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第一章 「番」と「想い」
22.種を植え付けただと!
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俺は取り敢えず黙ってガイザックが治療しているのを見ておく事にした。
ガイザックは土属性の神族だ。
風が太陽の光が注ぐ空を。水が命育てる海を。土が大地を。火がその下の熱を。
何一つ欠けても生命は生み出されない。その中にあって土は特別だ。その他の力が大地に集まるから。数が沢山居る土の神族の役割が何なのかは知らない。だがその集まった力を使ってる事は確かだろう。その中でもガイザックは【異常を正す】力に特化している。俺の知る限り他には居ない。
こいつは俺より10も年上だが子を作る事もせず、気に入った男を連れてきては情事を楽しんでいた。俺が神族を引き継いだ5年前からの付き合いだが来る度に男が変わっている。そう言えば今日は居ないな。
.................勿論俺はダメな部類だからやっちゃいない。
何度も誘われるが何度も逃げた。てか、神族同士って有りなのか?因みに地上の神族は「雄」しか居ない。理由は判らない。
俺は診断と治療の終わったサラに結界を施して隣の部屋に移動する。少し離れないと番の匂いで頭がスッキリしない。
ピンクの布を取ったガイザックが「ふう」と息を吐いた。
「ガイザック、どうだった?何か解るか?」
「.................彼女人間よね?」
「.................のはずだ。なんで?」
「.........不思議。あたしの触手がメロメロになったわ。彼女の身体の中に延ばして中を診断しただけなのに」
「.................」
俺のサラにやらしい。だが、我慢。
「まあ、予想通りよ。襲われた時に付けられた傷。その中に種が入ってたわ。これは土の神族特有の番への儀式ね。相手の身体に埋め込むの。それがやがて芽を出すと2人は死ぬまで生涯離れられない。アウィンがしてる指輪みたいなもんね。中か外かの違いよ。土は独占欲が強いから」
「はあ?!種?嘘だろ!なんだよそれ!俺の女に傷を付けて更に種植え付けただと?あの野郎~~!殺しておけば良った!!」
「まあまあ、この種は発芽しないわ。心臓に繋がってるものだから。理由は解るわね?」
「ああ。細切れにしてやったからか」
「そう。芽が出る前に片方の心臓が無くなったから種のままだった訳。これよ」
先程のスイカの種みたいなやつを見せられる。
「ちっ」
「取り出す事が出来たから匂いは元に戻ると思うわ。この種、本当は三日三晩性行する為にワザと匂いが強くなる作用があるのよ。相手の精が身体に入ると更に強くなる。確実に子を成す為に離れられなくするのね」
「.................でもサラはあいつの匂いが臭いって言ってたぞ?腐った果実とか古い油の臭いとか言ってた」
「それは.................あの子の番じゃ無いって事よね。それどころか最悪じゃない。て、言うかなんで匂い分かるのよ?やっぱり普通じゃないわね?」
「サラは.................全属性の神族の番になり得る魂の持ち主らしい。能力については俺も爺さんに言われただけで詳しくは解らん。今まで俺と爺さんしか神族に会った事が無かったからバレなかったんじゃないかってさ」
「.................なんて事................。じゃあ、あながちあたしの番にだってなれるって事よね」
「さっきも言ったが、婚姻の宣誓証は出してるからな。手を出せるもんならやってみれば良い」
「うーん。細切れを取るか子を取るか」
「ムキムキが良いんだろ?」
「そうね。でも番なら立つわよ?多分」
「立つだけじゃな」
「そこよね~~~。動いてくれるなら良いけど。ふにゃふにゃの身体に欲情出来ないわ~」
「はあ。馬鹿話はもう良い。取り敢えずこれで匂いは治るんだな。傷は治りそうか?」
「大丈夫よ。異物が入ってたから。しかも神族の種。護られるはずが逆に毒になっちゃっただけだから。あたしのとこに来たのは正解ね。明日には治るわよ。アザも」
「ありがとう、ガイザック。助かった。何か欲しい物あれば連絡くれ。取り寄せて送る」
「ううん~アウィンが欲しいのに~~!」
「あり得ん。あ、そうだ《リンミン》少し分けてくれないか?何かあった時の為にサラに付けるから」
「えー。どうしようかな~~。キスしてくれたらあげよっかな~~」
「お前そればっか。今日は男どうしたんだよ?ムキムキの」
「今あたしフリーなのよー。なんか番の匂いに当てられちゃって今物凄くしたいの~~!ねー?しよ?」
「ぜぇったいヤダ。あ、じゃあ、眷属の中でムキムキ紹介するよ。それなら良いだろ?」
「今が良いのよ~。アウィンが良いの。あたしどっちもいけるからぁ~」
「何だよどっちもって。意味わからん。いや、知りたくない。兎に角帰るわ。《リンミン》は明日取りに来る。ムキムキ連れて」
「えー!じゃあ治療代は口チューでして行ってよ」
「.................「恋人のキス」で良いなら」
「え?」
俺はガイザックの顔をガシッと掴み口の端、頬、瞼、額にわざとチュッと音を出してキスをした。
「気持ち良いだろ?じゃあな」
俺は逃げるようにサラを拐い、窓を開けて飛び去った。
ヤベーヤベーっ。怖い怖い。何されるか分からん。口は勘弁だ。先手必勝だな。取り敢えずこれで匂いは抑えられるし、傷も良くなる。来て良かった。
明日ムキムキ連れて行かないと..........誰を犠牲にしようか.......。
************
そんな思惑とは違い
「「恋人のキス」.................良い。たまんない」
惚けるガイザックを残して風は逃げ帰って行った。
ガイザックは土属性の神族だ。
風が太陽の光が注ぐ空を。水が命育てる海を。土が大地を。火がその下の熱を。
何一つ欠けても生命は生み出されない。その中にあって土は特別だ。その他の力が大地に集まるから。数が沢山居る土の神族の役割が何なのかは知らない。だがその集まった力を使ってる事は確かだろう。その中でもガイザックは【異常を正す】力に特化している。俺の知る限り他には居ない。
こいつは俺より10も年上だが子を作る事もせず、気に入った男を連れてきては情事を楽しんでいた。俺が神族を引き継いだ5年前からの付き合いだが来る度に男が変わっている。そう言えば今日は居ないな。
.................勿論俺はダメな部類だからやっちゃいない。
何度も誘われるが何度も逃げた。てか、神族同士って有りなのか?因みに地上の神族は「雄」しか居ない。理由は判らない。
俺は診断と治療の終わったサラに結界を施して隣の部屋に移動する。少し離れないと番の匂いで頭がスッキリしない。
ピンクの布を取ったガイザックが「ふう」と息を吐いた。
「ガイザック、どうだった?何か解るか?」
「.................彼女人間よね?」
「.................のはずだ。なんで?」
「.........不思議。あたしの触手がメロメロになったわ。彼女の身体の中に延ばして中を診断しただけなのに」
「.................」
俺のサラにやらしい。だが、我慢。
「まあ、予想通りよ。襲われた時に付けられた傷。その中に種が入ってたわ。これは土の神族特有の番への儀式ね。相手の身体に埋め込むの。それがやがて芽を出すと2人は死ぬまで生涯離れられない。アウィンがしてる指輪みたいなもんね。中か外かの違いよ。土は独占欲が強いから」
「はあ?!種?嘘だろ!なんだよそれ!俺の女に傷を付けて更に種植え付けただと?あの野郎~~!殺しておけば良った!!」
「まあまあ、この種は発芽しないわ。心臓に繋がってるものだから。理由は解るわね?」
「ああ。細切れにしてやったからか」
「そう。芽が出る前に片方の心臓が無くなったから種のままだった訳。これよ」
先程のスイカの種みたいなやつを見せられる。
「ちっ」
「取り出す事が出来たから匂いは元に戻ると思うわ。この種、本当は三日三晩性行する為にワザと匂いが強くなる作用があるのよ。相手の精が身体に入ると更に強くなる。確実に子を成す為に離れられなくするのね」
「.................でもサラはあいつの匂いが臭いって言ってたぞ?腐った果実とか古い油の臭いとか言ってた」
「それは.................あの子の番じゃ無いって事よね。それどころか最悪じゃない。て、言うかなんで匂い分かるのよ?やっぱり普通じゃないわね?」
「サラは.................全属性の神族の番になり得る魂の持ち主らしい。能力については俺も爺さんに言われただけで詳しくは解らん。今まで俺と爺さんしか神族に会った事が無かったからバレなかったんじゃないかってさ」
「.................なんて事................。じゃあ、あながちあたしの番にだってなれるって事よね」
「さっきも言ったが、婚姻の宣誓証は出してるからな。手を出せるもんならやってみれば良い」
「うーん。細切れを取るか子を取るか」
「ムキムキが良いんだろ?」
「そうね。でも番なら立つわよ?多分」
「立つだけじゃな」
「そこよね~~~。動いてくれるなら良いけど。ふにゃふにゃの身体に欲情出来ないわ~」
「はあ。馬鹿話はもう良い。取り敢えずこれで匂いは治るんだな。傷は治りそうか?」
「大丈夫よ。異物が入ってたから。しかも神族の種。護られるはずが逆に毒になっちゃっただけだから。あたしのとこに来たのは正解ね。明日には治るわよ。アザも」
「ありがとう、ガイザック。助かった。何か欲しい物あれば連絡くれ。取り寄せて送る」
「ううん~アウィンが欲しいのに~~!」
「あり得ん。あ、そうだ《リンミン》少し分けてくれないか?何かあった時の為にサラに付けるから」
「えー。どうしようかな~~。キスしてくれたらあげよっかな~~」
「お前そればっか。今日は男どうしたんだよ?ムキムキの」
「今あたしフリーなのよー。なんか番の匂いに当てられちゃって今物凄くしたいの~~!ねー?しよ?」
「ぜぇったいヤダ。あ、じゃあ、眷属の中でムキムキ紹介するよ。それなら良いだろ?」
「今が良いのよ~。アウィンが良いの。あたしどっちもいけるからぁ~」
「何だよどっちもって。意味わからん。いや、知りたくない。兎に角帰るわ。《リンミン》は明日取りに来る。ムキムキ連れて」
「えー!じゃあ治療代は口チューでして行ってよ」
「.................「恋人のキス」で良いなら」
「え?」
俺はガイザックの顔をガシッと掴み口の端、頬、瞼、額にわざとチュッと音を出してキスをした。
「気持ち良いだろ?じゃあな」
俺は逃げるようにサラを拐い、窓を開けて飛び去った。
ヤベーヤベーっ。怖い怖い。何されるか分からん。口は勘弁だ。先手必勝だな。取り敢えずこれで匂いは抑えられるし、傷も良くなる。来て良かった。
明日ムキムキ連れて行かないと..........誰を犠牲にしようか.......。
************
そんな思惑とは違い
「「恋人のキス」.................良い。たまんない」
惚けるガイザックを残して風は逃げ帰って行った。
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