風神アウィンの受難〜全属性神族の番になれる愛妻は女神らしい。いや、俺のだからな?〜

第三章 「獣人」と「覚醒」

51.お盛んだな！

　俺達は謁見の間から出る。パタンと扉が閉められる。


「「「.................」」」


　シャザが罰が悪そうに頭を掻きながら俺に向き言う。
「ふぅ。なんか.........すまんアウィン。普段はもっと慎重な方なのだが.........。えらく今日は機嫌が良いと言うか.........。『勝ち抜き』は割と獣人達が頻繁に行う力試しだ。それこそふた月に1回くらいはやってるんだがな。獣人神が直々になんて...この3年無かったのに.....」

「.........いや、完全に楽しそうにしてたから」
「.......全属性の番...って言ってたか？」
「..................ああ」
「既に婚姻してるんだろ？」
「ああ」
「.........この微かに匂う甘い香り。そうか.........」
「《リンミン》が有れば防げる。だが、採取には許可がいるだろ？俺達はその為に天界に来たんだよ。サラは既に狙われている。下手したら命の危険もある。女神への覚醒はどうにもならんが神族に無駄に追われる事は防げると思ってな。簡単には.........行かなかったけどな。仕方が無い、こうなったらやるしか無い」


　何とかするしかないか。
　サラがキュッと俺の腕にしがみ付く。ポンポンと頭を優しく叩く。まあ、五分五分だったしな。何も無い方が可笑しいか。サラの為だ。仕方ない。やらない選択は無い。


「取り敢えず、明日の昼まで時間が有るな。シャザ、時間有るか？」
「ああ。我は衛兵の任には着いていないんだ。来賓扱いなんでな」
「なんで？」
「訳有って」
「.........そうか」
「.........ふふ。相変わらずだな、アウィン。お前は気持ち良い奴だな」
「お前が言わないのはそう言う内容だからだろ？じゃあ、言う必要無いんだろう」
「ふふ。今はな。さて、どうする？取り敢えず飯でも食いに行くか？獣人神が触れを出すと言う事は大々的に募ると言う事だ。それこそ.........天界中に、な。猛者が集まるぞ？」
「最悪だな。シャザ。その『勝ち抜き』ってやつの事もう少し詳しく教えてくれ。サラも疲れただろう？てか、宿なんて有るのか？」

　俺はサラの身体を再び横抱きにして歩き出した。

「有る。この獣人神の領域は兎に角神族が数が多く訪れる。神が獣人の精霊にやらせている宿が有るんだ。我も初めは暫くそこに泊まっていた」
「明日の昼までは待機だもんな。すまんが案内頼む。飯はまあ、神力だろ？」
「いや、それがな。違うんだよ。獣人神の58番目娘、つまり姫が作らせてるちゃんとした料理なんだ。姫は強い上に食に対する探究心が凄いらしくてな。宿の食堂を任されているんだ。.........しかも美しいぞ？」
「美しい？人間寄り？獣人寄り？」
「.........人間寄りだ。」
「へぇ.........獣人神はお盛んだな。58番目の姫ね」
「相手は腐る程居る。アレだけで無く、尻尾とかでも........爪も形を変えられるそうだ。.......舌が...........もの凄いらしいぞ？」
「あー舌ね。長そうだもんな。...........尻尾.....爪まで...........えらい事になりそうだな。入るのか？穴と言う穴塞がれそうだな。ガイザックとか喜びそう」


「「ぶっ！ふはははははは！！」」


　男達の下世話な会話に黙って聞いているサラ。解るかな？いや、解らんか。俺しか経験無いもんな。しかもまだまだノーマルだ。いや、アブノーマルまでするつもりは今の所無い。今の所は.........。今は.........まだ。なんて、な。

　チラリとサラの顔を見る。ん？サラは.........また眠そうにしている。


「サラ。寝てて良いぞ。着いたら起こすから」
「アウィン.........ごめんなさい。何だか凄く.........眠い。こんな.........と...きに........」

　そう言いながら俺の肩に顔を擦り付け目を閉じた。スースーと寝息が聞こえ出す。

「........」
　女神って神力どう補給してるんだろう？『加護』が判ればその神の処に連れて行けるのにな.........。ん？女神だから補充しなくて良いのか.........？神だもんな。分からん。

　俺達は街の中にある宿屋に向かう。シャザは神殿の客室を一室借りているらしい。しかし、なんでだろうな。重要な役割でも担っているのか.........。



　そうして、辿り着いた宿屋はそれはもう.........豪華？で、デカかった。