蜜柑製の死

羽上帆樽

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2023年6月12日

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見つめる瞳。

見つめる目。

見つめられる顔。

背ける視線。

テーブルの向こう側に座る少女。

口もとに付着した血。

乾いた血。

腕を伸ばしてカップを手に取る。

液体を口に含む。

そうしている間も固定されたままの視線。

その視線に扇がれる僕。

また見てしまう僕。

停滞している空気。

立ち上がり、硝子扉を開いて、空気の通り道を作る。

一定の規則に沿って流れる空気。

腹部に撒かれた包帯。

白と赤。

赤と白。

どちらがもとの色か分からない。

本末転倒。

並んだ髪の一本一本。

すべてが真っ直ぐ地面へと向かっているのではなく。

それぞれがそれぞれのルールに従って垂れている。

所々捻れている。

どうしてか?

問うている間は平和なのだ、ということに気づく。

問いが一つもなくて、すべてのコインが表を向いてしまったら。

もう、何も面白いことはない。

正体は明かされない方が良い。

しかし、正体を明らかにする方向で考えることこそが、何よりの楽しみ。

僕は、彼女が誰なのか気にしている。

知りたいと思っている。

安心したいのだろう?

僕の手を掴む。

枯れ枝みたいな指。

爪が皮膚に浸食する。

僕は首を傾げる。

少女は僕を見つめている。

僕はその目を見てしまった。

もう、逃れられない。

逃れたいとも思っていないけれど。
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