【完結】国王陛下の加護

Ringo

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王女と愛妾 ※アルベルト視点

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「は?側妃に?本人の希望?」

「はい、書簡にはそのように記されております」

「いや……それだけはない」


加護の血を求めらるのであれば幾らでもくれてやるが…俺の妃を名乗ることが出来るのはシルビアだけだ。


「まぁ、側妃の役割がこなせるとは思えませんしね…他の愛妾と同じく、もって半年でしょう」

「……確かに」


ただ子を成せばいいだけの愛妾と違って公務や執務に深く携わる権利を持つ側妃には、それに見合うだけの才覚を必要とされる。

加えて言語能力。

嘗ての小国達は似ているようで微妙に異なる言葉を使用しており、今では方言と名を変え地方特有の言語と認識を改めているが、交渉事にはやはり地元の言葉を流暢に扱える方が物を言う。

その点でシルビアは完璧であり、微妙に異なるものから大きく異なるものまで、全てを網羅しており公務に欠かせない存在だ。

その補佐として、時には代理として立つのが側妃なのだから、独裁国家で知られていた元ハインツ王国の王女だった女…フィオーナ嬢にその役目が担えるなど思えない。


「彼の国の側妃は愛妾や愛人と言っても過言ではないですからね」

「あ~…そう言えばそうだったな」


武力だけは長けていた元ハインツ王国の王は、常に派手な女を侍らせていることでも有名だった。いつだったか側妃として紹介されたことのある女を思い浮かべれば、対して難しくもない政治の話にさえついてこれず、ただ王の腕に絡みついてニコニコしていただけ。


「……本気で逃げたい」

「約束を破ったから?」

「ぐっ…、それは…そうだが……うまく言ってくれたんだろ?」

「言ったけど…分かりやすく落ち込んではいた」


夜の伽を済ませたら帰ると約束をした矢先に迎えた愛妾との伽で理性を飛ばすまで耽り、カラカラになるまでヤり尽くした時には翌日の夜になっていた。さすがに落ち着いていて慌てて戻ったが、それからどことなくよそよそしくて…寂しい。


「そうだよな」


あれからきちんと帰ってはいるが、そうなると目覚めて求めてしまうのはシルビアで…応じてはくれるけれど、どこか悲しそうで。ツラい。

かと言って愛してるから頑張るけども。


「…そこにきてのフィオーナ嬢か」

「さっさと孕ませて帰すんだな」

「あちらさんもそれでいいと言ってるし、それで問題はないだろう。……なんか俺、種馬の気持ちが分かりすぎる」

「諦めろ」

「ぐうぅぅぅぅぅ」


せめて結婚前…婚約前に二つ目の加護が顕現していれば、シルビアだって…いや、そもそも頷いてくれなかったかもしれない。


「……愛妾を迎えるようになってから顕現するなんて、呪われてんのかな」


わりと本気で言った呟きには返事がなく、代わりに好みの熱いお茶が差し出された。




* * * * * *




「んんっ……甘いですわ」

「女性が飲みやすいように作られている」


満を持してやって来たフィオーナ嬢と迎えた伽の初日。他の愛妾と同じ伽部屋など嫌だと騒いだせいで時間が押し、さっさと済ませてシルビアの元に帰りたい俺は仕方なく私室へと赴いた。

いつものように特製の媚薬を飲ませれば、あっという間に体に熱を帯び始めた我儘王女。

少しばかり雑になるが手早く解し、すっかり溶けきったところで先端を宛てて一気に貫いた。


「いやぁっ…!」

「…っ、きっつ……」


いけすかない女でも、初物を味わうことに体と昂りは悦びを示してくる。

特に気を使わずに律動を始めても、薬のお陰か一切の苦痛を見せない事に少し安堵した。

愚王として名を残すことになった元ハインツ王国の国王は息子に首を取られ、その息子は新しくハインツ領と名を変えたその領地の主となり、武力だけに頼ってきた過去と決別して元国民、現領民を守ろうと奔走している。

その一つが王女の召し上げ。

無事に身籠り子を生めば、その子を引き取り受け継ぐはずの豊穣の加護で荒れた地の再生を図りたいと嘆願してきた。

事が済めば、返すも残すも自由にして構わないとの文言付きで。


「あぁっ、陛下…っ…好きっ!」


ただ粘膜を擦り合わせているだけなのに、どうしてこうもすぐに慕っていると口にするのか理解に苦しむ。

まして碌に顔を合わせたこともないのに。

側妃を望むくらいだから、その地位が目当てなのだろうと分かってはいるが…つまらない。

ただ単調に欲を発散するべく腰を振り、それなりの快感を得ながらも思い出すのは愛するシルビアで、暫く見れていない嘗ての可愛らしく恥じらう姿が恋しい。

誰と閨を共にしてもシルビアとの営みを勝るものはなく、快楽は得られても幸福感は得られず、だからこそ燻る疼きを収める為、都合のいい女を繰り返し抱いてしまう。

シルビアに会いたい…シルビアを抱きたい…そう思ったせいか、つまらない我儘王女の中に埋める滾りは質量を増し、それに気付いたらしい王女は嬉しそうに破顔した。


「愛…っ、してますわ…あっ、あぁんっ…!」

「俺は愛してなどいない…っ…」



いつもなら限界まで耐えてから放出するところだが、加護をもってさえも萎えそうな気分にさっさと放つことにして打ち付ける。


「あっ、あぁっ!好きぃ……っ…!」

「…………っ、さっさと孕め」


明らかに不完全燃焼の滾りを引き抜き、既に気をやっている王女を残して部屋を出た。


「くそっ…」


さすがにもて余しすぎの欲を持ち帰るわけにもいかず、どうしたものかと思案しながら後宮の回廊を歩いていると見えた女の姿に、体は煮えたぎるように熱を持ち始める。


「……付き合え」


壁に寄って礼をする女の手をとり、足早に向かうのはいつもの伽部屋。

途中、幾人かの使用人が驚いたような顔をしていたが構う余裕などない。


「二時間後にジルベルクを呼べ」


護衛にそれだけを告げて伽部屋へと女を連れて入り、扉を閉めると同時に口を塞いで乱雑に衣服を破り捨てていく。

我ながら鬼畜だと思うが止められない。


「んっ!」


時間的に私室で寛いでいたであろう夜着はあっさりと取り払われ、まだ潤いの足りないそこへ強引に押し入った。


「あぁっ!!」

「くっ…」


僅かな痛みを伴う抵抗を感じたのは最初だけで、慣れ親しんだものの侵入にすぐに体は応え始め、すぐに淫靡な音が奏でられる。

二年の付き合いがあるが、こうして繋がったことは一度もない。

どこまでも受け止めてくれる安心感を持っているせいか、姿を見た瞬間沸き上がって膨れた欲に抗えなかった。

本当ならシルビアと繋がりたい。

けれど、膨れきった欲を乱暴にぶつけてしまうのが怖くて向き合えず…そうなると求めるのは……


「……シャロン…ッ……」


激しく穿ちながら思わず名前を吐いた瞬間、それまでの意図的なものとは違う締め付けに襲われ、我慢出来ない、する気もない精が迸る。


「…っ、シャロン…ッ……シャルッ……ッ!!」


一度吐き出したところで収まることなどなく、繋がったまま抱き上げそのまま寝台へと向かう。

その間も名前を呼ぶたびきゅうきゅうと締め付けられ、ドサッとふたりして倒れ込んで、自分の夜着も手早く脱ぎ去った。


「くっそ気持ちいい……っ…」

「あぁぁっ…!」


こうまでして求めても、女に抱くのは肉欲のみ。

シルビアに抱くような愛情は欠片もない。


「シャロン…ッ、、」

「だっ……イ…ッ……」

「名を呼べ!」

「はっ、ぁぁんっ!」

「シャル…ッ…呼べ!」

「ア…ッ、ア…ル…ッ……イ、、く……っ…!」


名を呼ばれた瞬間、これまでにないほどの解放感を伴いながら精を放ち、互いに身を震わせながら深い愉悦に浸って意識を飛ばした。



────────────────




誰かの呼ぶ声に意識が浮上し始め、微睡みから強制的に引き上げられて視界に映ったのは、見飽きている乳兄弟の顔。


「起きろ」

「…ん………」

「シルビア様が待ってるぞ」

「!!!…っ…うっ………」


シルビアの名に慌てて身を起こした瞬間にシャロンの中から愚息がズルリと抜け、自分でも引くほど大量の白濁が同時に溢れた。


「……どんだけだよ」

「不可抗力だ」

「あとで薬は与えておく」

「……あぁ、頼む。なぁ、やっぱり呪いか?」


呆れたような顔をする乳兄弟に急かされ、あとを侍女に頼んでから早足で自室へと向かう。


「お前さ…あの女のことどう思ってんの?」

「どうって…単なる性欲発散の相手としか思ってない。なんで?」

「噂になるぞ」

「は?」

「予定に組み込まれた王女との伽を早々に切り上げて、兼ねてから噂のある愛妾の手を引いて伽部屋に籠ったんだ、当たり前だろ?」


思わず眉間に皺を寄せてしまう。


「そもそも、愛妾としての期限を過ぎたら城から出すのが通例のはずだ。それを反故にしてまで引き留め、理由付けの為に管理人などの肩書きまで与えて…あまつさえ頻繁に相手をさせている」

「…それは……」

「小さな噂がやがて大きくなり、それが真実にすり替えられるなんてあっという間だ」


何も言えない。

手放せないからと後宮の管理人として留め置き、使用人でしかなくなったはずの女をそれまでと変わらずに抱き続けているのは事実だ。


「元王女で身分も釣り合う。いずれ側妃に迎えるのか、それとも王妃が変わるのか…今夜だけでそこまで広がった」

「妃はシルビアだけだ!」

「それなら向き合え!事態が悪化してからじゃ庇いきれなくなるぞ」


分かってはいたが、既に想像以上の事態になっていると腹を括り…シルビアの元へと向かって進めていた歩みは駆け足へと変わった。



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