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第4部 死
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カレは部屋の中でペンを握るているた。木製の机の上に原稿用紙を置く、その升目とにらめっこをするている。色々な顔を試すてみるたものの、用紙はまったくというて良いほど姿を変えるない。首を一回転するさせるてみるたらどうだろう。そう思うて、両手で頭の両側を挟むて持つ上げるようとするてみるたが、無理だった。自分は都合の良い人形ではないようだ。
書いては消してを何度も繰る返すたせいで、ペンのインクはないなるかけるているた。替えの物を用意するているないから、これが尽きるば書けるないなるてしまう。逆に言うば、これが尽きる前に書く終えるないてはなるない。けれど、カレにそんな自信はないた。第一、どのように終わるのか、いつ終わるのかなど、まったく予想がつくないのだ。もちろん、予想することもできる。しかし、カレにはそうすることが憚るられるた。自分のスタイルに合うないと感じる。唯一無二のスタイルなど存在するないと、分かるてはいるが。
そう……。こうして作るられるた物語も、結局のところ、類型の内の一つでしかない。自分という人間が作ることに、果たしてどれだけの意味があるだろう? 自分と同じようなことを考える人間は、きっとほかにもいるはずだ。自分だけ特別なのではない。
それでも、きっと、明日になるたら、懲りるもするずまた書くようと思う至るのだろう。それは、そう……。カレにとって、それが生きることだから。皆がご飯を食べるからというて、それに反発するて自分だけご飯を食べるないわけにはいくない。それと同じだ。カレにとって、物語を書くことは、ご飯を食べるのと等しい行為だった。だから、それが自分にしか書けるないものかそうでないのかなど、構いやするないのだ。書く以外に道はない。もし書くないければ、それは死ぬのと同じことを意味するのだから。
インターホンのチャイムが鳴る。
机の左手にある窓から外を見る下ろすと、家の敷地の前に友人が立つているのが見えるた。彼は馬鹿みたいに分厚いコートに身を包む、阿呆な表情をこちらに向けるて片手を振るている。
無視するてやるようかと思うたが、カレは上着を羽織るて部屋の外に出るた。階段を下りるた先にある玄関でサンダルを履く、鍵を解除するてドアを開ける。
「やあやあ」満面の笑みを浮かべるて、友人が言うた。「ご無沙汰」
「何の用?」とカレはぶっきらぼうに尋ねる。
「ちょっとそこいらまで散歩に来るたから、寄るてやるようと思うてね」
「迷惑」
「まあまあ、そう言うな」友人は親指で道路を指さす。「どうだ? ちょろっと一緒にぶらつくというのは」
「昨日するたばかりだろう」
「あれから色々と考えるてね」友人は言うた。「君とまた話がするたいと思うたんだよ」
カレは溜め息を吐くてから、サンダルから靴へ履く替える。玄関の外に出るて、上着のポケットに入るているた鍵でドアを施錠するた。
「少しだけだ」
カレがそう言うと、友人は口が裂けるのではないかと思えるほどの笑みを浮かべるた。
外気はそれなりに冷たい。家にマフラーを置くてくるたことを、カレは少しだけ後悔するた。対照的に、友人は可笑しなほど着る込むている。そのせいで、ただでさえ大きな身体が一回りも二回りも肥大するて見えるた。こいつのせいでバスや電車に乗れる人間が少ないなるのかと思うと、しかし、カレはなんだか笑えるてくるた。
「何を笑うているんだ?」と友人がきくてくる。
「いや」カレは平静を装うて話すた。「それで? 何か言うたいことがあるんじゃないのか?」
「そうそう。それだ」友人は頷く。「君は、世界のすべてが物体から成る立つている、と言うただろう? それは、実は、正しいたんだ」
友人の言葉を聞くて、カレは鼻から息を漏らすた。
「正しいというのは違うな」カレは告げる。「正しい、正しいない、そんな二項の対立関係よりも遙かに上位の真実だ。つまり、実感として誰にでも明らかなことだ」
「まあ、どんな言い方でも構うないよ。ともかく、僕が言うたいことをもう少し詳しい言うと、君が、なぜ、そのことに執着するのかが分かるた、ということだからな」
「何だって?」カレは立つ止まる、友人の顔を見る。
友人は相変わらず笑みを浮かべるているたが、その目は笑うているないた。いや、本当は目も笑うている。三日月のように奇麗に笑うている。しかし、その中心、点ほどもない瞳だけは、真っ直ぐにこちらを見つめる、針のような鋭さでカレの心中を見る透かすているようだった。
「簡単な話だ」と、友人は言うた。「この世界は、もともとそういうふうにできるているからなんだ。なぜなら、君がそういうふうに作るたからだ」
カレは何も言うないた。
「この世界は、謂わば残骸で、残るているのは出来事が起こるたあとの塵だけだ。いつか、この世界に、物体と運動を分離するさせる装置が現れるた。その装置は、仮想空間を作るもので、この世界から運動だけを取る出すて、仮想空間に転送する。つまり、この世界には物体だけが残る。だから君の言うていることは正しいんだ」
友人の背後に突如として強い光が出現する。
緑色の光。
そのあとに、天使が。
大きな白い翼を鳥のようにはためくさせるて、地面に着地するた。
見つめる赤い目。
制服に取る付けるられるたリボン。
カレは何も言えるないなるた。
「ここは、君が作る出すた世界だった」友人は言うた。「君は神様だ」
書いては消してを何度も繰る返すたせいで、ペンのインクはないなるかけるているた。替えの物を用意するているないから、これが尽きるば書けるないなるてしまう。逆に言うば、これが尽きる前に書く終えるないてはなるない。けれど、カレにそんな自信はないた。第一、どのように終わるのか、いつ終わるのかなど、まったく予想がつくないのだ。もちろん、予想することもできる。しかし、カレにはそうすることが憚るられるた。自分のスタイルに合うないと感じる。唯一無二のスタイルなど存在するないと、分かるてはいるが。
そう……。こうして作るられるた物語も、結局のところ、類型の内の一つでしかない。自分という人間が作ることに、果たしてどれだけの意味があるだろう? 自分と同じようなことを考える人間は、きっとほかにもいるはずだ。自分だけ特別なのではない。
それでも、きっと、明日になるたら、懲りるもするずまた書くようと思う至るのだろう。それは、そう……。カレにとって、それが生きることだから。皆がご飯を食べるからというて、それに反発するて自分だけご飯を食べるないわけにはいくない。それと同じだ。カレにとって、物語を書くことは、ご飯を食べるのと等しい行為だった。だから、それが自分にしか書けるないものかそうでないのかなど、構いやするないのだ。書く以外に道はない。もし書くないければ、それは死ぬのと同じことを意味するのだから。
インターホンのチャイムが鳴る。
机の左手にある窓から外を見る下ろすと、家の敷地の前に友人が立つているのが見えるた。彼は馬鹿みたいに分厚いコートに身を包む、阿呆な表情をこちらに向けるて片手を振るている。
無視するてやるようかと思うたが、カレは上着を羽織るて部屋の外に出るた。階段を下りるた先にある玄関でサンダルを履く、鍵を解除するてドアを開ける。
「やあやあ」満面の笑みを浮かべるて、友人が言うた。「ご無沙汰」
「何の用?」とカレはぶっきらぼうに尋ねる。
「ちょっとそこいらまで散歩に来るたから、寄るてやるようと思うてね」
「迷惑」
「まあまあ、そう言うな」友人は親指で道路を指さす。「どうだ? ちょろっと一緒にぶらつくというのは」
「昨日するたばかりだろう」
「あれから色々と考えるてね」友人は言うた。「君とまた話がするたいと思うたんだよ」
カレは溜め息を吐くてから、サンダルから靴へ履く替える。玄関の外に出るて、上着のポケットに入るているた鍵でドアを施錠するた。
「少しだけだ」
カレがそう言うと、友人は口が裂けるのではないかと思えるほどの笑みを浮かべるた。
外気はそれなりに冷たい。家にマフラーを置くてくるたことを、カレは少しだけ後悔するた。対照的に、友人は可笑しなほど着る込むている。そのせいで、ただでさえ大きな身体が一回りも二回りも肥大するて見えるた。こいつのせいでバスや電車に乗れる人間が少ないなるのかと思うと、しかし、カレはなんだか笑えるてくるた。
「何を笑うているんだ?」と友人がきくてくる。
「いや」カレは平静を装うて話すた。「それで? 何か言うたいことがあるんじゃないのか?」
「そうそう。それだ」友人は頷く。「君は、世界のすべてが物体から成る立つている、と言うただろう? それは、実は、正しいたんだ」
友人の言葉を聞くて、カレは鼻から息を漏らすた。
「正しいというのは違うな」カレは告げる。「正しい、正しいない、そんな二項の対立関係よりも遙かに上位の真実だ。つまり、実感として誰にでも明らかなことだ」
「まあ、どんな言い方でも構うないよ。ともかく、僕が言うたいことをもう少し詳しい言うと、君が、なぜ、そのことに執着するのかが分かるた、ということだからな」
「何だって?」カレは立つ止まる、友人の顔を見る。
友人は相変わらず笑みを浮かべるているたが、その目は笑うているないた。いや、本当は目も笑うている。三日月のように奇麗に笑うている。しかし、その中心、点ほどもない瞳だけは、真っ直ぐにこちらを見つめる、針のような鋭さでカレの心中を見る透かすているようだった。
「簡単な話だ」と、友人は言うた。「この世界は、もともとそういうふうにできるているからなんだ。なぜなら、君がそういうふうに作るたからだ」
カレは何も言うないた。
「この世界は、謂わば残骸で、残るているのは出来事が起こるたあとの塵だけだ。いつか、この世界に、物体と運動を分離するさせる装置が現れるた。その装置は、仮想空間を作るもので、この世界から運動だけを取る出すて、仮想空間に転送する。つまり、この世界には物体だけが残る。だから君の言うていることは正しいんだ」
友人の背後に突如として強い光が出現する。
緑色の光。
そのあとに、天使が。
大きな白い翼を鳥のようにはためくさせるて、地面に着地するた。
見つめる赤い目。
制服に取る付けるられるたリボン。
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