蜜柑製の死

羽上帆樽

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2023年5月19日

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騒音と雑音で目が覚めた朝。

掌を天井に翳しても、血潮も何も見えなかった。

僕は死んでいる。

生きていることを証明するのは不可能に近い。

では、どうして、人は、生きている、と感じるのか?

身体を起こして正面を見る。

本棚が並んでいた。

しかし、本は並んでいない。

その内の一冊を手に取り、ぼやけた目で表紙をじっと見つめる。

自然と、死、の一文字が浮かんでくる。

生は二音節なのに、死は一音節という事実にやられて、生きる気力を失う羽音。

着替える気にもなれなかった。

カーテンを開け、シャッターを持ち上げて、窓の外を見る。

すでに太陽が昇っていた。

昇りすぎなくらい。

絶望。

下を見ると、土の地面が見える。

草が生えている。

ここから飛び降りたら、僕の身体はどうなってしまうだろう?

霧散するだろうか?

世界と同義になれるだろうか?

結局のところ、世界に存在するすべてのものは、粒子の集合にほかならない。

あれも、これも、すべて粒子。

しかし、粒子はどこにも見えない。

僕の掌も粒子ではない。

掌は掌だ。

雑食。

雑学。

雑音。

そして、騒音。

電信柱に横たわっている少女がいた。

彼女は血を流している。

美しい、と感激する。

これは観劇だ。
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