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第五章 「勝者」と「陰謀」
89.カラーひよこじゃん!
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「サラ、あっちの方行こう」
俺は林を呼び指した。
「ん?」
「さっき鳥が居たんだ。呼んでやるよ」
「呼ぶ?鳥を?」
「ああ。天界には居ないのかと思ったけど小さいのが居るみたいだ。俺は風だからな。飛ぶ鳥は俺の支配下に入ってる」
「ふぁ?しはいか?.........ご主人様?」
「地上で空を飛びたければそうなるな。まあ、天界だから風の父の眷族だろう」
俺はサラの手を引き林に向かって歩き出す。カリカリと飴の部分を食べながら歩くサラ。.........もしかして中のリンゴは食べられないと思ってるのかな?
天界に生える木は一見普通の広葉樹の様だが切ってみると年輪が無い。中は硬くて白い。質感はツルツルだ。水を吸い上げる事も無く枝を切って地に植えるだけでも生えて来るらしい。泉で野宿した時の木とは少し太さは違うが同じ木だ。
スッとその木の上を見る。微かに不自然にパタ、パサッと葉が擦れる音がする。
「居るな。サラ見とけよ?」
「うん」
『小さな眷族共よ。こちらに来て我の前に姿を見せよ』
発した声を風に乗せて林の中に行き渡す。暫くして風が止み、一瞬の静寂の後、彼方此方から小さな羽根をパタつかせ水色と黄色と黄緑色のヒヨコみたいなやつが100羽程ドバーッと飛んで降りて来た。
「にゃーーーーーーーー!!」
「やっぱり居たな。.........ひよこ.........じゃ無いよな?何だろ?羽ちっちゃいな」
天界の鳥だ。見た事無い色.........いや.........これは.........
「アウィン~!」
「ん?」
「ひよこ~!」
「うん、似てるな。でも飛んでるよ。地上のとは違うみたいだな」
「あ!アウィン!あれ!」
「ん?」
「ピンクのひよこが居るよ?」
.........やっぱり「カラーひよこ」じゃん!
ピイヨピイヨと鳴きながら地面をテテテと歩いて来る姿は完全にひよこだ。ふわふわだ。でもカラーひよこだ。その中でピンク色をしたひよこがよちよち近づいて来る。他にピンクは居ないみたいだ。
『初めまして、風の眷族よ。名前は?』
『お初にお目に掛かる。風のお方よ。ピイヨ。我の名はカインガンドル。ピイヨ。この群れを率いるモノなり。ピイヨピイヨ』
.........えらく豪胆な名前だった。話し言葉もめちゃめちゃ堅い。だが姿はひよこだ。超ミスマッチ.........しかもピンクだ。たまにピイヨと鳴き声が入るのは仕様か?サラの周りに何故か集まって行くひよこ達を横目に俺はピンクと話しを続ける、
『カインガンドルか。俺はアウィンだ、宜しくな。彼女は妻のサラと言う。少し相手になってくれ。天界の鳥は初めて見るんだ』
『ウィンドルザーク様の末裔であられるか。ピイヨ。ん?な、なんと奥方は女神であられるか!ピイヨピイヨ!なんとお美しい!口のは紅であるか?ピイヨ』
『ふ、ふふふ。いや、飴の色が口に着いてるだけだ。食べた事が無いからな。後で取るから気にするな。ところで天界には他にどんな種類の鳥が居るんだ?」
『風の眷族は後2種類だけでありますピイヨ』
『2種類?そうなのか。どんな奴らなんだ?』
『ドードーと翼竜でありますよ。地上が棲みにくいらしく戻って来たらしいですがピイヨピイヨ。身体が大きいので邪魔な奴らでありますな』
『ふーん。.........でお前達は何だ?』
『我々は鳥の祖先「びよこ」ですピイヨ』
『び?.........ほう.........卵が先じゃ無いんだな』
『ぶわっはっはっは!ピイヨピイヨ!面白い事をおっしゃる!』
「.................まだまだ世界は謎だらけか」
ふっとサラに目をやると
「........あ.........」
リンゴをびよこに食われてた。
ツンツンと肩やら腕やらに乗っているカラーびよこ達に突かれている。天界のひよこもリンゴ食うんだ.........いや、それより.........あーあ。サラが涙目だ。あの様子じゃぁ最後に残してたのかな.........リンゴ。
「サラ、後でまた買ってやるから」
「.........大丈夫。ひよこ可愛いから許せる」
「ぷ...そうか.........後、一旦コロシアムに戻ろうか。是非鏡を見せてやりたい」
「ん?」
*
暫くびよこ達と戯れた後、別れを告げてから飛んでコロシアムに戻る。
俺は無言でハンカチを渡してニッコリ笑いながら化粧室へサラを送り出した。
「キャーーーーーーーーーーー!!?」
化粧室から悲鳴が聞こえて来る。サラの声だな。
「ぶははははははっ!」
全く、女神になってもボヤんなのは変わらんな。口周りも赤いけど飴ばっか食ってたからきっと口の中も真っ赤だろう。
クククと笑いながら闘技場の様子をチラリと見る。
「.........ふん。土、残ったな。仕方が無い。シャザもか。うーん.........どうするかな.........」
シャザは俺の試合の後直ぐに2回戦の試合だった。そしてアッサリと闇を斬り伏せて勝ちやがった。
土も始めは苦戦していたが最後に地中にバッファローを引き摺り込んで勝利。後の試合はまだ続いてる。長引けば第3試合は明日に繰り越しになるけど、まあ、どちらでも構わない。
そんな事を考えながら試合を眺めていたら、バタンッと扉の開く音と同時にサラがパタパタ走って来た。そして俺の胸を真っ赤な顔でポカポカ叩いて来た。怒っているみたいだな。
やっぱり教えてやれば良かったかな?
ふふっ。だってなんか可愛くて、つい。
俺は林を呼び指した。
「ん?」
「さっき鳥が居たんだ。呼んでやるよ」
「呼ぶ?鳥を?」
「ああ。天界には居ないのかと思ったけど小さいのが居るみたいだ。俺は風だからな。飛ぶ鳥は俺の支配下に入ってる」
「ふぁ?しはいか?.........ご主人様?」
「地上で空を飛びたければそうなるな。まあ、天界だから風の父の眷族だろう」
俺はサラの手を引き林に向かって歩き出す。カリカリと飴の部分を食べながら歩くサラ。.........もしかして中のリンゴは食べられないと思ってるのかな?
天界に生える木は一見普通の広葉樹の様だが切ってみると年輪が無い。中は硬くて白い。質感はツルツルだ。水を吸い上げる事も無く枝を切って地に植えるだけでも生えて来るらしい。泉で野宿した時の木とは少し太さは違うが同じ木だ。
スッとその木の上を見る。微かに不自然にパタ、パサッと葉が擦れる音がする。
「居るな。サラ見とけよ?」
「うん」
『小さな眷族共よ。こちらに来て我の前に姿を見せよ』
発した声を風に乗せて林の中に行き渡す。暫くして風が止み、一瞬の静寂の後、彼方此方から小さな羽根をパタつかせ水色と黄色と黄緑色のヒヨコみたいなやつが100羽程ドバーッと飛んで降りて来た。
「にゃーーーーーーーー!!」
「やっぱり居たな。.........ひよこ.........じゃ無いよな?何だろ?羽ちっちゃいな」
天界の鳥だ。見た事無い色.........いや.........これは.........
「アウィン~!」
「ん?」
「ひよこ~!」
「うん、似てるな。でも飛んでるよ。地上のとは違うみたいだな」
「あ!アウィン!あれ!」
「ん?」
「ピンクのひよこが居るよ?」
.........やっぱり「カラーひよこ」じゃん!
ピイヨピイヨと鳴きながら地面をテテテと歩いて来る姿は完全にひよこだ。ふわふわだ。でもカラーひよこだ。その中でピンク色をしたひよこがよちよち近づいて来る。他にピンクは居ないみたいだ。
『初めまして、風の眷族よ。名前は?』
『お初にお目に掛かる。風のお方よ。ピイヨ。我の名はカインガンドル。ピイヨ。この群れを率いるモノなり。ピイヨピイヨ』
.........えらく豪胆な名前だった。話し言葉もめちゃめちゃ堅い。だが姿はひよこだ。超ミスマッチ.........しかもピンクだ。たまにピイヨと鳴き声が入るのは仕様か?サラの周りに何故か集まって行くひよこ達を横目に俺はピンクと話しを続ける、
『カインガンドルか。俺はアウィンだ、宜しくな。彼女は妻のサラと言う。少し相手になってくれ。天界の鳥は初めて見るんだ』
『ウィンドルザーク様の末裔であられるか。ピイヨ。ん?な、なんと奥方は女神であられるか!ピイヨピイヨ!なんとお美しい!口のは紅であるか?ピイヨ』
『ふ、ふふふ。いや、飴の色が口に着いてるだけだ。食べた事が無いからな。後で取るから気にするな。ところで天界には他にどんな種類の鳥が居るんだ?」
『風の眷族は後2種類だけでありますピイヨ』
『2種類?そうなのか。どんな奴らなんだ?』
『ドードーと翼竜でありますよ。地上が棲みにくいらしく戻って来たらしいですがピイヨピイヨ。身体が大きいので邪魔な奴らでありますな』
『ふーん。.........でお前達は何だ?』
『我々は鳥の祖先「びよこ」ですピイヨ』
『び?.........ほう.........卵が先じゃ無いんだな』
『ぶわっはっはっは!ピイヨピイヨ!面白い事をおっしゃる!』
「.................まだまだ世界は謎だらけか」
ふっとサラに目をやると
「........あ.........」
リンゴをびよこに食われてた。
ツンツンと肩やら腕やらに乗っているカラーびよこ達に突かれている。天界のひよこもリンゴ食うんだ.........いや、それより.........あーあ。サラが涙目だ。あの様子じゃぁ最後に残してたのかな.........リンゴ。
「サラ、後でまた買ってやるから」
「.........大丈夫。ひよこ可愛いから許せる」
「ぷ...そうか.........後、一旦コロシアムに戻ろうか。是非鏡を見せてやりたい」
「ん?」
*
暫くびよこ達と戯れた後、別れを告げてから飛んでコロシアムに戻る。
俺は無言でハンカチを渡してニッコリ笑いながら化粧室へサラを送り出した。
「キャーーーーーーーーーーー!!?」
化粧室から悲鳴が聞こえて来る。サラの声だな。
「ぶははははははっ!」
全く、女神になってもボヤんなのは変わらんな。口周りも赤いけど飴ばっか食ってたからきっと口の中も真っ赤だろう。
クククと笑いながら闘技場の様子をチラリと見る。
「.........ふん。土、残ったな。仕方が無い。シャザもか。うーん.........どうするかな.........」
シャザは俺の試合の後直ぐに2回戦の試合だった。そしてアッサリと闇を斬り伏せて勝ちやがった。
土も始めは苦戦していたが最後に地中にバッファローを引き摺り込んで勝利。後の試合はまだ続いてる。長引けば第3試合は明日に繰り越しになるけど、まあ、どちらでも構わない。
そんな事を考えながら試合を眺めていたら、バタンッと扉の開く音と同時にサラがパタパタ走って来た。そして俺の胸を真っ赤な顔でポカポカ叩いて来た。怒っているみたいだな。
やっぱり教えてやれば良かったかな?
ふふっ。だってなんか可愛くて、つい。
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