超文読解

彼方灯火

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第1問

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次の文章を読んで、あとの問に答えなさい。


 【A】生きているとは、どういう意味だろう?

 たとえば、寿司を配達してもらったとして、それで、今晩のおかずになりえるだろうか。答えはノーである。いくら牛乳を買ってきたところで、それでミルフィーユが作れないのと同じように、海苔巻きをいくつ頬張っても、お腹が満たされることはない。それと同じだ。つまり、机の上で勉強するのも良いが、やはり、椅子に座って、しっかりと読書をしよう、という話になる。これが、目覚まし時計の原理として、ここ数年の間に、突発的に支持されるようになった例である。

 その一方で、濡れたタオルで身体を拭くのは、抗菌作用があるとしても、幸せになる可能性を低くする、といった内容の学説もある。これについては、現段階では何もいえない。要するに、情報量が少なすぎて、判断できないのである。ラップトップ上では、常に行動を監視されているが、ノートの場合はそうではない。綿密に計画を練っても、それですべての問題が解決するわけではない。自動車だってそうである。洋服箪笥に仕舞ってあるブレザーには、昔の記憶を思い出させる効果があるが、それでもまだ不足だ。梟の野鼠に関しては、今のところ、明確な結論を出すに至っていない。マウスパットを敷いても、少しずつテーブルの表面が削れていくように、コンセントや、プラグなど、電気を通すものは、劣化する傾向にある。しかし、それは、この世界に存在する如何なる物質にもいえることだから、本当は、あまり深く考える必要はない。【B】私が言いたいのは、まさにそういうことである。

 以下は、とある少年と、少女による会話だ。

「ねえ、君は、いつも楽しそうだね。どうして?」少年が質問する。

「うーん、どうしてかな……。あ、でもね、《a》ソーセージが、上手く割れたときは、最高だよ。だから、君が言っているのは、そういうことじゃないかな?」少女は説明した。「私も、けっこうそういうことってあるよ。あ、でもね、やっぱり、冷蔵庫のコンセントは、必要なとき以外は抜いておくべきだよ。え? そんなことしたら、電子レンジの出番がないって? まあ、たしかに……。君ってけっこう鋭いじゃん。見直したよ」

「見直したって……。僕は、いつも、そう言っているじゃないか」

「そうだっけ? 忘れていたよ、ごめん」

「いいよ、謝らなくても。僕は、存在が、もう誤っているから」

「あ、ところでさ、どうしたら、データ量を消費せずに動画を見られるか、知っている?」

「いや、知らないよ。草笛の作り方、なら知っているけどさ、そんな情報、今じゃ何の役にも立たないよね」

「そうそう。もう、笑っちゃいそう」

 これらの会話からも分かるように、人間の行動というものは、常に合理的かつ運命的である。こういった文句の一つ一つには、有名な画家の存在が感じられる。こういうのを、【C】、あるいは、【D】、と呼ぶことも多い。それが嫌なのであれば、毎日努力するしかない。空から美少女が落ちてくることなど、決して望んではいけないのである。もし、あなたにそういった妄想をする傾向があるなら、今すぐ私生活を見直した方が良い。学校に通っていても、電柱から鳥の糞が落ちてくる可能性を排除できない以上、そうするしかない、といっても過言ではない。もっとも、ドアのノブは回らないから、錆止めを刺す、というのも間違ってはいない。しかしながら、それ以上に、トイレから出たあとは、確実に靴下を履き直した方が良いに決まっている。天井で回転する《b》アブソーバーを観察しても、答えは出ない。それが、科学の限界というものだ。

 卵焼きを煮卵に変えることすら、今はまだできないのである。

 これでは、到底火星には辿り着けない。

 まあ、私にはあまり関係のないことだが……。

 学術論文を執筆する際には、これから、自分が何について書こうとしているのか、ということを留意しておく必要がある。そうでないと、後々困ったことになってしまう。困ると、お腹が減るから、試験会場に肉まんを持ち込むことを許可する、という文面があっても、決して騙されてはいけない。もしそんなことをしたら、課長に昇進するに決まっている。それは、しかし、とても喜ばしいことだ。香ばしくはない。涙が出ても、悲しい、とは限らない。嬉しいときにも、欠伸は出る。人間とはそういう生き物だ。けれど、音楽を聴いていると、ますます楽しい気分になってくるから、インスタントラーメンは乾いている、と認識を改めよう。その方が良い、とだけ助言しておく。私の助言は、多くの場合、如何なる役にも立たないが、しかし、だからといって、まったくの無価値だ、とはいえない。それは、無線通信をしている際に、QSLカードをデザインするのと同じだ。【E】他意はない。

 そこで、今度は、手品を披露してみようと思う。

 ここに、一枚のカードがある。

 一枚は、一枚だ。それ以上にはならない。

 と言っておきながら、種を撒く少女。

 意味が分からない、とだけ言っておこう。

 さて、ここで一端話題を変えて、もう少しこの点について深堀りしてみようと思う。

 この話題の論点とは何か?

 それは、今、立ち上がって、窓の外を見れば分かる。

 そこに私がいるだろう。

 こういった論述に関しては、未だ不透明な部分が多い。招き猫の座面に百円玉が落ちている可能性は、皆無ではない。だから、お腹が減ったら、まずミートパイを作る。話はそれからだ。そうでないと、順序がおかしいことになる。ソーサーを使ってコーヒーを掻き混ぜることができなくても、角砂糖を舐めることはできる、というのと同じように、相補的に繋がった一連の事象は、本棚の中に丁寧に仕舞われている。そこに気がつかないといけない。課題を提出する前に、まず、何が問題なのかを確かめる。ログインする前に、自分が本当に自分なのか、それを確かめる。これは、生きていくうえで重要なことだから、今、この瞬間だけでも、頭の片隅に留めておく価値がある。

 《d》ミステリー小説の難点は、見開きページに犯人の名前が書かれていることだ、と私は考える。これは、そこに書かれている人物以外、この小説には登場しません、と言っているということだから、これでは、まったくもってミステリーとは呼べない。せいぜい分割払いが関の山だろう。鋏とペンでは、工作は成しえられない。少なくとも、もう一度初心に立ち返って、一から基礎を学ぶ必要がある。何度考えても、結局は同じ矛盾を繰り返すことになるから、クローゼットは常に開けておいた方が良い。ベッドの下に猫がいるときは、なおさらそうだろう。彼らは、その黄色い瞳で、いつも貴方を監視している。見つめられたら、見つめ返さなくてはならない。そうしないと、自分だけ損をすることになる。掌を合わせる回数は、人によってまちまちだが、それが人間の優秀さを表すことはない。この点については、後述する内容に詳しく書かれている。しかし、そう言っておきながら、まったく詳しく書かれていない書物、というのも存在する。多くの場合、これは筆者の責任ではない。編集する過程で勝手に削除されているのである。本当に許しがたい行為だ。だが、許さずにはいられない。スマイルは、貴方の人生を豊かにする。そう教えられたのは、果たしていつのことだっただろう? 屋上に立って、《c》パラボラアンテナの真似をしてみたが、雷に撃たれて失神してしまった。

 レストランに入ったとしよう。そのとき、まずは禁煙席があるか確認する。次に、子ども用の椅子が用意されているか、それをチェックしたら、すかさずデザートのケーキを注文するだろう。それが良い。ポイントカードはただの板切れだから、ポイントカードは、ただの板切れである。しかし、ただの板切れはポイントカードではない。ここが重要だ。この点を間違えてしまうと、もう二度と免許は獲得できない。なお、驚くべきことだが、免許証はただの板切れではないのである。この点も、同様に注意する必要がある。注意しても何も変わらない人間は、もう、いっそのこと、注意するのをやめた方が良い。信号は常に青を示しているから、地球は青いのかもしれない、と考えることも可能だ。問題は、月は何色か、ということだ(そんなの、灰色に決まっているではないか)。

 黒板にチョークを押しつけて、ご挨拶。

 筆の先端をよく解したら、すぐに海苔を付けて乾かす。糊ではない。海苔である。そして、ノリ、でもある。ノリは大事だ。

 コンパスを使って垂直二等分線を描く方法を、覚えているだろうか? これを応用すれば、木の下にチューリップを咲かすこともできる。意外と、これは知られていない。だから、割り箸は非常にハッピーだ。基本的に、感情的になっても、論理的な判断も並行して行える。まずは、肺いっぱいに酸素を取り込もう。そうすれば、エアロビクスだって、風船を飛ばすみたいに簡単になる。缶詰めの開け方が分からないときは、説明書を読むと良い。マニュアルの通りに進めれば、必ず、良い結果に辿り着ける。先生は知らない。知っているのは生徒だけだろう。

 ここで、本項の内容を簡潔に纏める。

 すなわち、重要なのは、麒麟、黄燐、赤燐、の三つである。分かっても、手を上げる必要はない。

 斜体のコークスを溶鉱炉に入れれば、間違いなく火事になる。

「え、それって、何について語っているの?」と少年は尋ねる。

「うーん、何かなって、考えてみたんだけど、やっぱり、私の頭じゃ分からないよ」

「それは、そうだけど……。それでは、ちょいと困るんだよ。空は高いから、地球は飛べないよ」

「バイオエタノールを使えば、あるいは……」

「なんだか、ジャンルが偏っているね。どうして、そんなことになるの?」

「脳の構造に起因するんだ。見たものは、記憶される。そして、パッケージに包まれて、ロケットで発射されるんだ。素晴らしいだろう?」

「分からない」

 【F】おぅわぁりぃ。


(出典『そんなものあるか馬鹿野郎』)




問一 《a》ソーセージ、《b》アブソーバー、《c》パラボラアンテナ、の類義語を次の中からそれぞれ一つずつ選びなさい。


 《a》ソーセージ

  ①ウインナー ②フランクフルト ③アメリカンドック


 《b》アブソーバー

  ①スタビライザー ②インバーター ③アゾトバクター


 《c》パラボラアンテナ

  ①スタートライン ②ホームベース ③ゴールポスト




問二 《d》ミステリーとあるが、ミステリーに該当するものを、次の中から一つ選びなさい。


 ①未確認飛行物体の墜落

 ②片方の靴下だけなくなる怪奇現象

 ③イケメンの周囲にだけ集まる女子たち

 ④三日分の食事を一度に済ませることはできないという事実

 ⑤白い服を着ているときに限ってケチャップが撥ねる確率の高さ




問三 【A】『生きているとは、どういう意味だろう?』とあるが、これについて筆者はどのように考えているか。文章全体を踏まえて、最も相応しいものを次の中から一つ選びなさい。


 ①生きているとは、エネルギーを消費する、という意味である。

 ②生きているとは、エネルギーを消費する、という意味かもしれない。

 ③生きているとは、エネルギーを消費する、という意味だろう。

 ④生きているとは、エネルギーを消費する、という意味である可能性が高い。

 ⑤生きているとは、エネルギーを消費する、という意味でも良い。




問四 【B】『私が言いたいのは、まさにそういうことである』とあるが、『そういうこと』とは、いったいどういうことか。前後の内容を踏まえて、最も相応しいものを次の中から一つ選びなさい。


 ①タオルで身体を拭くと、気持ちが良い、ということ。

 ②ラップトップと、ノートパソコンでは、何も変わらない、ということ。

 ③自動車は素晴らしい、ということ。

 ④パソコンで作業をする際に、マウスを使う必要はない、ということ。

 ⑤いちいち深く考えるのは、馬鹿がすることだ、ということ。




問五 【C】および【D】に入るものの内、最も相応しいものを次の中から一つ選びなさい。


 ①【C】:混沌 【D】:純粋

 ②【C】:予感 【D】:気配

 ③【C】:闘争 【D】:誘致

 ④【C】:存在 【D】:交渉

 ⑤【C】:意識 【D】:反芻




問六 【E】『他意はない』とあるが、段落の最後にこのような文を付け加えることで、どのような効果が期待されると考えられるか。最も相応しいものを次の中から一つ選びなさい。


 ①『他意はない』と短い調子の文を付け加えることで、それまでの学術的な内容を一時的に弛緩させ、読者が肩の力を抜くことができる、という効果。

 ②『他意はない』と擁護するような文を付け加えることで、いまいち自信のない主張に勢いをつけ、読者を無理矢理納得させる、という効果。

 ③『他意はない』と否定を伴う語句を含んだ文を付け加えることで、段落全体にマイナスのイメージを与え、読者の知的好奇心を喪失させる、という効果。

 ④『他意はない』とラップのように微妙に韻を踏んだ文を付け加えることで、長い文章全体にリズムを持たせ、読者が飽きることなく最後まで本文を読み通すことができる、という効果。

 ⑤『他意はない』と特に意味のない文を付け加えることで、学術的な文章には必ず意味があるといった思い込みを打破し、読者が疑いの目で科学を見るようになる、という効果。




問七 【F】『おぅわぁりぃ』とあるが、これを単語に分けた場合、最も相応しいものを次の中から一つ選びなさい。


 ①おぅ-わぁりぃ

 ②おぅわぁ-りぃ

 ③おぅ-わぁ-りぃ

 ④お-ぅわ-ぁりぃ

 ⑤お-ぅわぁ-りぃ

 ⑥おぅ-わ-ぁりぃ

 ⑦おぅわ-ぁ-りぃ

 ⑧おぅ-わぁり-ぃ

 ⑨おぅわ-ぁり-ぃ




問九 文章全体を通して、筆者はどのようなことを主張しているか。最も相応しいものを次の中から一つ選びなさい。


 ①とにかく、勉強すれば良い、ということ。

 ②とりあえず、勉強すれば良い、ということ。

 ③とんでもなく、勉強すれば良い、ということ。

 ④とっとと、勉強すれば良い、ということ。

 ⑤とんちんかん、勉強すれば良い、ということ。
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