シスターと機関銃

れいん

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第一章

子供達へのプレゼントとトラブル

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 馬車が停まって御者であるマークが、馬車の扉を開けた。



 「お嬢様、貴族街に着きました。どちらのお店に行かれる予定でしょうか?」


 「そうね…子供達と一緒に洋服を見ようかしら、家には子供のサイズの服が余りなかったものね」


 「畏まりました。では洋服店前に馬車を移動致します。」
 


 そう言ってマークは貴族街で、有名な洋服店前に馬車を停めた。
 馬車から降りるのにマークが準備してくれる。
 そしてマークの手を借りながら子供達が先に馬車から降り、私が後から降りる。



 有名洋服店〔ムーン&ベアー〕は、貴族街の高級店。
 マークが店の扉を開けてくれる。私はヴェルディとウルウェルを連れて店内へ入った。


 店員が出て来てファスアル公爵家のご来店と気付き、テーブルとソファのある部屋へ案内してくれる。
 その店員は店長を呼びに行ったみたい。
 店内は華やかな淡い青色と、白色の物を飾ったり置かれていた。


 接客の為のテーブルの前に淡い青色のソファがあり、私達はソファに座った。
 テーブルの上には、キャンディーの瓶が置いてあった。


 店の奥から店長のリタナが急いで出て来た。
 店長のリタナは私達の居る部屋の扉をノックをする。
 私が返事をするとリタナが室内へ入って来た。



 「お待たせ致しました。アリディアーナ様、お久しぶりでございます。今日はいかが致しましょう?」


 「リタナさんお久しぶりです。今日はこの子達のお洋服や下着を、数着見にきたのです。」



 そう私が言うとリタナは、ジーッと子供達を見ている。
 


 「まぁー可愛らしい子供ですね!!私の腕が鳴りますわ」



 「リタナさんお願いしますね?」



 「このリタナにお任せ下さいませ!!
 アリディアーナ様には、私がデザインしたドレスが出来上がっておりますわ。
 着てみて下さいませ!!」


 「私のドレスですか?頼んでませんでしたよね?」


 「アリディアーナ様はお綺麗ですし、色々なドレスのデザインが次々と…
 それより子供服ですね!!
 子供服が決まったらアリディアーナ様です!!」


 「アリディアーナさん聞いて良いですか?」


 「どうかしましたか?」


 「私たちのお洋服って言ってましたが…」


 「僕たちの洋服って?」


 「ヴェルディとウルウェルのお洋服と下着を買うのよ」


 「私たちのお洋服と下着ですか?」


 「僕たちはいらないです」


 「私がないと困るのよ。だから私の為に付き合って下さいね?」


 「アリディアーナさんが困るなら…」


 「困らせたくない…」


 と納得しないご様子の子供達。
 でも王城へ行く為の洋服と、今夜の寝衣も必要だもの。



 リタナは他の店員達と、子供服を次々に持って来た。
 そしてあーでもない、こーでもないと子供達を着せ替え人形の様に、着せ替えていく。


 私はソファで座ったまま、ヴェルディとウルウェルの試着を見ていた。
 凄く可愛らしいわぁ~って思ったわ。
 なのでヴェルディとウルウェルのお洋服と下着、寝衣、ドレスやジャケットとか数十着を購入すると決め、リタナに声を掛けて頼んだ。



 リタナは直ぐに他の店員と購入する洋服類を、箱に入れ包装する為に室内から出て行った。



 ヴェルディとウルウェルは何回も着たり、脱いだりの繰り返しで疲れたらしくソファでグッタリとしていた。
 私はテーブルの上にあったキャンディーの瓶から、キャンディーを取り出す。


 「ヴェルディ、あーん」


 そう言ってヴェルディの口に、私が指で摘んだキャンディーを持っていく。
 ヴェルディは反射的に口を開けたので、私はキャンディーを口へ入れた。


 「ウルウェル、あーん」


 今度はウルウェルの口に、キャンディーを当てる。
 ウルウェルは頬を赤くして、視線を彷徨わせる。
 なかなか口を開けないので、食べさせるのにもう1度。


 
 「ウルウェル、あーんってお口開けて」



 ウルウェルは顔を真っ赤にしながら迷って、暫くして口をおずおずと開けた。
 私はウルウェルの口の中へ、キャンディーを入れる。


 「キャンディーは美味しいかしら?
 ヴェルディとウルウェルのお口に合えば良いのですが…」


 
 ヴェルディは私が「あーん」ってやった事に、今更になって気付き頬を桃色に染めた。


 「私はアリディアーナさんから貰う物は、全部美味しいし嬉しいです。
 でも…やっぱり1番はアリディアーナさんから貰ったクッキーです!!」


 そう頬を染めながらヴェルディが言う。
 私は可愛らしくてぎゅーっと抱き締めた。


 「ふふふっ。ヴェルディ有難う。そう言われて嬉しいわ」



 ウルウェルはアリディアーナが「あーんっ」と言って、キャンディーをヴェルディの口に入れたのを見てた。
 自分もかもと思ったら反射的に口を開けるなんて出来なかった。
 恥ずかしいし小さな子供じゃないと思ってるから。



 「ウルウェルはキャンディー美味しい?」


 「キャンディーは美味しいけれど…
 やっぱりアリディアーナさんのクッキーが好きです!!」



 今度はウルウェルをぎゅーっと抱き締めた。


 「ウルウェルも有難う。またクッキーを焼くわね」


 「アリディアーナさん、私も私もです~」
 


 「ちゃんとヴェルディの分もクッキー焼くわよ」


 そう私が優しく言うと



 「クッキーもですけど…
 アリディアーナさんにぎゅーっとして貰いたいです」



 
 ヴェルディが私に上目遣いで強請ってきた。
 そうウルウルとした瞳で言うので、ヴェルディをぎゅーっと抱き締めた。
 この子達は可愛すぎるわ。普通の可愛いじゃなく、あざと可愛い感じかしら?




 この時にウルウェルが、先程より頬を真っ赤に染まったのを私は気付かなかった。



 暫くしてリタナが部屋に戻って来て、子供達の洋服の包装が終わったと言った。
 そのリタナの手には、淡色の赤みのあるスカーレット色が見えた。



 私は気付かないふりして、店内から出ようと思った。
 すっとソファから立ち上がり、向かい側のソファに座っている子供達の所へ行く。



 「今日は有難うございました。
 この子達に似合う素敵なお洋服があって、本当に来て良かったわ。また来ますので宜しくね」


 そう言ってアリディアーナは立ち去ろうとしたら、リタナと店員が数名でアリディアーナを攫う様に試着の為の方へ連れて行く。



 「今日は私の物はいりませんし、もう帰りますわ」


 「そんな事を仰らずに、抵抗なさらずお脱ぎ下さいませ。」


 「そうですわ。後ろを向いて下さいませ」


 「本日のお召し物がワンピースで良かったですわね。
 アリディアーナ様を簡単にお脱がせ出来ますわ」

 
 「きゃー脱がせないで下さいませ」


 「やはりアリディアーナ様は、お着痩せされるみたいですわね。それにすべすべして柔らかくて羨ましいですわ」


 「腰なんて細くて折れそうなのに、出なきゃいけない部分は出ていて。
 しかもお下品な感じに全く見えないですし、異性からしたら魅力的なお身体ですわぁ~」


 前世だったらセクハラって言えると思うのに、現世ではセクハラにならないの?



 


 ♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎







 その頃のヴェルディとウルウェルは、アリディアーナが連れて行かれてしまい不安になっていた。



 連れて行かれたと言っても、同じ室内のである。
 試着する為に衝立てで仕切っているだけ。
 なので衝立ての向こう側に、アリディアーナが連れて行かれた。



 「ねぇーねぇーウル、私気になるから様子見て来たい。
 ウル行ってみようよー」



 そうヴェルディがウルウェルを誘っている。


 「僕はやめとくよ。ここで座ってるから」


 「えーウルも気になるでしょう?
 ねぇーねぇー見に行こうよー」


 「僕は待ってるから、ヴェルだけが行って来たら良いよ」


 いくらヴェルディが誘っても、ウルウェルは断ってた。


 「じゃあ、私だけで見に行って来るね」


 「僕は待ってるから、ヴェル行っておいで」



 そう2人が話していた時だった。
 試着する衝立ての向こうから、声が聞こえて来たのだ。



 

 「今日は私の物はいりませんし、もう帰りますわ」


 「そんな事を仰らずに、抵抗なさらずお脱ぎ下さいませ」


 「そうですわ。後ろを向いて下さいませ」


 「本日のお召し物がワンピースで良かったですわね。
 アリディアーナ様を簡単に脱がせますわ」

 
 「きゃー脱がせないで下さいませ」


 「やはりアリディアーナ様は、お着痩せなさるみたいですわね。それにすべすべして柔らかくて羨ましいですわ」


 「腰なんて細くて折れそうなのに、出なきゃいけない部分は出ていて。
 しかもお下品な感じに全く見えないですし、異性からしたら魅力的なお身体ですわぁ~」



 そんなセキララな内容の会話が聞こえて来た。
 この会話の内容から、ヴェルディが思い出した様に言った。


 「そう言えば…アリディアーナさんにぎゅーって抱き締めて貰った時に、凄く良い匂いだったなぁ…
 それにフワフワってしてた」


 それを聞いてウルウェルも思い出した。
 先程の抱き締めてもらった時に、アリディアーナの胸に顔が当たってたのだ。
 アリディアーナからしたらハグだし気にしていない。
 それがウルウェルの様な思春期の男の子には、刺激が強くて意識してしまう。
 異性って思うと恥ずかしくて、アリディアーナの行動でドキドキとした。








 ♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢


 

 


 
 結局は身に纏っていたワンピースを脱がされ、ドレスを着せられたアリディアーナは疲れ果てていた。



 普通の一般人に暴力はと思い、ご依頼での汚掃除の時に見せる威力ある回し蹴り、踵落としなどはしない。
 あくまでもご依頼の黒幕や、その人物などに手を貸す、もしくは真っ黒に染まってる者には、ご慈悲もなく叩き潰すのだ。



 アリディアーナが試着から出て来ると、ヴェルディとウルウェルが褒めた。



 「アリディアーナさん、凄くキレイです!!女神様みたいです!!」


 「本当にキレイです!!神様に連れて行かれそうだよ」


 「ヴェルディとウルウェル有難う。そう言って貰えて嬉しいわ。でもウルウェルが言う、〝神様に連れて行かれそう〟はないと思うわ」



 そう言って、ふふふっと微笑むと女神様と例えたヴェルディに、誰もが同意見だと思われる程だった。
 そしてウルウェルの言った事もだろう。
 この場に居ないブルーローズに居る神々や神獣達、スターチスの人々ならアリディアーナを攫ってしまうかも知れない。
 オーディンを筆頭として、皆んなアリディアーナを好きな人が多いのだから、これも間違いではない。




 アリディアーナが着たドレスはスレンダーラインで、レースのフリルはグラデーションで薄いスカーレットから濃い色へなっている。そのグラデーションフリルは幾重にもなっており、そのフリルに宝石もついる。
 首や肩は繊細なレースで覆われており、アリディアーナの魅力を凄く引き出していた。



 「お似合いでございます!!お写真を撮らせて下さいませ!!」



 「いいえ、私は用事がありますの。ですのでご遠慮致しますわ」



 そうお断りの返事をしているのに、子供達が騒ぎ出す。


 「アリディアーナさんの写真ですか?撮ったら直ぐに見られるの?」


 「凄くキレイですから写真を撮って貰いましょう」


 「そうですわよね。ヴェルディさんもウルウェルさんも審美眼をお持ちなのでしょう!!そうと決まれば、アリディアーナ様、こちらへお立ち下さいませ」



 もう諦めた方が良いと思い、アリディアーナはリタナに言われたように、指定された場所に向かった。
 リタナの強引さに抵抗するくらいなら、体力を温存して置いたほうが良いと思ったからだ。



 お店の中庭で大輪の薔薇の花が咲き誇っていた。まるで薔薇園の様に色取り取りの薔薇が咲いている。


 リタナがアリディアーナの選んだ薔薇花の前に、振り向く様に立って欲しいと言ったのだ。
 なので白薔薇の八重咲きが咲き乱れている中に、アリディアーナが振り返る様に立った。


 アリディアーナが振り返るところを、映像記録魔道具で撮った。
 直ぐに画像が出来た様で、ヴェルディとウルウェルは見せて貰っていた。
 アリディアーナは無理矢理に着せられていた、ドレスからワンピースに着替えた。
 

 ヴェルディとウルウェルが待っている所へ戻り、店内から出ようとした時だった。



 お店の扉が開き中へご令嬢が入って来た。ナディア令嬢である。マラドラ侯爵家のご令嬢である。
 そのご令嬢はツンと澄ましたような表情で、アリディアーナを一瞥いちべつして店員へ声を掛けていた。



 そこに店長であるリタナが、大きな写真を店内へ飾ろうとしたのだ。それを見たご令嬢が大きな声で言った。
 



 「リタナさん、なぜ私のお写真は飾って下さらないの?それにドレスもファスアル公爵令嬢のをリタナさんがデザインしていると…」


 「ナディア様にもドレスはお作りしてますわ。ですのに何を言ってらっしゃるの?」


 「リタナさんが頼まれずにデザインするのは、ファスアル公爵令嬢にだけと噂でお聞きしましたわ」
 


 そう言うやり取りがされており、そこに爆弾の様な威力の言葉を投下した人がいた。



 「アリディアーナ様は、女神様みたいにキレイだから仕方ないのよ!!」


 「そうだよ!!」



 「ヴェルディとウルウェル、嬉しいけれど今、言う事じゃないからね」



 爆弾発言したヴェルディとウルウェルに、焦って声を掛けたけれど子供達は納得しないご様子。リタナに声を掛けた。



 「リタナさん、写真は子供たちのを飾ってあげて下さい。あの子達は可愛いですから宣伝にもなりますし」



 「良いので御座いますか?ふわふわな可愛らしい子供達なので、お写真で飾りたいですわ!!」


 既に子供達のお写真は撮られてあるので、直ぐに店内に飾る事が出来そうなのですわ。



 「僕たちを飾るんですか!?」


 「私たちだとお店の宣伝にならないです…」



 そうヴェルディとウルウェルは困った様に言った。リタナはバタバタと奥へ行き、大きなお写真を抱えてきた。


 「この辺で良いかしら?」


 「店長、もう少しだけ中央に…」


 「こうかしら?」


 「はい!!それで大丈夫です!!」




 リタナが店内で目につく場所に、ヴェルディとウルウェルのお写真を飾る。それは店内の中央だった。ヴェルディとウルウェルがお花を抱えているのや、クマの大きなヌイグルミを抱えているのだった。


 ヴェルディはフワフワとしたフリルたっぷりのドレスや、ワンピースで愛らしく写っている。
 ウルウェルは少し気恥ずかしいのか、頬を赤くして子供が大人になる背伸びした感じだった。ブラウスにベスト、半ズボンなどで貴族のご子息みたいだ。



 マラドラ侯爵令嬢はご気分を害されたご様子で、険しい表情だったのです。それが子供達のお写真を見たら、頬を緩め微笑を浮かべていた。



 マラドラ侯爵令嬢が静かな内に、私達は店内から出て来た。そしてヴェルディとウルウェルが大切そうに大きな筒を抱えている。馬車に乗る時も大切そうにだ。


 マークが荷物などを馬車へ積み、私達が馬車の席に座ったのを確認する。そして馬車は走り出した。ファスアル公爵家に向かって。

 





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