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第四章 「後悔」と「過去世」
78.なんの分析してんの?
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2人の.........二匹のバーサーカーが睨み合う。
なんか結局獣人の戦いってパワーファイトっぽくなるんだな。
同時に地を蹴ってぶつかり合うミル様と"ハーレム"皇子。長剣とレイピアではミル様の方が分が悪いが、レイピアとは本来刺し貫く剣だ。
真っ直ぐな造りをした刃渡りは100センチ程。刃の幅も狭い、つまり細身の長剣だ。相手の剣を真っ向から受ければ折れるか曲がる。後、物によるが決して軽くは無い。柄の部分を重心とする為だ。
相手の攻撃を擦り払いながら隙を見て突く、それがこの剣を持つ者の剣技になる。
擦り払うのは割と難しい。切り掛けて来る攻撃に瞬時に合わせて軌道を変えるなぞ中々出来はしないのだ。
「.........シャザは何でショテル(湾刀)にしたんだ?家宝だからか?それともレイピアより軽いからか?」
「そうだ。我はスピードを活かした攻撃スタイルだからな。獲物に振り回されるのは御免だ」
「始めから相手の攻撃は受けるつもりは無いって事か。ふふ、突き抜けたな」
「それに頂いたこの剣は美しいがそれだけでは無い。実は獣人神の爪と牙で出来ているんだ」
「.........また、奇怪な神器だな、おい!」
「神の身体の一部だ。普通の者には折れはせぬよ」
「成る程。じゃあ、ミル様のレイピアもそうなのか?」
「どうだろう?聞いた事は無いな。あまり剣に付いては話をされないから。だが、おそらく獣人神から賜った物ではなさそうだ」
「.........ふぅん?姫なのにな。まあ、姫には剣なんてやらないか」
「.................」
シャザは少し考え込む様にジッとミル様を見ていたがやがてポツリポツリと呟いた。
「.................いや、あれは.........誰かに頂いた様だ。以前.........「二度と手に入らない残り香みたいな美しい剣」だと言っていた。比喩にしては妙な言い方だなと思っていたが.........成る程。誰かの遺物なのかも知れん」
「遺物?誰か死んだのかな?親、は居るし弟妹か?」
「だったら話にするくらいはなさるだろう?多分もっと触れてはいけない存在では無いかと思う」
「.........」
シャザの推測からすると、過去の恋人.........になっちまうけどな。28なんだし、そりゃ居るだろうさ。魅力的な女だしな。こんな世界に生きてりゃ死に別れた可能性だってある。
まあ、過去を変える事は出来はしないんだ。.........例え神であったとしてもな。俺の過去世が良い例だ。
そして、選択を間違えてしまった時、『後悔』しかない未来が待っている。
やっぱり過去世の所為かな。
俺がこんなに慎重になったのは。「風」とは程遠い性質だもんな。だが、風だってな、頬を撫でる様に吹く時もある。俺はサラにはそうで有りたい。彼女をもう傷つけない。
細い肩を震わせて涙を零すあの.........辛そうなルナの姿.........目に焼きついて離れないんだよ。
本当、ランドールのクソ馬鹿野郎。お前ルナを裏切った後.........どうしたんだよ?
******
打ち合う剣のスピードが上がる。火花が飛び散る中、ハーレム皇子が先に動いた。
後ろに飛び退きすぐ様右手に持つ長剣を振り下ろす。ミル様は左側面に刃を当て擦らした、がそこを狙われた。皇子の左腕でミル様の右肩を掴まれたのだ。
皇子は獅子の姿のままのバーサーカー状態だ。ザクンとデカくて黒い爪が彼女の肩に食い込んだ。
「っ!」
「グルルル.........漸く.........捕まえた.........」
「.........どうかしら.......」
グンッと掴まれた右肩を右側に逸らしスラリと身体の隙間から左脚の足裏を皇子の美しい甲冑の腹部分にビタリと着ける。
「私の脚と貴方の腕、どちらが強いかしら?試してみましょうよ」
ギチッと食い込んだ爪の先から赤い血が滴り落ちている。シャザがソワソワし始めた。
「脚グセが悪いお姫様だ。こんなおてんばでダンスは踊れるのですか?」
「あら、じゃあ、今踊りましょう?ちょっと激しいけど、着いて来てね?」
ミル様と皇子は剣を合わせたままググッと身体に力を溜め次の攻撃に備える。ミル様の肩からブシュッと血が吹き出た瞬間、身体をくの字にして捻りながら皇子の腹を力一杯蹴り上げた。
その脚は.........カンガルーの脚。
空中でクルリと一回転して着地するミル様。だが、やはり肩は引き裂かれていた。赤い血が彼女の脚にまで流れている。
そして皇子は.....闘技場の端まで吹っ飛ばされたが、何とか意識は有る。弱々しくも片膝を立て起き上がった。甲冑も着てるし片脚では威力が足りなかったか。いや、だが選択は良かった。カンガルーの脚力は半端無い。蹴られたら人間なんて内臓破裂で即死も有り得る。
「ミル姫.........」
シャザがポツリと呟く。そうだよな。好きな女が目の前で傷付いてたら.........堪らんよな。
「なんだか今日は動きが鈍いな.........。やはり.........女性の日?」
俺はクタリと力が抜けた。
お前.........なんの分析してんの?怪我の心配してやれよ!
なんか結局獣人の戦いってパワーファイトっぽくなるんだな。
同時に地を蹴ってぶつかり合うミル様と"ハーレム"皇子。長剣とレイピアではミル様の方が分が悪いが、レイピアとは本来刺し貫く剣だ。
真っ直ぐな造りをした刃渡りは100センチ程。刃の幅も狭い、つまり細身の長剣だ。相手の剣を真っ向から受ければ折れるか曲がる。後、物によるが決して軽くは無い。柄の部分を重心とする為だ。
相手の攻撃を擦り払いながら隙を見て突く、それがこの剣を持つ者の剣技になる。
擦り払うのは割と難しい。切り掛けて来る攻撃に瞬時に合わせて軌道を変えるなぞ中々出来はしないのだ。
「.........シャザは何でショテル(湾刀)にしたんだ?家宝だからか?それともレイピアより軽いからか?」
「そうだ。我はスピードを活かした攻撃スタイルだからな。獲物に振り回されるのは御免だ」
「始めから相手の攻撃は受けるつもりは無いって事か。ふふ、突き抜けたな」
「それに頂いたこの剣は美しいがそれだけでは無い。実は獣人神の爪と牙で出来ているんだ」
「.........また、奇怪な神器だな、おい!」
「神の身体の一部だ。普通の者には折れはせぬよ」
「成る程。じゃあ、ミル様のレイピアもそうなのか?」
「どうだろう?聞いた事は無いな。あまり剣に付いては話をされないから。だが、おそらく獣人神から賜った物ではなさそうだ」
「.........ふぅん?姫なのにな。まあ、姫には剣なんてやらないか」
「.................」
シャザは少し考え込む様にジッとミル様を見ていたがやがてポツリポツリと呟いた。
「.................いや、あれは.........誰かに頂いた様だ。以前.........「二度と手に入らない残り香みたいな美しい剣」だと言っていた。比喩にしては妙な言い方だなと思っていたが.........成る程。誰かの遺物なのかも知れん」
「遺物?誰か死んだのかな?親、は居るし弟妹か?」
「だったら話にするくらいはなさるだろう?多分もっと触れてはいけない存在では無いかと思う」
「.........」
シャザの推測からすると、過去の恋人.........になっちまうけどな。28なんだし、そりゃ居るだろうさ。魅力的な女だしな。こんな世界に生きてりゃ死に別れた可能性だってある。
まあ、過去を変える事は出来はしないんだ。.........例え神であったとしてもな。俺の過去世が良い例だ。
そして、選択を間違えてしまった時、『後悔』しかない未来が待っている。
やっぱり過去世の所為かな。
俺がこんなに慎重になったのは。「風」とは程遠い性質だもんな。だが、風だってな、頬を撫でる様に吹く時もある。俺はサラにはそうで有りたい。彼女をもう傷つけない。
細い肩を震わせて涙を零すあの.........辛そうなルナの姿.........目に焼きついて離れないんだよ。
本当、ランドールのクソ馬鹿野郎。お前ルナを裏切った後.........どうしたんだよ?
******
打ち合う剣のスピードが上がる。火花が飛び散る中、ハーレム皇子が先に動いた。
後ろに飛び退きすぐ様右手に持つ長剣を振り下ろす。ミル様は左側面に刃を当て擦らした、がそこを狙われた。皇子の左腕でミル様の右肩を掴まれたのだ。
皇子は獅子の姿のままのバーサーカー状態だ。ザクンとデカくて黒い爪が彼女の肩に食い込んだ。
「っ!」
「グルルル.........漸く.........捕まえた.........」
「.........どうかしら.......」
グンッと掴まれた右肩を右側に逸らしスラリと身体の隙間から左脚の足裏を皇子の美しい甲冑の腹部分にビタリと着ける。
「私の脚と貴方の腕、どちらが強いかしら?試してみましょうよ」
ギチッと食い込んだ爪の先から赤い血が滴り落ちている。シャザがソワソワし始めた。
「脚グセが悪いお姫様だ。こんなおてんばでダンスは踊れるのですか?」
「あら、じゃあ、今踊りましょう?ちょっと激しいけど、着いて来てね?」
ミル様と皇子は剣を合わせたままググッと身体に力を溜め次の攻撃に備える。ミル様の肩からブシュッと血が吹き出た瞬間、身体をくの字にして捻りながら皇子の腹を力一杯蹴り上げた。
その脚は.........カンガルーの脚。
空中でクルリと一回転して着地するミル様。だが、やはり肩は引き裂かれていた。赤い血が彼女の脚にまで流れている。
そして皇子は.....闘技場の端まで吹っ飛ばされたが、何とか意識は有る。弱々しくも片膝を立て起き上がった。甲冑も着てるし片脚では威力が足りなかったか。いや、だが選択は良かった。カンガルーの脚力は半端無い。蹴られたら人間なんて内臓破裂で即死も有り得る。
「ミル姫.........」
シャザがポツリと呟く。そうだよな。好きな女が目の前で傷付いてたら.........堪らんよな。
「なんだか今日は動きが鈍いな.........。やはり.........女性の日?」
俺はクタリと力が抜けた。
お前.........なんの分析してんの?怪我の心配してやれよ!
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