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第一幕

17.経過観察:必要性

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「.................何故.........?どうしてよ.........だとしても、どうして生き返らせたの?あんなに.........あんなに.........私が嫌いだったでしょ?生きていて欲しく無かったでしょ?死んで欲しかったでしょう?」

 夫は寂しげに目を伏せながら首を振る。

「違う。嫌うなど有り得ない。.........私は.........君を妻にしたかった。永遠の.........妻に。だから.........君に恨まれなければならなかった」
「な.........何を言ってるの?意味が解らない!やめてよ.........嫌よ.........嫌.........っ!」
「.................っ。.........妻にすると決めた日から.........準備をしなければならなかった.........。君に恨まれなければならなかった。君を悲しませなければならなかった。辛く当たらなければならなかった。心を壊し、7つの悪をその身に纏わせて.........死んで貰わなければ.....っ....ならなかった.........。それが死者蘇生の成功する唯一の方法だったからだ。君は.........そうして一度死ななければ.........ならなかった.........」

 言葉を発する事も出来ず、唯彼の顔を見ていた、沢山の疑問が頭を掠める。でも.........言葉が.........喉から外へ出ていかない。


 アンデッド.........アンデッドって.........死んだ人間が生き返った、って事よね?

 じゃあ、私、息はしている?血は巡っている?寝て食べて排泄して.........泣いたり笑ったり.........ビックリしたり怒ったり.........してるわよね?
 7つの悪?何だっけ?怠慢とか嫉妬とかって言うあれ?

「...........本来なら......もっと早くにこうなるはず筈だった。でも君は.........優秀過ぎて.........なんでもこなしてしまう。冷静で我慢強くて、理不尽な事にも耐え抜き、苦痛にも屈しない。正直私の方が辛くて何度も泣いた。あの.........耳を切られた時.........私は隣の部屋に居たんだ。君の悲鳴を聞きながら.........蹲る事しか出来ずに.........早く君が命を絶つのをただひたすら待っていた。それが妻を得るただ一つの方法だから」

「.........何故?どう言う事?」
「400年前、私の先祖の話から遡る。私の一族は.........呪いを受けたんだ」
「呪い?」
「私達は.........呪いの所為で.........人の女性と交れなくなった」


 ****


 伯爵家は古い時代から王を護る盾であり、伯爵の先祖は宮廷魔術師であった。
 ある大戦で死に際の魔女に呪いと言う魔術を掛けられるまでは、恐らく国一番の魔力の持ち主であったのだ。

『呪い』は命を引き換えに施行する魔術だ。コレを消すには同じだけの強い魔力が必要だった。当時は宮廷魔術師以外にその魔女に匹敵する程の魔力を持った者は居なかったのだ。だが、あらゆる術を試したが、この呪いが消える事は無かった。それから数年、ギリギリの処でこの呪いに対抗出来る方法を辛くも編み出した伯爵の祖先は、泣きながら次世の我が子を抱いたと言う。

『過酷な運命を背負わせてしまった。どうかこの先.........愛する事を忘れないでくれ。全てはそこに掛かっている』と。


 ****


「魔女の呪いは次世を残せない様にするものだった。.........一族の者は.........その.........精を.........女性の中に種を.........出すと.........その女性は中から腐って死んでしまう」
「え!!ええ?」
「.................子を成せないばかりか相手の女性をも殺してしまう強力な呪いなんだ」
「.........」
「それを回避する為に編み出された術が『死者蘇生』の術だ。予め妻になる女性の魂の半分を術の中に組み込ませて置き、7つの悪を纏わせた魂と引き換えに身体を再生させて、残った魂を新たに定着させる。それにより、一度死した魂に呪いが移り、残された身体で子が作れるようになった。但し.........術者の魔力の半分を死した魂の代わりに補わなければならず、更に悪の強さによって再生した身体の脆さが決まる。君が私を恨めば恨む程、苦しめば苦しむ程、新しい身体を丈夫に作り替える事が出来たんだ」
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