皿かナイフか

羽上帆樽

文字の大きさ
上 下
1 / 10

第1章 喫茶店深夜

しおりを挟む
卒業パーティの日

俺はシルヴィアをエスコートし、ファーストダンスをした後、パーティ会場の庭でアイリーンと待ち合わせした。

いつもならこんなとこでアイリーンと2人っきりにはならない。
だけど、アイリーンにお願いされて断れなかった。
まぁ俺も心の中でアイリーンの関係はこれで最後にしようと思い、会いに行った。


『ルイス。愛しているわ。』
『ああ、俺もだ。アイリーン。』


そんなだけの言葉を俺はパーティ会場の庭でアイリーンに囁いた。


でもまさかこの場面をシルヴィアが見てたなんて…


俺はその時夢に浸り過ぎて、現実を見てなかった。
____________________

卒業パーティの翌日

ミルトン家から手紙が来ていた。
なんでも話があるって事で、ミルトン家に来て欲しいというお願いの手紙だ。
その手紙は俺だけではなく、俺の両親も来て欲しいと記されていた。

何故両親もと不思議に思いながらも俺達はミルトン家に向かった。


俺と俺の両親がミルトン家に着いたら、シルヴィアに応接室へと案内された。
そこにはアイリーンとアイリーンの両親が居た。


俺は嫌な予感がした。
まさか俺とアイリーンの関係がバレてしまったのだろうか…


全員が応接室に集まった時、シルヴィアが話を切り出した。



俺とアイリーンがパーティ会場の庭で抱き合って愛を囁いてた事をシルヴィアが見たという事。
俺とアイリーンが恋仲だったんじゃないかという噂が前々からあったという事。



俺は驚いた。
やはり俺の勘は的中していた。
そのまさかだったのだ。


そしてシルヴィアは聞き捨てならない事を言った。

『私、シルヴィア・ミルトンはルイス・フィルトンとの婚約を破棄したいと思います。』



俺は動揺してしまった。
俺は無意識にシルヴィアの名を呼び、その理由を問いかけた。

そしてシルヴィアは言ったのだ。
俺がアイリーンの事が好きだから、婚約破棄すると…



どうして吹っ切れたような感じで言うのだろうか?
俺達には約束がある。
『愛し合える家庭を作りたい。』
シルヴィアは俺の事が好きだから、この約束事を持ちかけたのだ。
そんな簡単に好きな人を諦められるのだろうか?
俺はそう思ってた。


しかし現実は違った。
シルヴィアは俺の事を人として好きだったが、恋愛感情はなかったと…


その言葉に俺は酷く動揺した。


(なぜぇ?)




そんな俺はふっと思ってしまった。



何故俺はこんなに動揺してるのだろう?

もしアイリーンが好きなら、すんなり受け入れて婚約破棄すればいいではないか?



そんな事を思ってたら、俺はある答えに辿り着いた。




そう、俺はシルヴィアが好きなのだ。




俺はシルヴィアが好きだから、頼ってくれないシルヴィアに足りないと思ってしまった。
頼られないと俺の存在意義がなくなってしまうと思ったから…

俺はシルヴィアが好きだから、アイリーンと居た時、物足りないと感じたのかもしれない。無意識の内に俺はアイリーンのようにシルヴィアと過ごしたかったと思ったから…

俺はシルヴィアが好きだから、噂の事、つまり俺の事でシルヴィアが悲しんでると聞かれた時は嬉しかった。
なにせシルヴィアが俺に感情がぶつけてきたのだから…



もしかしたら俺は無意識にアイリーンをシルヴィアにすり替えてたのかもしれない。その理由で俺はアイリーンとの関係が長く続いてたと考えれば納得がいく。



だからアイリーンが俺にペンを持たせ、婚約破棄の書類にサインをさせようとした時、俺はアイリーンの手を振り解いた。

そしてこう発言した。

『お、俺は婚約破棄しない!!!』っと



俺はシルヴィアの事が好きだから、婚約破棄をしたくない!
俺にはシルヴィアが必要だから、婚約破棄をしたくない!

そう思いながら俺は言った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お茶をしましょう、若菜さん。〜強面自衛官、スイーツと君の笑顔を守ります〜

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
陸上自衛隊衛生科所属の安達四季陸曹長は、見た目がどうもヤのつく人ににていて怖い。 「だって顔に大きな傷があるんだもん!」 体力徽章もレンジャー徽章も持った看護官は、鬼神のように荒野を走る。 実は怖いのは顔だけで、本当はとても優しくて怒鳴ったりイライラしたりしない自衛官。 寺の住職になった方が良いのでは?そう思うくらいに懐が大きく、上官からも部下からも慕われ頼りにされている。 スイーツ大好き、奥さん大好きな安達陸曹長の若かりし日々を振り返るお話です。 ※フィクションです。 ※カクヨム、小説家になろうにも公開しています。

心の落とし物

緋色刹那
ライト文芸
・完結済み(2024/10/12)。また書きたくなったら、番外編として投稿するかも ・第4回、第5回ライト文芸大賞にて奨励賞をいただきました!!✌︎('ω'✌︎ )✌︎('ω'✌︎ ) 〈本作の楽しみ方〉  本作は読む喫茶店です。順に読んでもいいし、興味を持ったタイトルや季節から読んでもオッケーです。  知らない人、知らない設定が出てきて不安になるかもしれませんが、喫茶店の常連さんのようなものなので、雰囲気を楽しんでください(一応説明↓)。 〈あらすじ〉  〈心の落とし物〉はありませんか?  どこかに失くした物、ずっと探している人、過去の後悔、忘れていた夢。  あなたは忘れているつもりでも、心があなたの代わりに探し続けているかもしれません……。  喫茶店LAMP(ランプ)の店長、添野由良(そえのゆら)は、人の未練が具現化した幻〈心の落とし物(こころのおとしもの)〉と、それを探す生き霊〈探し人(さがしびと)〉に気づきやすい体質。  ある夏の日、由良は店の前を何度も通る男性に目を止め、声をかける。男性は数年前に移転した古本屋を探していて……。  懐かしくも切ない、過去の未練に魅せられる。 〈主人公と作中用語〉 ・添野由良(そえのゆら)  洋燈町にある喫茶店LAMP(ランプ)の店長。〈心の落とし物〉や〈探し人〉に気づきやすい体質。 ・〈心の落とし物(こころのおとしもの)〉  人の未練が具現化した幻。あるいは、未練そのもの。 ・〈探し人(さがしびと)〉  〈心の落とし物〉を探す生き霊で、落とし主。当人に代わって、〈心の落とし物〉を探している。 ・〈未練溜まり(みれんだまり)〉  忘れられた〈心の落とし物〉が行き着く場所。 ・〈分け御霊(わけみたま)〉  生者の後悔や未練が物に宿り、具現化した者。込められた念が強ければ強いほど、人のように自由意志を持つ。いわゆる付喪神に近い。

小さなパン屋の恋物語

あさの紅茶
ライト文芸
住宅地にひっそりと佇む小さなパン屋さん。 毎日美味しいパンを心を込めて焼いている。 一人でお店を切り盛りしてがむしゃらに働いている、そんな毎日に何の疑問も感じていなかった。 いつもの日常。 いつものルーチンワーク。 ◆小さなパン屋minamiのオーナー◆ 南部琴葉(ナンブコトハ) 25 早瀬設計事務所の御曹司にして若き副社長。 自分の仕事に誇りを持ち、建築士としてもバリバリ働く。 この先もずっと仕事人間なんだろう。 別にそれで構わない。 そんな風に思っていた。 ◆早瀬設計事務所 副社長◆ 早瀬雄大(ハヤセユウダイ) 27 二人の出会いはたったひとつのパンだった。 ********** 作中に出てきます三浦杏奈のスピンオフ【そんな恋もありかなって。】もどうぞよろしくお願い致します。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

舞台装置は闇の中

羽上帆樽
ライト文芸
暗闇月夜は高校生になった。ここから彼女の物語は始まる。 行く先は不明。ただし、時間は常に人間の隣にあるが故に、進行を妨げることはできない。 毎日1000文字ずつ更新します。いつまで続くか分かりません。 終わりが不明瞭であるため、どこから入ってもらっても構いません。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

処理中です...