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第二章 「天界」と「女神」

45. もう、何この子?(挿絵有り)

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 焚き火の前の丸太にサラを座らせ、コップにお茶を入れた。

「サラは薄めな。寝られなくなる。ミルクは無いが砂糖入れるか?あ、蜂蜜にしようか?」
「このままで大丈夫だよ。ありがとうアウィン」
「やっぱりいつものアウィンじゃ無いね。他人に気を使うなんて。別人を見ている様だよ」
「基本無口だしな」
「え?アウィンが無口?まさか、ふふ」
「.................」
「周りの事なんてどうでも良いって顔をいつもしていたよ?5年前に我々は天界の継承の儀で会ったんだけど、その後、地上で各属性の交友の有る神族に挨拶しに回るんだ。私やゾーイはアウィンと歳が近いから割と近くに行くと寄ったりするんだよ。神族同士のいさかいは禁止だしね。よっぽどの理由が無ければ.........」
「今回は仕方がない。妻を襲ったんだから。ちゃんと理由は有る。サラの腕に傷を付けて変な種まで埋め込んだんだ。制裁は必要だろ?また狙われたら面倒だからな」
「まあ、コロモッコの土は旺盛だよな。俺らより5つほど上だったか。子供ぽこぽこ出来てたし。羨ましい限りだ」
「本当、相手から言って貰わないといけないなんて無茶で面倒臭いよね。天界なら制約必要ないから楽だけど。地上では遊びみたいに思われちゃうし」
「それでもやる事はやってるんだろ?水の噂は良く聞くぞ?」
「そう?まあ、それなりだよ。でも結局皆んな言葉を欲しがるんだ。愛の言葉って大事だね」

 それを黙って聞いていたサラが
「.........アウィン」不意に俺を見る。

「ん?」
「好き」
「ぶはっ」
 茶を吹き出した。本当に不意打ち。

「あ.........ごめん。大事だって聞いたからちゃんと言って行こうと思って」
 へへっと笑う。

 もう、この子何?俺の心臓鷲掴みするの得意だろ。ボヤんの癖に大事な所は抑えてるんだから。結婚してから堰を切ったように気持ちを伝えてくれる。照れる。

「まあ、結婚出来たくらいだから、サラ様の方がアウィンを好きなんだな。匂いさえ無ければ祝福したいんだけど。ちゃんと女神になったら抑えられるのかも知れないしね」

 ゴシゴシ。「風の父は.........サラがまだ未熟だから【魅了】が漏れているのだと言っていた。この匂いもそれが原因かもな。いや、まあ、全属性なんて、かなり特殊なんだろうけど。今が一番危ない時期なんだろう」
「うん。確かに側に寄るとダメだね。腹の中が震えが来るほどだよ。2メートルは離れないと襲いそう」

 因みに大体焚き火を挟んで2メートル位離れている。

「匂いだけでなく【魅了】までも。更に光を発してるし。後どれくらいで女神になるんだろうな?」
「ふふ。まるで玉子の殻を割る雛みたいだ。ドキドキするね?」
「気楽な事言ってんじゃねーよ。あ、お前達この後どうするんだ?帰るんだろ?」
「アウィン。釣れないね。私達も行くよ。獣人神の所に。実は行った事無くてね。見ておこうと思って。ねえ?ゾーイ?」
「.........獣人はどうでも良いが、結末が知りたい。」


「.................まあ、良いか。サラを襲ったら細切れだからな?分かってるよな?」


「はーーーーーーーい!!わかったわ!任せといて?」



『「  !!!!!?  」』


 ボコんっと土の中から現れた顔に全員が飛び退く。

「ガ.........ガイザック!!!」

 生首が.........!喋ってる。


「ヤダー!何よその顔。やっと結界に入れたのに。めちゃくちゃ遠回りだったのよ?身体を土に分解して再構築までしてたの。ふふ」
「こ、怖い.........ふえぇ.........」

 サラが俺にしがみ付く。

「もうー!大丈夫よ?そろそろ上半身が出来たわ。ヨイショッと」

 ガイザックはそう言うとゴバッと土から腕を出す。グゥッと腰まで這い出て来た。

「いや.........あのな.........」
「どこのホラーだよ」
「ガイザックさん.........貴方も天界に居たんですか?」

 顔を痙攣ひきつらせた火と水が後退る。





「アウィン達が天界に行った後直ぐにね。一度土の神殿に行ってたの。パパにも会いたかったし」
「.........で?やっぱりサラを狙ってるのか?」
「うふん。言ったでしょ?あたしもやる時はやるのよ?ねぇ、獣人神のとこ行くんでしょ?そこで勝負しましょうよ?」

「「勝負?」」
 火と水が同時に返す。

「そう。サラちゃんを賭けた勝負よ」
「だけど.........婚姻の宣誓証を出してるんだろ?」
 ゾーイが不審な顔をして見る。

「撤回出来る方法があるわ。パパに聞いて来た。ふふ。アウィン。覚悟して?」

 水色のお綺麗な顔で上半身だけ出しニコリと笑うガイザック。


 ......(ブチ)...........


 俺は黙って風で火の着いた薪を舞揚げ、ガイザックの上にボタボタと投下した。

「きゃー!やめてよ!焼けちゃうじゃない~!」
「焼いてんだよ!一生人の形になれない様にしてやろうか!」



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