2 / 2
そうだ、京都行こう
追い出された
しおりを挟む…何故こうなったろうか。
私はただ、無実な妖狐を助けただけなのだけれど。
いやまてよ…望月家に代々伝わる昔話と同じことしでかしてるじゃないか。
……………あははは。
あんなにお婆様に言われてたのに。
まあ行くとしたら京だろうか。
御所のある都と、首都となっている京は少し場所が違う。此処の気温が一番良い。
「しかし…夜に追い出さなくても」
わざわざ夜に追い出した意味が分からない。
夜危ないじゃないか。近頃は〝攘夷浪士〟なるものが巷を騒がしているらしい。
………まああいつ、前々から私を追い出そうとしてたしな。
私達は実力社会。女だからと当主の座が奪われることはない。
だからこそだろう。
あの腹黒弟に嵌められたか…。まずまず、こんな早くにバレてしまった時点で可笑しい。
「小さいときはあんなにひょこひょこ後ろにくっついてきてかいたのに。可愛かったのに…」
成長って恐ろしい。
近くにあった角を曲がると、その先にギラリと鈍く銀に光るものを持った男が数人立っていた。
─────刀だ。
「あぁん?なんだァ嬢ちゃん。遊んでくれんのかァ!?」
私は、追い出された際に渡された小太刀を抜こうとするが、あちらの方が速かった。
駄目だ、殺られる───!
反射的に目を瞑った。
いつまで経っても斬られる感覚がしない。
おかしい、と思い目を開けて顔を上げようとすれば、
「てっ、てめーは…!?」
「まてっ、……ぎゃぁぁぁあ!」
と声が聞こえてきた。
視界に入ってきたのは、地面に倒れている男と、尻餅をついて後ずさりしている男。
地面に倒れている男の辺りには、血が広がっていた。
つん、と血の特有な匂いがして私は顔をしかめた。
「殺されたくなかったらとっとと失せろ」
低く、誰かが言った。
その言葉に反応するかのように男たちは逃げていった。
「おい女。大丈夫か」
声がかけられた方に目を向ける。
その手には刀が一振握られており、そこから血が滴り落ちている所をみるにその人が斬ったのだろう。
ちょうど月の光がその人を照らした。…男だ。
黒に近い紫の髪。引き込まれるような黒い瞳。鋭い眼光。
「あな、たは……」
「高杉晋作」
「高杉…!?」
高杉晋作。名前だけだが聞いたことがある。
最近巷を騒がしている攘夷浪士の中でも過激派だから気を付けろと、家中に話が回ってきた。
私は咄嗟に刀を抜き、構えた。
「オイオイ、せっかく助けたんだからんなことすんじゃねぇよ」
高杉が言うには、助けてくれた……らしい。
まだ警戒はしているが、明らかな殺意がないところを見るに刀は納めて大丈夫だろう。
私が刀を納めると、高杉はにやり、と満足げに笑った。
0
お気に入りに追加
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
あなたが望んだ、ただそれだけ
cyaru
恋愛
いつものように王城に妃教育に行ったカーメリアは王太子が侯爵令嬢と茶会をしているのを目にする。日に日に大きくなる次の教育が始まらない事に対する焦り。
国王夫妻に呼ばれ両親と共に登城すると婚約の解消を言い渡される。
カーメリアの両親はそれまでの所業が腹に据えかねていた事もあり、領地も売り払い夫人の実家のある隣国へ移住を決めた。
王太子イデオットの悪意なき本音はカーメリアの心を粉々に打ち砕いてしまった。
失意から寝込みがちになったカーメリアに追い打ちをかけるように見舞いに来た王太子イデオットとエンヴィー侯爵令嬢は更に悪意のない本音をカーメリアに浴びせた。
公爵はイデオットの態度に激昂し、処刑を覚悟で2人を叩きだしてしまった。
逃げるように移り住んだリアーノ国で静かに静養をしていたが、そこに1人の男性が現れた。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※胸糞展開ありますが、クールダウンお願いします。
心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。イラっとしたら現実に戻ってください。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる