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初夜に放置された妻
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《妻視点》
「すまない」
結婚した当日…初夜という夫婦としての大切な時間を過ごしている最中、夫は職場から呼び出しを受け行ってしまった。
髪を優しく撫で、名残惜しげにわたしへ口付けをして部屋を出る夫を見送り…たかったのだが、
「…………す…すごかった………」
私は指一本動かせずに寝台に沈んでいた。
「初夜ってみんなこんななの…?凄かった…騎士の体力舐めてた…先輩達のアドバイス…何ひとつ間違ってなかった……」
夫には悪いけれど、これ以上は体力がもたなかったし助かった…きっと途中で気絶したはず。
そんなの勿体ない。
「マリエル様、入ります」
気遣わしげなノックの後、侍女のサラがタオルや飲み物をワゴンに乗せて入ってきた。
「サラ…わたし、なんだかとんでもない経験をした様な気がするわ…世の殿方は、みんなああやって奥様を愛しているの…?」
温かく蒸されたタオルで弛緩する体を拭いてくれるサラに聞けば、優しい笑みを浮かべ…
「そうですね…人それぞれだとは思いますが、愛情の深さによって違うのではないでしょうか。特にハワード様がマリエル様に向ける想いは、わたくしから見ても大きく深いと思われます」
「そう…それなら受け止められるように頑張らなくちゃ。物足りないからって浮気されたくないもの…そういう人もいるんでしょ?」
先日のお茶会でも、旦那様との閨を拒否していたご夫人が『愛人を作られた』と泣いていた。
本人いわく『夫の愛を確かめたかった』と言うことらしいけれど、愛情の確認をする為に冷たくあしらうなんて…ちょっと酷いと思う。
「ハワード様が他の女性に見向きなさる事は有り得ない…とは断言できますが、そういった男性も少なからずおりますね」
「やっぱり…いやよ、ハワードを他の女に取られるなんて。わたしの旦那様なのに」
「大丈夫ですよ。先程のご様子からしても、後ろ髪を引かれるどころか、こちらに後ろ髪を残していらっしゃるようでしたし」
「長いものね、ハワードの髪」
ふたりでクスクス笑いながら、ツラい体を起こしてもらい寝巻きを着て果実水を飲む。
「……はぁ、生き返る」
「少し髪を梳かしますね。このままだと美しいマリエル様の髪が痛みますので」
「ありがとう、サラ」
言われて確認すると、腰まであるくせ毛がぐちゃぐちゃになってしまっている。
「やだなぁ、この髪。タニア様のようなサラサラストレートが羨ましい…ピンクブロンドだし」
「妃殿下の御髪は珍しいお色味ですよね。ですがわたくしは、不敬ながらマリエル様の御髪の方が好きです」
「……本当?くすんだ金髪なのに?」
「ハワード様もよく仰っておりますが、甘い蜂蜜を思わせるような優しいお色味で、綿菓子のようにふわふわと柔らかい巻き毛…とても素敵ですし美しいです」
「そうかなぁ…」
指先でくるくると髪を弄ってみる。いつもハワードがそうするように。
「ハワード様は早ければ明日の夕刻にお戻りになるそうです。今夜はごゆっくりお休みください」
「そうするわ…疲れたからよく眠れそうだし」
「おやすみなさいませ、マリエル様」
「おやすみ、サラ」
旦那様は今頃どうしてるかな…と思いつつ、疲れきった体を横たわらせて目を閉じた瞬間、意識を失うように眠りについてしまった。
✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼
《夫視点》
「…すまない、ハワード」
「いえ、お気になさらず」
「………怒ってる?」
「いえ、お気になさらず」
隣で俺の主である王太子殿下が打ちひしがれているが、これと言って気の利いた事も言うつもりはないし顔も見ない。
「……悪かったよ………結婚した日の夜…しかも初夜の最中に呼び出したりして…」
「いえ、お気になさらず」
そう…俺は今日結婚したばかりであり、つい先程まで妻となった最愛の女性と幸せな時間を過ごしていたのだ。
“妻”…その言葉につい顔がにやけそうになる。
幼い頃から長く想いを寄せ続け、鈍感で色恋に疎い彼女を口説いて口説いて口説きまくって、漸く手に入れた最愛の人。
そんな妻…愛するマリィをとろっとろに蕩けさせて、グズグズのぐちゃぐちゃにして愛し合っていたのに…それなのに……
「ハワード……」
「本当にお気になさらず。妻との初夜はひとまず堪能致しましたので」
「たんの…っ、いや、そうだな…悪かった。あとで必ずまとめた休みを約束する」
「もう充分に拗ねさせてもらいました…それより、目の前の汚物は如何致しましょう?」
「……あぁ、そうだな。それにしてもあの腫れ具合…明日には痣が凄そう…お前、手加減なしでやっただろ…うへぇ…絶対痛い」
目の前に転がる男は拘束衣と猿轡を着用し、顔はボコボコに腫れて口からは流血中。
腫れと流血は俺のせいだが、マリィとのめくるめく時間を邪魔した原因の張本人だから、ついやり過ぎた。
一応はまだ隣国の第二王子なのに。
「妃殿下を急襲するなど容赦出来ません。しかも俺の結婚式…初夜の最中に」
「…絶対、後半の方が本音だよな?いやしかし、お前が確実に不在だと分かった上での狼藉だ。まさか隣国から迎えた商人の団体に変装して紛れ込んでるとは思わんさ。第一王子はまともなのに、どうしてコイツはこうなんだ?」
「端的に言えば、第一王子の母君は側妃でコイツの母君はあの王妃…だからでしょうね。教養のない両親に甘やかされた結果です」
「今回はさすがにもう無理だろうな」
「恐らく。妃殿下を直接的に狙った…その事を帝国が黙って見過すはずがありません」
「元婚約者…しかも自分から破棄しておいて、どの面下げて来るんだか」
「血筋でしょうね」
「血筋だなぁ」
隣国のひとつであるジャハル国の王家には、恥ずべき忌まわしい過去がある。
始まりは今の国王がまだ王太子だった頃…婚儀を数日後に控えたある日、突然『真実の愛を見つけた!!』と言ってひとりの女性を連れてきたのだ。
周囲は反対したものの、父親である先代国王が擁護し強引に押し進めてしまい、その女性を正妻として迎え入れ、元々の婚約者を側妃とした。
父親が息子を溺愛し盲信していたからであるが、そんな状態でも国が潰れずに済んでいるのは王太后と側妃の手腕によるもの。
国王の母親は元娼婦あがりの愛妾であり、その愛妾を溺愛する先代国王は正妃に毒を盛って子の出来ない体にし、愛妾との間にだけ子を成した。
仕事は正妃に丸投げ。欲にまみれた生活を送ったふたりはボコボコと子を作り、その数は実に総勢十二人。
その中でも愛妾の容姿を色濃く受け継いだ息子が特にお気に入りで、六男で大した能力もない男が国王へと成り上がったのである。
アホくさ。
「まぁ、漸く第一王子の地盤が磐石なものになったと言うし…よくて幽閉、最悪は極刑だろうな」
「あぁ…国王夫妻による、側妃様と第一王子殿下への暗殺未遂の証拠があがったんですよね」
「側妃の実家である侯爵家には帝国との繋がりも出来たし、もうへたに揉み消すことは出来ない」
「側妃様の姪御様が皇太子殿下に嫁がれたんでしたね。それはもう大層な仲睦まじさだとか」
大陸一の規模と権力、軍事力を誇る帝国…それも次期皇帝に嫁いだ姪がいるとなれば、側妃は勿論のこと、その息子である第一王子の地盤は固いし最強の後ろ盾となる。
聞けば皇太子妃殿下は叔母である側妃をことのほか慕っており、大好きな叔母が置かれている境遇に胸を痛めてきたらしい。
そしてそんな妻の心情を心配する次期皇帝…結末は火を見るより明らか。
俺だって、マリィが胸を痛めていたら原因を排除しようと全力で動く……と言うか、今頃何をしているだろう。もう寝たか?寝ているだろうな。
気持ちが溢れすぎて少々やり過ぎてしまったとは自覚しているが、待ちに待っていたのだから仕方のないこと。
それに『ハワード…』と頬を染めて涙を流しながら縋りつかれたら、理性も効かなくなる。
「……おい、にやけてるぞ」
「すみません、なにぶん新婚なもので」
「それは分かる。タニアとの初夜も、それはもう素晴らしいものだった」
「あんなに細くて小さくて…壊れてしまうんじゃないかと心配でした」
「お前…体格差と体力差を考えろよ?いくら愛していても加減というものがある」
確かに…だが無理だ。可愛すぎる。収まらない。
「とは言え分からんでもない。タニアは明るく優しい女だ。それでいて甘え上手なもんだから、庇護欲を擽られてついつい攻めすぎてしまう」
「んんんんんんっ!!」
殿下がタニア妃殿下との営みを話題にあげたせいで、猿轡王子が何やら抗議してくるが知ったことではない。
妃殿下の容姿は国を問わず令嬢からの人気や憧れも高い女性であり、尚且つ…血統書付きのバカの婚約者として高い教養も身につけていた。
それをこの猿轡王子は『ピンクブロンドは王子を誑かす悪女だ!!魅了の魔術でも使ったのか!?』と罵り、一方的に婚約破棄を宣言したのだ…恋愛小説の見過ぎである。
「能力も取り柄のひとつも無いアホ王子だが、タニアを手放してくれた事には感謝してやるぞ」
「ピンクブロンドは悪女などアホの極み。この大陸でその髪色を持つのは“帝国の男系”に継がれる血筋のみ。しかも王女が長く続いた事で稀少な存在でもある。平民の子供でも知っているのに何を学んできたんだ?バカなのか?」
「バカなんだろうよ。漸くことの真相に気付いたようだが、返すわけがない」
「ご懐妊されてますしね」
「っっっっ!!!!????」
猿轡王子が驚愕を表情に表した。
「おい、国家機密を軽く言うなよ。来週には公表するから別にいいけど」
「このアホは二度と喋れないでしょうしねぇ…ご愁傷さま」
怒り狂っているであろう強面の皇帝を脳裏に浮かべ、殿下とふたりで合掌した。
「すまない」
結婚した当日…初夜という夫婦としての大切な時間を過ごしている最中、夫は職場から呼び出しを受け行ってしまった。
髪を優しく撫で、名残惜しげにわたしへ口付けをして部屋を出る夫を見送り…たかったのだが、
「…………す…すごかった………」
私は指一本動かせずに寝台に沈んでいた。
「初夜ってみんなこんななの…?凄かった…騎士の体力舐めてた…先輩達のアドバイス…何ひとつ間違ってなかった……」
夫には悪いけれど、これ以上は体力がもたなかったし助かった…きっと途中で気絶したはず。
そんなの勿体ない。
「マリエル様、入ります」
気遣わしげなノックの後、侍女のサラがタオルや飲み物をワゴンに乗せて入ってきた。
「サラ…わたし、なんだかとんでもない経験をした様な気がするわ…世の殿方は、みんなああやって奥様を愛しているの…?」
温かく蒸されたタオルで弛緩する体を拭いてくれるサラに聞けば、優しい笑みを浮かべ…
「そうですね…人それぞれだとは思いますが、愛情の深さによって違うのではないでしょうか。特にハワード様がマリエル様に向ける想いは、わたくしから見ても大きく深いと思われます」
「そう…それなら受け止められるように頑張らなくちゃ。物足りないからって浮気されたくないもの…そういう人もいるんでしょ?」
先日のお茶会でも、旦那様との閨を拒否していたご夫人が『愛人を作られた』と泣いていた。
本人いわく『夫の愛を確かめたかった』と言うことらしいけれど、愛情の確認をする為に冷たくあしらうなんて…ちょっと酷いと思う。
「ハワード様が他の女性に見向きなさる事は有り得ない…とは断言できますが、そういった男性も少なからずおりますね」
「やっぱり…いやよ、ハワードを他の女に取られるなんて。わたしの旦那様なのに」
「大丈夫ですよ。先程のご様子からしても、後ろ髪を引かれるどころか、こちらに後ろ髪を残していらっしゃるようでしたし」
「長いものね、ハワードの髪」
ふたりでクスクス笑いながら、ツラい体を起こしてもらい寝巻きを着て果実水を飲む。
「……はぁ、生き返る」
「少し髪を梳かしますね。このままだと美しいマリエル様の髪が痛みますので」
「ありがとう、サラ」
言われて確認すると、腰まであるくせ毛がぐちゃぐちゃになってしまっている。
「やだなぁ、この髪。タニア様のようなサラサラストレートが羨ましい…ピンクブロンドだし」
「妃殿下の御髪は珍しいお色味ですよね。ですがわたくしは、不敬ながらマリエル様の御髪の方が好きです」
「……本当?くすんだ金髪なのに?」
「ハワード様もよく仰っておりますが、甘い蜂蜜を思わせるような優しいお色味で、綿菓子のようにふわふわと柔らかい巻き毛…とても素敵ですし美しいです」
「そうかなぁ…」
指先でくるくると髪を弄ってみる。いつもハワードがそうするように。
「ハワード様は早ければ明日の夕刻にお戻りになるそうです。今夜はごゆっくりお休みください」
「そうするわ…疲れたからよく眠れそうだし」
「おやすみなさいませ、マリエル様」
「おやすみ、サラ」
旦那様は今頃どうしてるかな…と思いつつ、疲れきった体を横たわらせて目を閉じた瞬間、意識を失うように眠りについてしまった。
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《夫視点》
「…すまない、ハワード」
「いえ、お気になさらず」
「………怒ってる?」
「いえ、お気になさらず」
隣で俺の主である王太子殿下が打ちひしがれているが、これと言って気の利いた事も言うつもりはないし顔も見ない。
「……悪かったよ………結婚した日の夜…しかも初夜の最中に呼び出したりして…」
「いえ、お気になさらず」
そう…俺は今日結婚したばかりであり、つい先程まで妻となった最愛の女性と幸せな時間を過ごしていたのだ。
“妻”…その言葉につい顔がにやけそうになる。
幼い頃から長く想いを寄せ続け、鈍感で色恋に疎い彼女を口説いて口説いて口説きまくって、漸く手に入れた最愛の人。
そんな妻…愛するマリィをとろっとろに蕩けさせて、グズグズのぐちゃぐちゃにして愛し合っていたのに…それなのに……
「ハワード……」
「本当にお気になさらず。妻との初夜はひとまず堪能致しましたので」
「たんの…っ、いや、そうだな…悪かった。あとで必ずまとめた休みを約束する」
「もう充分に拗ねさせてもらいました…それより、目の前の汚物は如何致しましょう?」
「……あぁ、そうだな。それにしてもあの腫れ具合…明日には痣が凄そう…お前、手加減なしでやっただろ…うへぇ…絶対痛い」
目の前に転がる男は拘束衣と猿轡を着用し、顔はボコボコに腫れて口からは流血中。
腫れと流血は俺のせいだが、マリィとのめくるめく時間を邪魔した原因の張本人だから、ついやり過ぎた。
一応はまだ隣国の第二王子なのに。
「妃殿下を急襲するなど容赦出来ません。しかも俺の結婚式…初夜の最中に」
「…絶対、後半の方が本音だよな?いやしかし、お前が確実に不在だと分かった上での狼藉だ。まさか隣国から迎えた商人の団体に変装して紛れ込んでるとは思わんさ。第一王子はまともなのに、どうしてコイツはこうなんだ?」
「端的に言えば、第一王子の母君は側妃でコイツの母君はあの王妃…だからでしょうね。教養のない両親に甘やかされた結果です」
「今回はさすがにもう無理だろうな」
「恐らく。妃殿下を直接的に狙った…その事を帝国が黙って見過すはずがありません」
「元婚約者…しかも自分から破棄しておいて、どの面下げて来るんだか」
「血筋でしょうね」
「血筋だなぁ」
隣国のひとつであるジャハル国の王家には、恥ずべき忌まわしい過去がある。
始まりは今の国王がまだ王太子だった頃…婚儀を数日後に控えたある日、突然『真実の愛を見つけた!!』と言ってひとりの女性を連れてきたのだ。
周囲は反対したものの、父親である先代国王が擁護し強引に押し進めてしまい、その女性を正妻として迎え入れ、元々の婚約者を側妃とした。
父親が息子を溺愛し盲信していたからであるが、そんな状態でも国が潰れずに済んでいるのは王太后と側妃の手腕によるもの。
国王の母親は元娼婦あがりの愛妾であり、その愛妾を溺愛する先代国王は正妃に毒を盛って子の出来ない体にし、愛妾との間にだけ子を成した。
仕事は正妃に丸投げ。欲にまみれた生活を送ったふたりはボコボコと子を作り、その数は実に総勢十二人。
その中でも愛妾の容姿を色濃く受け継いだ息子が特にお気に入りで、六男で大した能力もない男が国王へと成り上がったのである。
アホくさ。
「まぁ、漸く第一王子の地盤が磐石なものになったと言うし…よくて幽閉、最悪は極刑だろうな」
「あぁ…国王夫妻による、側妃様と第一王子殿下への暗殺未遂の証拠があがったんですよね」
「側妃の実家である侯爵家には帝国との繋がりも出来たし、もうへたに揉み消すことは出来ない」
「側妃様の姪御様が皇太子殿下に嫁がれたんでしたね。それはもう大層な仲睦まじさだとか」
大陸一の規模と権力、軍事力を誇る帝国…それも次期皇帝に嫁いだ姪がいるとなれば、側妃は勿論のこと、その息子である第一王子の地盤は固いし最強の後ろ盾となる。
聞けば皇太子妃殿下は叔母である側妃をことのほか慕っており、大好きな叔母が置かれている境遇に胸を痛めてきたらしい。
そしてそんな妻の心情を心配する次期皇帝…結末は火を見るより明らか。
俺だって、マリィが胸を痛めていたら原因を排除しようと全力で動く……と言うか、今頃何をしているだろう。もう寝たか?寝ているだろうな。
気持ちが溢れすぎて少々やり過ぎてしまったとは自覚しているが、待ちに待っていたのだから仕方のないこと。
それに『ハワード…』と頬を染めて涙を流しながら縋りつかれたら、理性も効かなくなる。
「……おい、にやけてるぞ」
「すみません、なにぶん新婚なもので」
「それは分かる。タニアとの初夜も、それはもう素晴らしいものだった」
「あんなに細くて小さくて…壊れてしまうんじゃないかと心配でした」
「お前…体格差と体力差を考えろよ?いくら愛していても加減というものがある」
確かに…だが無理だ。可愛すぎる。収まらない。
「とは言え分からんでもない。タニアは明るく優しい女だ。それでいて甘え上手なもんだから、庇護欲を擽られてついつい攻めすぎてしまう」
「んんんんんんっ!!」
殿下がタニア妃殿下との営みを話題にあげたせいで、猿轡王子が何やら抗議してくるが知ったことではない。
妃殿下の容姿は国を問わず令嬢からの人気や憧れも高い女性であり、尚且つ…血統書付きのバカの婚約者として高い教養も身につけていた。
それをこの猿轡王子は『ピンクブロンドは王子を誑かす悪女だ!!魅了の魔術でも使ったのか!?』と罵り、一方的に婚約破棄を宣言したのだ…恋愛小説の見過ぎである。
「能力も取り柄のひとつも無いアホ王子だが、タニアを手放してくれた事には感謝してやるぞ」
「ピンクブロンドは悪女などアホの極み。この大陸でその髪色を持つのは“帝国の男系”に継がれる血筋のみ。しかも王女が長く続いた事で稀少な存在でもある。平民の子供でも知っているのに何を学んできたんだ?バカなのか?」
「バカなんだろうよ。漸くことの真相に気付いたようだが、返すわけがない」
「ご懐妊されてますしね」
「っっっっ!!!!????」
猿轡王子が驚愕を表情に表した。
「おい、国家機密を軽く言うなよ。来週には公表するから別にいいけど」
「このアホは二度と喋れないでしょうしねぇ…ご愁傷さま」
怒り狂っているであろう強面の皇帝を脳裏に浮かべ、殿下とふたりで合掌した。
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