ぐれい、すけいる。

羽上帆樽

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第11部 4202年11月11日

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 某有名菓子の記念日らしい。しかし、僕にとってそんなことは関係がない。普段から食べるわけでもないし、そもそも、僕はあまりお菓子を食べない。そう思ってみたが、よくよく考えてみると、積極的に、つまりは、お菓子を食べるという行為のみを遂行しようと思って食べることが少ないだけで、日常的には、無意識の内にお菓子を口にしていることに気づく。この種の堆積は、きっとほかの場合にも当て嵌まるだろう。勉強も、そんなふうにやれば良いのかもしれない。

 彼女と一緒に裏山の公園に行った。裏山とは言ったものの、僕達の家があるのがそもそも山のような場所だから、単なる「裏」と言った方が正しいかもしれない。その、「裏」の公園には、比較的広大な原っぱがある。山の上に原っぱがあるのだ。プリンの上にお盆を載せているようなイメージに近いかもしれない。原っぱをずっと進んだ先にベンチがあり、僕と彼女はそこに並んで座った。

「ふうん」と僕は言った。

「nani, fuun tte」彼女が反応する。こういうとき、「何」のあとに「?」が来るのか、それとも「って」のあとに「?」が来るのか疑問だ。

「何だと思う?」

「shibukyuufu」

 その、四分休符のようなちょっとした休みを謳歌するために、僕と彼女はここに来た。今日は、彼女の仕事もないから、比較的ゆったりしている。「比較的」という言葉を使う機会が、数年前に比べると、比較的多くなったような気がする。比較的使いやすいからだろう。

「ここに来ていたんだね」

「nani ga ?」彼女はリュックの中を漁っている。

「いつも、夜な夜な」

「“itsumo”to“yo na yo na”o narabete tsukau riyuu wa ?」

「いい所だね、ここ」

「sou deshou ?」

「いつも、ここで何をしているの?」彼女が差し出してきたコーヒーを受け取って、僕は尋ねる。コーヒーはケトルの蓋の部分に入っていた。

「deai o matte iru ?」

「なるほど」

 原っぱには誰もいない。虫は沢山いるだろう。見えないだけだ。布団にも、衣服にも、壁にも、床にも、天井にも、見えないだけで、小さな虫達が沢山いる。人間がこの惑星を支配しているなど、冗談だろう。

「それで?」僕は尋ねた。「出会いは得られた?」

「mada」今度は自分がコーヒーを飲んで、彼女は答えた。「kimi no chikara ga, hitsuyou na n da yo」
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