幕末陰陽師

小鳥遊 栗鼠

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そうだ、京都行こう

追い出された

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…何故こうなったろうか。
私はただ、無実な妖狐ようこんを助けただけなのだけれど。


いやまてよ…望月家に代々伝わる昔話と同じことしでかしてるじゃないか。

……………あははは。
あんなにお婆様に言われてたのに。


まあ行くとしたら京だろうか。

御所のある都と、首都となっている京は少し場所が違う。此処の気温が一番良い。



「しかし…夜に追い出さなくても」



わざわざ夜に追い出した意味が分からない。
夜危ないじゃないか。近頃は〝攘夷浪士〟なるものが巷を騒がしているらしい。

………まああいつ・・・、前々から私を追い出そうとしてたしな。

私達は実力社会。女だからと当主の座が奪われることはない。
だからこそだろう。


あの腹黒弟に嵌められたか…。まずまず、こんな早くにバレてしまった時点で可笑しい。



「小さいときはあんなにひょこひょこ後ろにくっついてきてかいたのに。可愛かったのに…」



成長って恐ろしい。
近くにあった角を曲がると、その先にギラリと鈍く銀に光るものを持った男が数人立っていた。

─────刀だ。


「あぁん?なんだァ嬢ちゃん。遊んでくれんのかァ!?」


私は、追い出された際に渡された小太刀を抜こうとするが、あちらの方が速かった。
駄目だ、殺られる───!

反射的に目を瞑った。
いつまで経っても斬られる感覚がしない。


おかしい、と思い目を開けて顔を上げようとすれば、


「てっ、てめーは…!?」
「まてっ、……ぎゃぁぁぁあ!」


と声が聞こえてきた。
視界に入ってきたのは、地面に倒れている男と、尻餅をついて後ずさりしている男。


地面に倒れている男の辺りには、血が広がっていた。

つん、と血の特有な匂いがして私は顔をしかめた。


「殺されたくなかったらとっとと失せろ」


低く、誰かが言った。
その言葉に反応するかのように男たちは逃げていった。


「おい女。大丈夫か」


声がかけられた方に目を向ける。
その手には刀が一振握られており、そこから血が滴り落ちている所をみるにその人が斬ったのだろう。

ちょうど月の光がその人を照らした。…男だ。
黒に近い紫の髪。引き込まれるような黒い瞳。鋭い眼光。


「あな、たは……」
「高杉晋作」
「高杉…!?」


高杉晋作。名前だけだが聞いたことがある。
最近巷を騒がしている攘夷浪士の中でも過激派だから気を付けろと、家中に話が回ってきた。

私は咄嗟に刀を抜き、構えた。


「オイオイ、せっかく助けたんだからんなことすんじゃねぇよ」


高杉が言うには、助けてくれた……らしい。
まだ警戒はしているが、明らかな殺意がないところを見るに刀は納めて大丈夫だろう。

私が刀を納めると、高杉はにやり、と満足げに笑った。
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