風神アウィンの受難〜全属性神族の番になれる愛妻は女神らしい。いや、俺のだからな?〜

第二章 「天界」と「女神」

30.繰り返す？

　コツンコツンと靴の音が響く。

　今地上には風の神族が居ない状態だ。遅くても7日までには地上に戻らないと行けない。で、なければ自然の風が好き勝手し出すのだ。

　俺の地上での役割の一つ。　
　それを治める事。

　神族の存在は神の分身のようなモノだ。存在する事で自然を調整する。普段普通に暮らす人間のような俺が居なくなる事で均衡が崩れるのだ。故に血族の存続は責務なのだ。



　風が穏やかに吹く。優しく温かい。良い匂いがする。花の香り、樹木や草の香り。入って正面に大扉。大扉の右奥にホール等の催事用場所。左奥は無数の客室。
　大扉入って直ぐ謁見の間。その奥が神の領域。俺は何があるかは知らない。知る必要も無い。

　大扉を風の精霊に開けさせる。
　正面の神座には神々しい、美しく力強い男。俺の祖先が座っていた。



『.........来たか。アウィン』
「お久しぶりで下座います。風の我が父。お待たせしましたか？」
『構わんよ。楽しみにしていた』
「ありがとうございます。今日は私の伴侶を連れて参りました。漸く妻に致しました番。御目通りさせて頂きます」

　俺は横抱きにしていたサラをゆっくりと降ろし、その横に片膝を付いて頭を下げた。


『.......アウィンよ。その者がどう言う者か判っておるか？』
「え！！」
『.........これは.........姿を暴かれてはいない。今はほぼ隠されているが.........。女神だ』
「.......っ..........父よ.........。彼女は.........私の唯一。もう離れる事は出来ません。地上の風は.........終わります」

『......やはり.........繰り返すのだな。.............』
「.........どう言う意味ですか？繰り返す？」
『.....アウィン。おそらくお前は試される。その者と添い遂げるのであれば迷うな。隠すな。止まるな。隙間を見逃すな。風の子は自由。縛られる事なく絡め獲れ』
「.........！.........留め置きます」
『ふふ。お前は可愛いな。アウィン。お前の本来の気質。真っ直ぐな道の様だ。私の息子よ。決して偽いつわるな。そこで動きが止まる。お前はお前で有るが良い。それが.........正解だ』
「はい。父よ」
『太陽の瞳の娘。お主もだ。信じて突き進め』
「初めてまして風神様。えっと..........突き進む？何処にですか？」
『お主が本当に欲しいモノへ.........だな』
「本当に欲しいモノ？私、もう欲しいモノ貰ってます。アウィンから全て」
「.........サラ」
「《リンミン》って言う匂い消しを貰って帰れば襲われないそうです。風神様。私、襲われる様な何か悪い事しましたか？」
『逆だな。』
「逆？」
『お主はある女神の魂を持って生まれた。未熟ゆえ魅了が漏れているのだ。今はまだ表に出ては居ないが。アウィンの伴侶になった事で目覚めて来ているのだろう。愛を持って身体を繋げると言う事は心を繋げる事と同等だ。アウィンの心に触れいずれ覚醒する。そうなれば.........。自ずとやるべき事が判るだろう。お主が何をしたいのか』
「女神？私が.........何かをする？」
「.................父は.........知っておられるのですね？」
『遙か昔、過去のみな。だがお前は同じでは無い。.........我が息子アウィン。我が言った事。忘れるな』
「.........はい。父よ」
『....ふん。.....騒がしくなって来たな』
「え？」
『審神の意を司る査問隊が来る。お前が出した婚姻宣誓証に疑いがあるとな』
「！　まさか！」
『.........しょせんは口実。娘。お主次第だ。腹を決めるが良い』