舞台装置は闇の中

羽上帆樽

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第22章

第220話 切るか否か

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 宅配便が届いて荷物を受け取ると、差出人は真昼だった。真昼は月夜の数少ない知り合いの一人だが、いつでも彼女の前に姿を現すことができるため、わざわざ宅配便を使って荷物を届ける意味はない。今言った意味というのは、物理的なそれのことだが、そうでない意味ならいくらでも考えられる。つまり、そうすることそのものに含まれる意味、要するに、宅配便を送るという形式が表す意味だ。

 箱を開けて見ると、中からトランプが出てきた。一目見てそれがトランプだと分かる装いではなかったが、なんとなく月夜にはそうだと分かった。長方形の黒い箱がある。取り出して中を開けると、やはりトランプのカードが入っていた。カードは一般的な白いものではなく、黒を基調として、文字は種類別に赤、緑、青、白で書かれている。材質はプラスチックのようだ。

 どういうつもりだろう、と考えてみたが、どういうつもりも考えられそうだった。むしろ、つもりなどないかもしれない。その場合、ファイというつもりということになる。少々狡い手段にも思えるが、正しく使用すれば効果的な表現となる。

「トランプにファイのカードはないな」

 月夜と一緒にソファに座っていたフィルが、あまり興味のなさそうな声で言った。

「それは、トランプにおいて、ファイのカードはファイ個ある、ということ?」

「まあ、そんな感じだろう」

「ファイにファイをかけ合わせると、どうなる?」

「2ファイにになるんじゃないか?」

「どうして?」

「どうしてって、文字だからだろう」

「ファイでは?」

 暫くの間、トランプをそっちのけでこの話題で二人で議論したが、まともな結論は得られなかった。議題がまともではないからかもしれない。こういうとき、電子的な手段を用いて調べようとする人がいると、少々困る。

 とりあえず、トランプを切ってみることにする。プラスチック製で、しかも新しいこともあって、つるつると滑って切るのが大変だった。新品に特有な匂いもする。

 トランプで二人でもできるゲームとは何だろう、と月夜は考えてみたが、何も思いつかなかった。そもそもトランプをしたことがあまりない。ババ抜きか、神経衰弱くらいしか思いつかない。ババ抜きは、二人でも可能というだけで、実際にはあまり意味のないゲーム展開になる。この場合の意味というのは、原理的なそれのことだろう。
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