!」

「奥さん絡むとあんなんなるの!?」

「何か買って帰る?とか…いい旦那過ぎる!!」

「いいなぁ…立川さん、家ではあんな風に優しい旦那さんでパパなんだろうなぁ」

「立川さんの奥さん4人目妊娠中なんだよね?…どんなセックスするんだろう…」


最後の疑問に暫し沈黙が訪れ、やがて打ち破るように響いた威勢のいい「生お代わり!!」。


「いやいや、ここで生とか…」

「でもさ…あの風貌で立て続けに4人作るとか…立川さんて結構性欲強め?」

「噂だとあと2人くらい欲しいって言ってるらしいし…あながちそうかも?」

「見た目通り優しいのかなぁ…?それとも案外激しめが好きだったり?」

「ヤバい…想像したらやりたくなってきた…」

「……私も」


この日の夜、透を相手に複数の女性が妄想を繰り広げてひとり遊びに興じた事は誰も知らない。






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自分の笑顔ひとつが原因で夫婦の営みについて話題にされているなど露とも知らない透は、少しの残業を経て無事帰宅。


「おかえりなさいっ!!」


バフッ…と聞こえそうな勢いで足元に飛び込んで来たのは子供達で、遅れをとった末っ子(2)も必死で玄関へと向かってきている。

可愛い攻撃を受けた透はしゃがんで「ただいま」と返し、漸く追いついた末っ子ごと3人を抱き締めて頬にキスをした。


「おかえりなさい」


そして愛妻の桜には頬ではなく唇へ。


「ただいま。いい匂いがする」

「今日はビーフシチューにしたの。すぐに食べられるけどどうする?お風呂にする?」

「ん~……」


定時であがれない時、子供達は先に夕食を済ませているので桜とふたりで食べるのが定番。

空腹だろうな…と思うも、足元を見ればキラキラと目を輝かせている子供達がいた。

まだパジャマではない…と言うことはまだ入浴前であり、透の帰宅を待っていたのだと窺える。


「先にお風呂にしようか」


その言葉に子供達は「きゃぁぁぁっ!!」と歓喜の叫びをあげて浴室へと駆けていった。

末っ子も負けじと追いかけていく。


「桜はお腹空いてるよね?ごめん」

「大丈夫。あの子達、透くんが帰ってくるの楽しみにしてたし。何度も玄関とリビングを行ったり来たりしてたんだよ」


早く帰れる時は必ず家族揃ってお風呂を楽しむのも立川家のお決まり。

少し広めの浴室は5人で入っても余裕がある。


「じゃぁ、ご期待に添わないとね」

「新しい水鉄砲買ったから、パパと遊ぶって張り切ってるの。よろしくね」


暫し夫婦で会話してから遅れて浴室へ向かえば、そこには既に服を脱ぎ散らかした子供達の姿。


「パパ!!これで遊ぼう!!」


家族との時間が何よりの癒しで、どんなものよりも大切だと自負する透はその様子に微笑んだ。


「よぉし!!パパと勝負だ~!!」


手早く脱いできゃあきゃあ騒ぐ子供達と入っていく光景を、桜は穏やかな表情で見守る。

仕事で疲れているはずなのに、こうして時間があれば必ず子供達の相手をして交流を深め、決して遠ざけたり蔑ろにする事はしない。

幼子を3人も抱えて大変な時もあるけれど、そんな透が夫だからこそ4人目を安心して産もうと思えるのだと再度実感した。


「ままぁ!!はやくきてぇ!!」

「今行きまーす」


親子でお風呂を楽しむのもそう長くない。

だからこそ今を存分に楽しみ、いつかそれぞれの道を歩む中で家庭を築いた際には手本や糧となるよう、家族の温かい思い出にしたいと願った。






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「ぐっすり寝てるよ。疲れたんだな」

「お疲れ様」


お風呂で散々はしゃいだ後も何かと透の傍から離れようとしなかった子供達も、電池が切れたかのように突然こと切れて夢の中へと落ちていった。

漸く訪れた夫婦の時間。

ちなみに子供達が眠るのは夫婦とは別の部屋で、仕切りを取り除いて広くした一室を遊び部屋兼寝室としている。

元はそこで親子並ぶ形で寝ていたが、ある日幼稚園から帰宅した息子が自立を宣言した。


『ぼく、きょうからパパたちとはねない』


どうやら幼稚園で好きな女の子が『ひとりでねてるなんてすごいね!!』と他の男児を褒めていたらしく、対抗心を催した模様。

何故か妹ふたりもそれに続き、結果として親である透と桜が子供部屋から追い出された。

それ以来、念の為に見守りカメラを設置し夫婦はふたりきりで夜を過ごしている。


「さて。マッサージするから横になって」

「はぁい」


これも夫婦の日課であるが、透にとっては妊婦の妻を労りながら図れるスキンシップのひとつ。

桜としてもむくみの解消や肌の保湿など良い事づくめなので素直に受け入れるが、触れ合っていると徐々にその手付きが妖しくなってきてしまう。


「だいぶ大きくなったよね」

「うん。凄く動き回るし、元気いっぱい」

「今度はどっちだろう、男の子かな?」

「そう…っかも……」


なんら変哲のない会話をしながら透は淡々と保湿クリームを塗り込むが、その箇所がジワジワと際どい所を攻めるので桜の呼吸が乱れ始めた。


「はい、次はおっぱいね」


そう言って前開きの寝巻きをはだけさせ、通常より大きくなった胸をやわやわと揉みこむ。

柔らかい乳房を撫でるように揉みつつ、不意に先端へ指を掠めさせるのでビクンと背が反った。


「……ぁっ…」

「ちゃんとじっとしてなくちゃダメだよ。ここもマッサージする?硬くなってるし」

「やっ……だめ…っ……」

「でも凝りは解さないと」


真剣な素振りで乳首を摘みコリコリと弄るので、引き出された快感を逃がそうと身を捩るも離してはくれず、チラリと見れば目に情欲を湛えた夫がこちらの様子を見つめている。

それすらも刺激となり、無意識に潤んだ目で見つめ返して太腿をスリ…っと擦り寄せてしまった。


「…俺の奥さんは本当にいやらしくて可愛い…」


透も自分がけしかけたとは言え身重の妻が快楽に身を捩る扇情的な姿に煽られ、腰の奥から湧き上がる熱に下半身を硬くさせてしまう。

本来ならばこのまま繋がり激しく交わるところだが、あいにく桜は臨月間近の妊婦。

あまり果てさせても体には良くない。


「……凄い濡れてる…」


そっと触れた秘裂は既に潤っており、這わせた指を難なく飲み込んでしまうほどの状態だった。


「ぁ…だめっ…」

「大丈夫…優しくゆっくりするから」


まるで処女を相手にするかのように宥め、蜜壷の中を指先で浅く抜き差ししながら様子を見る。

『ダメ』と言いながらも、優しすぎる指の動きを責めるように腰が揺らいだ。


「やらしい…」

「っちが…ぁっ…」


否定は受け付けないとばかりに乳首へ吸い付き、空いている片方の手で揉みながら舌先で転がすように先端を舐めれば乳汁が滲んでくる。

3人の子供にたらふく母乳を与えてきたから、今度もそうなるであろう予感に口元は綻んだ。


「……ん…っ…」


乳首を甘噛みされたせいで喘ぎそうになった口を手の甲で塞ぎ、そうなる原因を作った夫をジロリと睨むが当の本人は何処吹く風で微笑むだけ。


「ちょっと待ってね」


チュッと触れるだけのキスをして伸ばされた手が掴んだのは避妊具。

普段は使用しない物だが妊娠中は子宮を刺激しない為に用いている。


「そんなに見つめられると緊張するな」

「…嘘つき……」

「嘘じゃないよ。桜とのセックスはいつだってドキドキするんだから」


手早く着けると優しく覆い被さり、口付けながら濡れそぼる場所へと宛がった。

その際に桜が腰を浮かせたので支え、ゆっくりと慎重に中へと腰を進めていく。


「……あったかい…」

「ふっ…ん……っ…」


勢い余って奥を突かないように気を付けながら、緩慢な動きで得る快感は思いのほか強い。


「あ~…ヤバい……気持ちいい…っ…」

「っ…私も……好き……」


浅い所から中腹までを擦るように滑らせれば、隘路は悦びに満ちながらも奥へと誘うようにうねうねと纏わりついてくる。

そのままうっかり奥を突かぬよう耐えていると、今度は腹の底から込み上げるものに堪えなくてはならなくなって動きを止めた。


「ぁん……っ……」

「………………出そう」

「…いいよ……出して…」

「うぅぅぅ…早い……男の沽券が…でも気持ち良すぎる……っ…我慢出来ないっ……!!」


あまり強い刺激は良くないと緩やかな営みだが、既に桜は何度も小さく達しており、もう透がいつ吐精しても問題ないほどに満足している。

だから『男の沽券が』と悶えて耐えているところを軽く締め付ければ、『我慢出来ないっ』と言いギュッと桜を抱き締め腰を振り始めた。

それでも奥は決して攻めようとはせず、労りのあるセックスに桜の心は透への愛情で満ち溢れ…


「っ……ぁぁぁっ、出るっ、イク……っ!!」


薄い壁を破るかのような勢いで放たれた熱い飛沫と脈動に、強い執着と独占欲を感じた。


「あぁ……気持ち良すぎる…ダメ……」


そして普段なら1度で済まない営みも、妊娠中は必ず1度で終わらせる。


「…………朝もしていい?」


まだ硬いままでいる夫の可愛いおねだりに、桜は「いいよ」と優しく返した。








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