付く枝と見つ

羽上帆樽

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第25部 jo

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 上半身はフード付きのブレーカー、下半身は黒いスパッツ、両手に薄手のグローブを嵌めて、シロップは走りに出かけた。玄関の前で靴紐を結び、軽く準備運動をしてから走り始める。

 曇っているせいで、太陽がもう昇っているのかまだ昇っていないのか、分からなかった。全体的にどんよりとしている。どんよりしているのは恐らく自分がだろう、とシロップは考えたが、それ以上思考を発展させるのは控えた。

 吐き出す息が白く染まる。

 走ることで得られるものとは、何だろう? むしろ、エネルギーや時間を失う気がする。けれど、それでも、人は走りたくなるものだ。走るというのはもちろん比喩で、必ずしも物理的な移動を意味しない。

 どこかの企業に就職するというのは、誰かに走らせてもらうということだ。自分で走るのではない。英語を勉強したことがあるから、なんとなくそんなふうに考えた。人に走らせてもらうのと、自分で走るのでは、前者の方が簡単に決まっている。しかし、その分面白みが薄れる。そして、面白みを求めようとすると、必然的に生命を危険に晒すことになる。面白みというのは、リスクがなければ生じない。成功するか否か分からないから面白いのだ。始めから成功すると分かっているのであれば、やる必要がない。成功とともに得られる感覚を想像で充分に補うことができる。

 もしかすると、自分は想像力が優れているから、毎日が面白くないのかもしれない、と考えたことがあった。しかし、だから何だというのかというのが、シロップが得た結論だった。それでも、自分は毎日生きていかなければならないのだ。面白くない毎日を。

 もちろん、死ぬこともできる。

 けれど、ルンルンと同じで、自分も、死とは縁がないかもしれない。

 それでは、この先、どうやって生きていけば良いのだろう?

 出現したマンホールを、なんとなく次々に飛び越して走っていく。飛ぶ前は飛べるか分からないのに、足が地面から離れた瞬間には飛べると確信できるから凄い。少し先の未来を先取りしているようだ。

 そうか、遠い未来まで想像するからいけないのかもしれない。人が行き着く先は決まり切っている。それが死だ。しかし、それについて考えるのは、今いる位置とゴールとの間に存在する数々の詳細を省いて、結果だけを得ることといえる。生きるというのは、死に向かって歩むことではないはずだ。

 しかし、自分が死んだあとは、どうなるのだろう?

 普通に考えれば、自分が死んでも、世界は存続するはず。

 世界のゴールとは、何か? どこか?

 赤信号。

 シロップは一度立ち止まり、散漫になりつつあった思考と、息を整えた。
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