172 / 255
第18章
第171話 Talk with me !
しおりを挟む
窓辺に立っていたルンルンは、そのまま身を滑り込ませるように月夜の部屋に入ってきた。
「何か用事?」月夜は質問する。
「別に用事なんてないさ」ルンルンはゆらゆらと首を振り、そうしてまた顔を上げて月夜を見る。「また来るって言ったから、また来ただけ」
今はフィルがいない。彼女に何らかの攻撃をされたとき、どのようにすれば良いかと月夜は考えていた。しかし、効果的な手段が思いつかない。またルゥラに手を出すつもりだろうか。
「この部屋、全然片づいてないじゃん」周囲を見渡してルンルンは言った。「駄目だなあ。来賓があるときはお持てなしの準備をしろって、教わらなかったの?」
「貴女が荒らしたのだから、貴女が片づけるべき」
月夜の言葉を聞いて、ルンルンは可笑しそうに笑った。両手を叩く。シンバルか何かを持っているみたいだ。
「何それ、ジョーク? 面白いねえ。漫才師にでもなるのかな? あの黒猫とツインでやれば、案外受けるかもしれないよ」
ルンルンはその場にしゃがみ込み、部屋に落ちている皿の破片を拾い集める。それを両手で抱えると、瞬時に手と手の間に隙間を作った。音を立てて破片が床へと零れ落ちていく。
「暴れたのは私じゃないからね」落ちて形成された破片の山をじっと見つめながら、ルンルンが言った。「あの子が暴れたんだ。見ていただろう、お前も」
外から見ればたしかにそうそう見えた。しかし、それは彼女がルゥラに憑依していたからだ。
「ルゥラのせいではない」
月夜がそう言うと、ルンルンは目だけでこちらを見た。鋭い目つきだが、不思議と恐怖は抱かなかった。最初に会ったときよりも幾分慣れたのかもしれない。
「お前、物の怪のこと、何も知らないな」ルンルンは立ち上がって腕を組む。
「あまり知らない」月夜は素直に答えた。
「あいつらと一緒に暮らしているというのに」ルンルンはまた首を振る。そのままとれてしまいそうな勢いだった。「まあ、あの馬鹿猫が相手じゃ仕方がないな」
「フィルは馬鹿ではない」
「その発言が馬鹿だ」ルンルンが言った。「お前、何考えて生きているんだ」
質問の意味が分からなかった。第一、それが質問なのかどうかも分からない。
「どうして、ここに来たのか、説明してほしい」月夜は要求する。「ルゥラは、今下で眠っている。彼女に手を出してほしくない。話せることがあるなら、話してほしい」
「話して分かるならね」
「何か用事?」月夜は質問する。
「別に用事なんてないさ」ルンルンはゆらゆらと首を振り、そうしてまた顔を上げて月夜を見る。「また来るって言ったから、また来ただけ」
今はフィルがいない。彼女に何らかの攻撃をされたとき、どのようにすれば良いかと月夜は考えていた。しかし、効果的な手段が思いつかない。またルゥラに手を出すつもりだろうか。
「この部屋、全然片づいてないじゃん」周囲を見渡してルンルンは言った。「駄目だなあ。来賓があるときはお持てなしの準備をしろって、教わらなかったの?」
「貴女が荒らしたのだから、貴女が片づけるべき」
月夜の言葉を聞いて、ルンルンは可笑しそうに笑った。両手を叩く。シンバルか何かを持っているみたいだ。
「何それ、ジョーク? 面白いねえ。漫才師にでもなるのかな? あの黒猫とツインでやれば、案外受けるかもしれないよ」
ルンルンはその場にしゃがみ込み、部屋に落ちている皿の破片を拾い集める。それを両手で抱えると、瞬時に手と手の間に隙間を作った。音を立てて破片が床へと零れ落ちていく。
「暴れたのは私じゃないからね」落ちて形成された破片の山をじっと見つめながら、ルンルンが言った。「あの子が暴れたんだ。見ていただろう、お前も」
外から見ればたしかにそうそう見えた。しかし、それは彼女がルゥラに憑依していたからだ。
「ルゥラのせいではない」
月夜がそう言うと、ルンルンは目だけでこちらを見た。鋭い目つきだが、不思議と恐怖は抱かなかった。最初に会ったときよりも幾分慣れたのかもしれない。
「お前、物の怪のこと、何も知らないな」ルンルンは立ち上がって腕を組む。
「あまり知らない」月夜は素直に答えた。
「あいつらと一緒に暮らしているというのに」ルンルンはまた首を振る。そのままとれてしまいそうな勢いだった。「まあ、あの馬鹿猫が相手じゃ仕方がないな」
「フィルは馬鹿ではない」
「その発言が馬鹿だ」ルンルンが言った。「お前、何考えて生きているんだ」
質問の意味が分からなかった。第一、それが質問なのかどうかも分からない。
「どうして、ここに来たのか、説明してほしい」月夜は要求する。「ルゥラは、今下で眠っている。彼女に手を出してほしくない。話せることがあるなら、話してほしい」
「話して分かるならね」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる