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第四章 「後悔」と「過去世」
69.綺麗だろ?
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「え?何?」
俺はそっとサラの額に掛かる髪を除ける。何だこれ?これも女神だから?輪?花か?月の光は.........関係無さそうだけど。
「.........ん.........ぅ」
「.........サラ」
「うん.........はい。アウィン」
「.................おはよう。サラ。起きれるか?」
「うん.........。アウィン。ギュッてして?」
「.........ああ。サラ、今日は個人戦だから」
ギュッと抱き締める。
「うん。行くよ。獣人神様のとこ楽しいんだけど、姫さま達凄い見て来るからちょっと怖い。や、優しいんだけどね?」
「そうか。昼には一度迎えに行くよ。まあ、女神に危害を加えるなんて神の前で出来はしない。まだちゃんと完全な覚醒じゃないかも知れないけど.........ちょっとずつ変化してるし。額の.........模様とか.........」
「模様?額?」
「.........何か浮き出てる。ピンク色に」
「.................痛くはないよ」
額を摩るサラ。
「やっぱり最終的に尻尾とか耳生えて来るかもな」
「! アウィン~~!」
「尻.....うん、まだ生えてないな」
サラの尻を撫で回す。昨日のまま全裸だ。
「にゃーーーー!」
「ははははっ。まあ、冗談はともかくとして、何の模様か俺には判らないんだけど暫くは前髪で隠すか.........あ!そうだ!忘れてた!」
俺はガバッと起き上がりリュックに歩み寄った。中に手を入れ巾着を探す。何かバタバタしてすっかり存在を忘れてた。一番底にあるそれを見つける。
「商会に寄った時についでに頼んでたのが入ってるの聞いて手に入れといたんだ」
「何を?」
「ラッセルレースと刺繍だよ」
「ラッセルレース?」
「縦に糸を編んで作ったレースだ。ドレスに使われたり、ベールに使ったりする。小さいけど良い工房と契約出来てな、試作品を幾つか見せて貰ってて、出来も良かったから早速サラに何か作らせようと思って。頼んどいたんだ。帽子に付けたり、エプロンとか、袖につけても綺麗かなってな。塗料を柄の上に筆で手作業で塗ってるんだ」
俺は何本かあるレースを比べて柔らかい大柄の太いレースを選んだ。
「これ額に巻いておこうか。綺麗で珍しい柄だし。色も派手じゃない」
「.........うん。綺麗だね。優しい春の色。私に?高いよね?」
「サラってば。おバカだな」
「うーーーーっ」
「その工房と契約したのは全てサラの物を作らせる為だよ。余ったら流すけど。基本彼らはせっせとサラの為にレースや刺繍を手掛ける。専属の工房だ」
「え"?」
「何?」
「.........それ、普通?」
「普通」
「嘘」
「貴族なら普通だよ」
「知らなかった.........」
「後は被服関係もそうだけど装飾や靴なんかも専属の工房と契約しようとは思う。これはサラの意見も必要だから追々な」
「い、要らないよ」
「要るだろ」
「靴なんて半年に一回直しに出すくらいだよ?」
「一月に5足くらいは新しく要るだろ!」
「わーん!アウィンと金銭感覚が違い過ぎる!」
「慣れろ!貴族子女だろ?いや、分かった。俺が勝手にやる。金は使わないと回らないんだよ。そして俺はお前を着飾らせたい!」
「ふぇーーーー!全然平凡じゃ無い!!」
****
食堂に降りると何やらザワザワしている。一早くトーナメント表を確認しに行った者が騒いでいるようだ。
シャザが居た。本当いつもちゃんと居るよな。今日も胸までの紅い甲冑を着けている。奴は夜はエールを飲んだりするが基本水。そして肉。獣人神の領域では共食いは出来ないので鶏肉のみだ。獣人に鳥は居ない。風の眷属ではあるが神族では無い。食材は地上に居るバイヤーと取引するか天界で養殖、栽培するからしい。昨日の話ではかなりミル様はこだわってらっしゃるようだ。
「おはようシャザ。トーナメント表見たか?」
「いや、だが、騒いでる奴らの話は聞こえて来るから。今日の個人戦は第1と第2試合だ」
「そうか。俺達も朝飯食ったら見に行くよ」
「ああ。俺はいい。集合時間30分前までに会場に行く。少し用事が有る」
「そうか。分かった」
「ん?奥方の額の.........美しいな。レースか?」
「ああ。綺麗だろ?細かくて繊細だけど大胆な柄だし配色のセンスも良い。気に入ってる工房でサラに作らせたんだ」
「ふふ。アウィンは奥方が大事なんだな。気づかなかったよ」
「サラの事は話した事は無かったな。他の奴に興味を持たれると嫌だから」
「.................徹底してるな」
「俺の慎重さには自分でもビックリしてるよ」
「はははははっ!自分で言うか?」
「先々を考えるのは商売人の性だ。良い事だろうが悪い事だろうが.........目的の為には策を考じるのさ。まあ、俺は割と素直な方だよ。ふふ」
「違うだろ?もっと単純さ。これは執着って言うんだ。嫉妬にまみれた醜い男の支配欲さ。指輪だってそうだ。わざわざ自分の目の色を着けさせる。人間らしいな、アウィン」
「ちっ。.........否定はしないさ。だが人間じゃなくても嫉妬や支配欲は有るだろ?例えば.........神とかな」
「ん?」
「いや、何でもない」
ランドールはルナに自身の目の色のピアスを贈っている。ルナに対して支配欲.........有ったのにな。てか、獣だってハーレム作るじゃねーか!俺は真面だ!
俺はそっとサラの額に掛かる髪を除ける。何だこれ?これも女神だから?輪?花か?月の光は.........関係無さそうだけど。
「.........ん.........ぅ」
「.........サラ」
「うん.........はい。アウィン」
「.................おはよう。サラ。起きれるか?」
「うん.........。アウィン。ギュッてして?」
「.........ああ。サラ、今日は個人戦だから」
ギュッと抱き締める。
「うん。行くよ。獣人神様のとこ楽しいんだけど、姫さま達凄い見て来るからちょっと怖い。や、優しいんだけどね?」
「そうか。昼には一度迎えに行くよ。まあ、女神に危害を加えるなんて神の前で出来はしない。まだちゃんと完全な覚醒じゃないかも知れないけど.........ちょっとずつ変化してるし。額の.........模様とか.........」
「模様?額?」
「.........何か浮き出てる。ピンク色に」
「.................痛くはないよ」
額を摩るサラ。
「やっぱり最終的に尻尾とか耳生えて来るかもな」
「! アウィン~~!」
「尻.....うん、まだ生えてないな」
サラの尻を撫で回す。昨日のまま全裸だ。
「にゃーーーー!」
「ははははっ。まあ、冗談はともかくとして、何の模様か俺には判らないんだけど暫くは前髪で隠すか.........あ!そうだ!忘れてた!」
俺はガバッと起き上がりリュックに歩み寄った。中に手を入れ巾着を探す。何かバタバタしてすっかり存在を忘れてた。一番底にあるそれを見つける。
「商会に寄った時についでに頼んでたのが入ってるの聞いて手に入れといたんだ」
「何を?」
「ラッセルレースと刺繍だよ」
「ラッセルレース?」
「縦に糸を編んで作ったレースだ。ドレスに使われたり、ベールに使ったりする。小さいけど良い工房と契約出来てな、試作品を幾つか見せて貰ってて、出来も良かったから早速サラに何か作らせようと思って。頼んどいたんだ。帽子に付けたり、エプロンとか、袖につけても綺麗かなってな。塗料を柄の上に筆で手作業で塗ってるんだ」
俺は何本かあるレースを比べて柔らかい大柄の太いレースを選んだ。
「これ額に巻いておこうか。綺麗で珍しい柄だし。色も派手じゃない」
「.........うん。綺麗だね。優しい春の色。私に?高いよね?」
「サラってば。おバカだな」
「うーーーーっ」
「その工房と契約したのは全てサラの物を作らせる為だよ。余ったら流すけど。基本彼らはせっせとサラの為にレースや刺繍を手掛ける。専属の工房だ」
「え"?」
「何?」
「.........それ、普通?」
「普通」
「嘘」
「貴族なら普通だよ」
「知らなかった.........」
「後は被服関係もそうだけど装飾や靴なんかも専属の工房と契約しようとは思う。これはサラの意見も必要だから追々な」
「い、要らないよ」
「要るだろ」
「靴なんて半年に一回直しに出すくらいだよ?」
「一月に5足くらいは新しく要るだろ!」
「わーん!アウィンと金銭感覚が違い過ぎる!」
「慣れろ!貴族子女だろ?いや、分かった。俺が勝手にやる。金は使わないと回らないんだよ。そして俺はお前を着飾らせたい!」
「ふぇーーーー!全然平凡じゃ無い!!」
****
食堂に降りると何やらザワザワしている。一早くトーナメント表を確認しに行った者が騒いでいるようだ。
シャザが居た。本当いつもちゃんと居るよな。今日も胸までの紅い甲冑を着けている。奴は夜はエールを飲んだりするが基本水。そして肉。獣人神の領域では共食いは出来ないので鶏肉のみだ。獣人に鳥は居ない。風の眷属ではあるが神族では無い。食材は地上に居るバイヤーと取引するか天界で養殖、栽培するからしい。昨日の話ではかなりミル様はこだわってらっしゃるようだ。
「おはようシャザ。トーナメント表見たか?」
「いや、だが、騒いでる奴らの話は聞こえて来るから。今日の個人戦は第1と第2試合だ」
「そうか。俺達も朝飯食ったら見に行くよ」
「ああ。俺はいい。集合時間30分前までに会場に行く。少し用事が有る」
「そうか。分かった」
「ん?奥方の額の.........美しいな。レースか?」
「ああ。綺麗だろ?細かくて繊細だけど大胆な柄だし配色のセンスも良い。気に入ってる工房でサラに作らせたんだ」
「ふふ。アウィンは奥方が大事なんだな。気づかなかったよ」
「サラの事は話した事は無かったな。他の奴に興味を持たれると嫌だから」
「.................徹底してるな」
「俺の慎重さには自分でもビックリしてるよ」
「はははははっ!自分で言うか?」
「先々を考えるのは商売人の性だ。良い事だろうが悪い事だろうが.........目的の為には策を考じるのさ。まあ、俺は割と素直な方だよ。ふふ」
「違うだろ?もっと単純さ。これは執着って言うんだ。嫉妬にまみれた醜い男の支配欲さ。指輪だってそうだ。わざわざ自分の目の色を着けさせる。人間らしいな、アウィン」
「ちっ。.........否定はしないさ。だが人間じゃなくても嫉妬や支配欲は有るだろ?例えば.........神とかな」
「ん?」
「いや、何でもない」
ランドールはルナに自身の目の色のピアスを贈っている。ルナに対して支配欲.........有ったのにな。てか、獣だってハーレム作るじゃねーか!俺は真面だ!
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