22 / 26
♡afterstory♡一線を超える不安
しおりを挟む初めて“大人の口付け”をしてからというもの、ちょこちょことメリルが姿を消すようになり、その隙をついてエメットは深い口付けをするようになった。
呼吸の仕方にもなんとか慣れ、最近では舌を吸われ唾液まで飲まれることも許容している。
「ん……あ、そういえば、」
ふと思い出したことを言おうとしたエメットの口はアンジェリカによって塞がれ、その先を続けることが出来ない。
だが不満など一切なく、縋るように甘えてくる婚約者の体を優しく抱き締めた。
エメットの膝の上に横抱きされているアンジェリカは、離れるものかと言わんばかりに首に腕を回している。
「ねぇアンジェ…ん…相談があるんだけど」
どうやら箍が外れたのはアンジェリカの方で、紙一枚分だけ開けられた部屋の中で過ごしている時は、密着する事を好み離れようとしない。
それでも一歩外に出れば背筋を伸ばし凛としてみせるものだから、その切り替えの良さと速さにエメットは感心していた。
「なぁに…?」
夢中で口付けを交わすアンジェリカを宥めつつ、赤く染まった耳元へと唇を寄せる。
珍しくもない体の一部でさえ愛おしく、ついつい悪戯したくなって舌先を這わせてしまった。
「やんっ……」
最近ではこうした触れ合いも増え、僅かに抵抗するものの結局は受け入れてしまうアンジェリカ。
この日エメットは、少し先に進みたいと思う気持ちを正直に告げようとしていた…のだが、羞恥と刺激に身を捩る姿に煩悩が勝り、何も言わずに耳元に寄せた唇をそのまま首筋へと移した。
「あっ……エメット……っ…」
痕が付かない程度に啄み、小刻みに場所を変えて口付けを落とし…徐々にその位置を下げていく。
チラリと様子を窺えばカチリと目が合い…綺麗な瞳が戸惑いと期待で揺れているのを確認すると、口付けながら細い太腿をさわっと撫でた。
「……っ……」
薄い部屋着では剣ダコさえも捉えてしまい、アンジェリカはもぞりと太腿を擦り合わせる。
この状況に興奮しているのはエメットも同じで、アンジェリカの臀部が乗る太腿の付け根では、窮屈なトラウザーズの中で象徴が屹立していた。
「アンジェ……愛してる…」
だが、厚い革に覆われたそれにアンジェリカが気付くはずもなく、一方的に高まる火照りをどうにか逃がそうとして無意識に仰け反った。
それを好機と捉えたエメットは更に口付けの場所を下に移し、ふんわりと膨らむ柔肌を啄む。
柔らかいシフォンで可憐な装いの部屋着だが、その胸元は不自然に大きく開けられている。
まるで初夜に纏う夜着のように。
『新しい部屋着をご用意致しました』
そう言っていたメリルを思い出して、エメットは心中で親指を立てて誉めそやす。
仰け反ったことで乱れ、今にも全てを晒け出しそうになっているアンジェリカの頂き近い胸元に、ドレスなら隠れるだろうと赤い花を散らした。
「んっ……!!」
必死で声を抑えている様子に頬は緩み、啄む口元は弧を描いてしまう。
小さく震える体を背中に回した手で支えながら、もう片方の手で防波堤となっている“突起”に引っかかる布地をずらしてソレを外気に晒した。
「や、ダメっ……!!」
制止しようとするアンジェリカを無視して固くなっている突起を口に含み、しっかりと咥えて舌先で転がしたり舐めたりを繰り返す。
それだけでも羞恥に弱いアンジェリカは呆気なく達してしまい、「いや…っ…ダメ…」と言いながらも引き剥がそうとはせず、いつの間にか割り入っている太腿を這う手にも気が回らない。
ここまでは、幾度となく繰り返した行為。
エメットはこの先にある、アンジェリカの蜜壷に如何にして直接触れるか思考を巡らせた。
*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜
いつもより執拗に頂きを刺激され、達しすぎて脱力していく体をエメットに預けていると、太腿に這わされていた手が奥へと伸びた。
弛緩しかけているが故に油断していたところを狙われ、その手は難なく目的地へと辿り着く。
「っ、ダメよ、エメット…んっ…」
抗議する声は塞がれた口に飲み込まれ、絡まる舌に応えているとビクリと体が跳ねた。
下着越しにあらぬ所へ触れられたのだ。
流石に抵抗しようと藻掻くが敵うわけもなく、ならばと太腿を閉じればまるで手を逃さないとしているようで、一体どうしたらいいのかと混乱する頭で必死に考える。
そうこうしている間もエメットの大きな手は撫でるように這い、太い指を食い込ませるように一本の筋をなぞっている。
『嫌だと思ったら引っぱたいていいから』
初めて“大人の口付け”をした時のように、エメットは何かにつけてそう言っていた。
引っぱたいてやめさせる?
そう考えて決して嫌なわけではないと思い直す。
では何故抵抗してしまうのか…それは一重に貞操観念の強さゆえ。
ここまでしておいて今さら…と言われればそれまでだが、アンジェリカにとって“最後の一線”は秘めた場所への直接的な接触。
たとえ相手が愛する婚約者であろうと、そこに触れた瞬間に高潔さが失われるようで怖い。
流れに身を任せた結果、ふしだらな女だとエメットに嫌われるのではないかと想像して…
「アンジェリカ……」
熱い吐息と共に名前が零されたと同時に、アンジェリカは眦から一筋の涙を流した。
12
お気に入りに追加
1,936
あなたにおすすめの小説
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね
江崎美彩
恋愛
王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。
幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。
「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」
ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう……
〜登場人物〜
ミンディ・ハーミング
元気が取り柄の伯爵令嬢。
幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。
ブライアン・ケイリー
ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。
天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。
ベリンダ・ケイリー
ブライアンの年子の妹。
ミンディとブライアンの良き理解者。
王太子殿下
婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。
『小説家になろう』にも投稿しています
【完結】返してください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと我慢をしてきた。
私が愛されていない事は感じていた。
だけど、信じたくなかった。
いつかは私を見てくれると思っていた。
妹は私から全てを奪って行った。
なにもかも、、、、信じていたあの人まで、、、
母から信じられない事実を告げられ、遂に私は家から追い出された。
もういい。
もう諦めた。
貴方達は私の家族じゃない。
私が相応しくないとしても、大事な物を取り返したい。
だから、、、、
私に全てを、、、
返してください。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
すべてフィクションです。読んでくだり感謝いたします。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる