蜜柑製の死

羽上帆樽

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2023年6月2日

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雨。

外に出るなというサイン。

しかし、そういうときに限って、外に出たくなる精神。

もともと日差しが苦手だから。

雨が降っているときくらいしか、外に出たくない。

けれど、濡れたくはない。

窓の外に顔を出して、少し遠くの山を見る。

こんな日に、山の中の小屋の、さらにその中で。

暖炉に火を熾し、紅茶を啜りながら、読書でもしたら。

きっと素敵だろうと想像する。

想像した結果は、ファンタジー。

現実ではない。

現実はいつも目の前に。

ノートパソコンと、机と、椅子と、コーヒーカップ。

紅茶ではないけれど、コーヒーがあるだけまし?

窓を叩く風の音。

木々を揺らす風の音。

細波にも似ている。

本当は、細波なんて知らないけれど。

海に行きたい、とふと思う。

雨が降っているときが良い。

晴れているときには行きたくない。

真っ白な砂と真っ青な海が目に痛いから。

身体が痛いから。

心も痛いから。

窓の外に海があれば良いのに、と思う。

そうだ、雨が沢山降れば、いつかここも海になるだろうか?

海の中にある山。

その中にある小屋。

その中にある暖炉。

その傍にいる自分。

を、想像する。

けれど、それは、やっぱり、ファンタジー。

現実は、ここにある。
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