舞台装置は闇の中

羽上帆樽

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第13章

第126話 非論理的考察

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 布団に入ると、ルゥラはすぐに眠ってしまった。月夜も布団に入ればすぐに寝られるので、その点では彼女と似ている。ただし、今日はどうしたら良いか分からない。ルゥラが布団で眠ってしまったからだ。布団に入れば、すぐに寝られるということが分かっているだけで、ほかの条件、たとえば、ソファに横になる、などでは、どうなるか分からない。

「じゃあ、眠らなければいいじゃないか」

 手摺りを伝って階段を下りながら、フィルが呟く。

「そう言うと思った」月夜は応じた。

 二人も風呂に入ることにした。大抵の場合、二人は同時に風呂に入る。それは、二人の気が合いすぎて、入ろうとする意志を抱くタイミングがたまたま一致する、ということではなく、単純に二人で入った方が効率が良いからだ。

「小夜の行動を監視しなければ」

 湯船に浸かりながらフィルが言った。彼は軽すぎて湯の上に浮かんでしまう。湯の上、というのは些か奇妙な表現だが。

「監視? どうして?」

 彼を両手で掴んで湯船の底に向かって力を加えながら、月夜は尋ねる。彼を溺れさせようとしているのではない。

「いや、別に監視ではないな。……そう、観察といったところか」

「サンタクロースとは?」月夜は質問した。「何の比喩?」

「比喩じゃないと言ったら怒るか?」

「いや、怒らないけど」

「何に頼ったかは分からない」フィルは言った。「俺が把握できるのは、小夜本人の範疇に関することだけだからな。その先までは分からない」

「小夜が、誰かに協力して、皿を片づけてもらっている、ということ?」

「そういうこと」

「片づけなくてもいいと思う」月夜は意見を述べた。「特に何の害もないと、小夜も言っていた」

「今はな」

 天井に向けていた目を、月夜はフィルに向ける。

「後々、何らかの影響が出てくる、ということ?」

「そういうこと」

 その可能性はあるだろう。未来を予想することは誰でもできるが、ありとあらゆる可能性を想定するとなると難しい。どこから影響が出てくるか分からない。範囲を制限された中で物事を考えるのは簡単だが、範囲を制限するところから始めるとなると難しいのだ。

「小夜が皿を片づけることで、別の影響が生じるかもしれない」

「それはそうだろうさ」月夜の意見を聞いて、フィルは言った。「しかし、それは前の状態に戻すということだ。未知から既知へと戻る、と考えられなくはないか?」

「未知から、未知へ向かう、の方が正しいように思える」

「うん、そうだな」

 フィルは頷いた。

 その影響で、鼻が湯に浸かって噎せていた。
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