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第五章 「勝者」と「陰謀」
98. 何だと思ってるんだ!
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「治療していくだろ?医務室へ行くか?」
「ああ、そうだな。俺が血塗れになっちまった。こんな姿でサラは迎えに行けないな.........」
手元にヤマアラシのレイピアを風で回収し鞘に入れる。本当、これ凄いわ。これのお陰で早く決着付けられた。ガイザックをどうやって地面から離そうかそこが1番悩み処だったから。ヤマアラシに感謝しないと。
「なあ、シャザ。このレイピア見てくれないか?ヤマアラシが持ってたんだけど、これミル様の剣とかなり似てると思うんだ。多分ヤマアラシの親父が造ったと思うんだけど.........似過ぎだから借りて来たんだ」
そう言って鞘ごとシャザにレイピアを渡す。
「残り香みたいな剣って.........どう言う意味なんだろうな」
「.................本当だな。確かに.....そっくりだ。これは.........」
シャザは鞘から出した剣身をジッと確かめる様に見つめている。
俺がフイッとサラの居る方を見ると、そこには此方をジッと見つめる彼女の姿。でも顔が真っ赤だ。肩を揺らしてる。ありゃ大泣きしてるな.....
どうしよう。心配してるんだろうな。可愛い....俺のサラは可愛いな~。あれ?
「土の神が.........居ない」
「ん?まあ、もう土は残って無いのだから引き上げたのだろう」
「.........ああ」(そうだろうか?だと良いけど)
先に医務室に行くと伝えようとサラに呼び掛ける為、風を操り声を送ろうとした、その時。キャー!と言う悲鳴が空気を伝わり俺に届く。
「! 何だ?サラの声?」
「!」
俺はシュンッと風になり、一気にサラの元へ。だがそこは固い結界が張られていた。神々を囲う様な透明な壁状のそれに阻まれる。
「サ、サラ?サラ!」
脚元から飴色の鉱石に包まれていくサラの姿が見える。既に太腿まで覆われていた。
これは.........土の力?
「おい!結界を解いて.........下さい!サラが!」
バンバンと手で結界を叩く。この結界は神が造ったモノだ。俺が壊す訳には.........いかない!その内サラの腰から胸まで覆われていく。おい!なんとかしろよ!他の神は何してんだ!このままじゃ.........サラが鉱石の中に取り込まれる!
だが誰も立ち上がらない。
サラの周りの姫がワタワタしたり震えたりしている。サラは.........俺を見ていた。両手を胸に組み、その目には涙。でも歯を食いしばってる。
これは.........罠だ。
神族の俺が神の造りしモノを壊すなぞしてはならない。それは重い罰が与えられる。しかも神の目の前だ。言い逃れなぞ出来ない。
何だよ.........どうしろって言うんだ。婚姻を破棄すれば良いのか?その為に土の神の蛮行も見て見ぬ振りするのか?サラを俺から取り上げる為に?そしてサラを奪い合うのか?お前ら.........サラを何だと思ってるんだ!
ググッと拳に力を入れ結界を一度殴り付け、シャザの元に戻る。
「アウィン.........あれは.........っ」
「.........すまんシャザ。夕飯.........もう食えなくなるわ。エール3杯は、来世でな」
そう言ってスッと右手を出す。
「レイピア.........渡してくれ」
「! 馬鹿!待て、我も.........」
「それはダメだ。ミル様どうすんだよ。罠なのは解ってる。婚姻宣誓証の破棄をさせられ、恐らく一生幽閉されるだろう。それで済むかは判らないけど.........だが、サラを冷たい岩の中に閉じ込めるなんて俺には.....出来ない。すまないなシャザ」
ガシッとレイピアを掴み再び風に姿を変える。
「アウィン!!」
「.........ありがとな」
風の父が言っていた。その者と添い遂げるのであれば.........
迷うな
隠すな
止まるな
隙間を見逃すな
俺は俺の妻への蛮行を.........指を咥えて見ていられる程強くも愚かでも無い。この想いに蓋をして保身に回れる程サラより自分が可愛い訳でも無い。偽ればそこで俺と言う風は止まるんだ。
風のままレイピアを操り、神の造りし結界に向かって数度振り切った。
キキキキ.........とガラスが割れて行く様な音に次いでパリーンッと一部結界が割れる。
その隙間からサラの側へ飛び、グルリとレイピアで皮を剥く様に鉱石を切り取り、彼女を空中へ浮かす。人型に戻ってサラを抱き締めた。風を使い身体に残った石をはたいていく。それはパラパラと地面に落ちて行った。
「サラ無事か?痛いとこ無いか?」
「ーーーうん。うん。平気。アウィン.....アウィン。私の神様.........こ、怖かったけど.........貴方がいたから.........信じてた」
「サラ.........ごめんな.........俺がお前を女神にしてしまった。俺がお前を諦めていればこんな事に巻き込まれ無かった。でも.........お前の夫になれて良かった。想いを遂げられて幸せだった。サラ.........どうかお前も幸せになってくれ。誰かに使役されるんじゃない、自分の意思で生きて行ける様に。.........強い女神に、なるんだぞ」
「.........アウィン?」
風の子は自由
縛られる事なく絡め獲れ
「.................ごめんサラ。一緒に逝けない。やっぱり.........」
俺の自由は.........
もう無いのかも知れない。
「ああ、そうだな。俺が血塗れになっちまった。こんな姿でサラは迎えに行けないな.........」
手元にヤマアラシのレイピアを風で回収し鞘に入れる。本当、これ凄いわ。これのお陰で早く決着付けられた。ガイザックをどうやって地面から離そうかそこが1番悩み処だったから。ヤマアラシに感謝しないと。
「なあ、シャザ。このレイピア見てくれないか?ヤマアラシが持ってたんだけど、これミル様の剣とかなり似てると思うんだ。多分ヤマアラシの親父が造ったと思うんだけど.........似過ぎだから借りて来たんだ」
そう言って鞘ごとシャザにレイピアを渡す。
「残り香みたいな剣って.........どう言う意味なんだろうな」
「.................本当だな。確かに.....そっくりだ。これは.........」
シャザは鞘から出した剣身をジッと確かめる様に見つめている。
俺がフイッとサラの居る方を見ると、そこには此方をジッと見つめる彼女の姿。でも顔が真っ赤だ。肩を揺らしてる。ありゃ大泣きしてるな.....
どうしよう。心配してるんだろうな。可愛い....俺のサラは可愛いな~。あれ?
「土の神が.........居ない」
「ん?まあ、もう土は残って無いのだから引き上げたのだろう」
「.........ああ」(そうだろうか?だと良いけど)
先に医務室に行くと伝えようとサラに呼び掛ける為、風を操り声を送ろうとした、その時。キャー!と言う悲鳴が空気を伝わり俺に届く。
「! 何だ?サラの声?」
「!」
俺はシュンッと風になり、一気にサラの元へ。だがそこは固い結界が張られていた。神々を囲う様な透明な壁状のそれに阻まれる。
「サ、サラ?サラ!」
脚元から飴色の鉱石に包まれていくサラの姿が見える。既に太腿まで覆われていた。
これは.........土の力?
「おい!結界を解いて.........下さい!サラが!」
バンバンと手で結界を叩く。この結界は神が造ったモノだ。俺が壊す訳には.........いかない!その内サラの腰から胸まで覆われていく。おい!なんとかしろよ!他の神は何してんだ!このままじゃ.........サラが鉱石の中に取り込まれる!
だが誰も立ち上がらない。
サラの周りの姫がワタワタしたり震えたりしている。サラは.........俺を見ていた。両手を胸に組み、その目には涙。でも歯を食いしばってる。
これは.........罠だ。
神族の俺が神の造りしモノを壊すなぞしてはならない。それは重い罰が与えられる。しかも神の目の前だ。言い逃れなぞ出来ない。
何だよ.........どうしろって言うんだ。婚姻を破棄すれば良いのか?その為に土の神の蛮行も見て見ぬ振りするのか?サラを俺から取り上げる為に?そしてサラを奪い合うのか?お前ら.........サラを何だと思ってるんだ!
ググッと拳に力を入れ結界を一度殴り付け、シャザの元に戻る。
「アウィン.........あれは.........っ」
「.........すまんシャザ。夕飯.........もう食えなくなるわ。エール3杯は、来世でな」
そう言ってスッと右手を出す。
「レイピア.........渡してくれ」
「! 馬鹿!待て、我も.........」
「それはダメだ。ミル様どうすんだよ。罠なのは解ってる。婚姻宣誓証の破棄をさせられ、恐らく一生幽閉されるだろう。それで済むかは判らないけど.........だが、サラを冷たい岩の中に閉じ込めるなんて俺には.....出来ない。すまないなシャザ」
ガシッとレイピアを掴み再び風に姿を変える。
「アウィン!!」
「.........ありがとな」
風の父が言っていた。その者と添い遂げるのであれば.........
迷うな
隠すな
止まるな
隙間を見逃すな
俺は俺の妻への蛮行を.........指を咥えて見ていられる程強くも愚かでも無い。この想いに蓋をして保身に回れる程サラより自分が可愛い訳でも無い。偽ればそこで俺と言う風は止まるんだ。
風のままレイピアを操り、神の造りし結界に向かって数度振り切った。
キキキキ.........とガラスが割れて行く様な音に次いでパリーンッと一部結界が割れる。
その隙間からサラの側へ飛び、グルリとレイピアで皮を剥く様に鉱石を切り取り、彼女を空中へ浮かす。人型に戻ってサラを抱き締めた。風を使い身体に残った石をはたいていく。それはパラパラと地面に落ちて行った。
「サラ無事か?痛いとこ無いか?」
「ーーーうん。うん。平気。アウィン.....アウィン。私の神様.........こ、怖かったけど.........貴方がいたから.........信じてた」
「サラ.........ごめんな.........俺がお前を女神にしてしまった。俺がお前を諦めていればこんな事に巻き込まれ無かった。でも.........お前の夫になれて良かった。想いを遂げられて幸せだった。サラ.........どうかお前も幸せになってくれ。誰かに使役されるんじゃない、自分の意思で生きて行ける様に。.........強い女神に、なるんだぞ」
「.........アウィン?」
風の子は自由
縛られる事なく絡め獲れ
「.................ごめんサラ。一緒に逝けない。やっぱり.........」
俺の自由は.........
もう無いのかも知れない。
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