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第一章 「番」と「想い」

13.女禁止な!

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「で?何があった?」

「は、はい。私は御用聞きです。サラ様のお支度をしているお部屋の扉の外にもう1人連絡係の者と共におりました。すると廊下から大声を出しながら此方に近づいて来る金髪の顔の焼けた大きな男が。どうやって来れたのか解りません。サラ様の部屋の周りには風の結界が張ってあります。我々風の者以外は入れないようになっていたのに。奴は風の眷族では有りませんでした」
「結界を抜けた?」
「そうです。難なく。そして我々を薙ぎ倒し、サラ様のお部屋に押し入って........。警備を呼びましたが間に合わず。本当に申し訳有りません」
「.................何か言ってなかったか?あいつ」
「はい。ぶつぶつと.......見つけた、とか。.....そう。番。俺の番が、と」
「...番?そいつの?誰の事だ。なんでサラに」

「あー.................アウィン」

 爺さんが話し掛けて来る。話を聞いていた侍従を外に出した。部屋には寝ているサラと俺と爺さんとヤン。

「ん?なんだよ爺さん。どこの者か判るのか?」
「................さっき言いかけたんだけどね、えっと。サラちゃんを襲ったのは多分..........神族だ」
「あ?.......どう言う事だ?神族の誰かが俺を貶めようとしてるって事か!」
「いや、違う。そうじゃない。はあ.................。仕方がない。こうなったら覚悟を決めるよ」
「?なんだよ。なんで爺さんが?」
「実はね、アウィン。サラちゃんは.................全属性の神族の番になれる特殊な魂をしていてね。よっぽど前世の行いが良かったのか.......兎に角神族に愛されるようになってる」

「.................」

「かく言う私もサラちゃんに発情してしまうんだよ。勿論触らなければ大丈夫だけどね。だが、側に居ると欲しいと思ってしまう。本当まずかった。なんせ孫より歳下だからね。だからここに引越したんだ。.........多分サラちゃんなら中に出せるよ」

 俺はガタンッと椅子から勢いよく立ち上がった。

「.................爺さん」
「怖い顔しないの。いくらなんでも孫の嫁に手を出したら業火で焼かれるよ。ふふっ」
「.................」
「本当、今まで奇跡的にアウィンと私しか神族に出会って無かったから良かったんだけど。天に帰った時に父に聞いてみたんだよ。そしたらね、サラちゃんはアウィンが護れば良いってさ。無茶言うよね。兎に角婚姻の宣誓証を出せば、神族を制裁しても妻を護る為だから罰は与えられない。大義名分が出来る」
「........つまりサラは、俺以外の神族の番に成り得る、そして、狙われ続けるって事か?で、あれか?どう見ても愛されてるようには見えなかったぞ」
「感情より本能で動いたんだろう。番=性の捌け口だとね。中には番を外に一生出さない者もいるんだ。愛の形は様々さ」
「.................何で。こんなのサラが可哀想じゃねぇか」
「アウィンに捨てられても、捨てても、誰か神族には愛されるから。それを考えると.........幸せ?」
「誰が捨てられるって?チクショウ!なんて事だ。どうすれば良い?サラが傷付かない様にしないと。今回なんて怪我したんだぞ!次はなんだ?脚でももがれるか?ふざけてる!危険過ぎる。なんでこんな....サラ」

 俺は眠るサラに目をやる。涙の後が残ってる。よっぽと怖かったに違いない。ぐっと唇を噛んだ。

 すると爺さんが

「だからね、考えてたんだけど。神族にバレなければ良いんだよね。あの神族は鼻が良かったんだよ。つまり.........土かな?土の神は多産だからね。方々に子孫が居る。でも水と風は地上に2.3人づつしか居ない。火は5人かな?土さえ防げれば何とかなるよ。匂いを麻痺させよう。」
「匂い?」
「アウィンはサラちゃんを見つけた時何で判ったのさ?匂いだろ?」
「あ?あ。そうだった。甘い熟れた果実のような、それでいて瑞々しい花の香り。直ぐに判った。番なんだって.........。これを他の奴も感じるのか.......」
「そう。私も判る。風を操る私達は水と火より気づき易い。ふふ。妻以外に別の番の匂いがあるなんてね。出会った時はビックリして動けなかったよ」
「.........俺のだぞ。それより........防ぐ方法があるんだな?」
「天界にね《リンミン》って花があるんだよ。その花を乾かして粉末にした物を練り香水に混ぜるんだ。天界の獣人神の匂い消しだから効くはずだよ」

「.........分かった。........取りに行ってる間どこか................いや、やっぱり一緒に連れて行く。サラに何かあればもう、俺も.................子孫は残せない。地上の風は終わりだ。どうなったって同じさ。次、天に通じるのはいつだったか?」
「確か5日後だったかな。この月は割と多い。春だからね」
「そうか。爺さん。俺達このままここで過ごす。ラヌシェルに戻るのは簡単だが何が有るか分からん。一時離れた間に襲われたんだ。力のある奴を護衛に付ける。俺が居ない間は常に..........ヤン。お前が付いてろ」
「畏まりました」
「爺さん。良いな?」
「風族はもうアウィンが主だよ。お前が決めれば良い。私もまたアウィンのモノなんだ」

「へぇ、そうか。じゃあ、取り敢えずこの5日間は女禁止な。 」
「えーーーー!ヤダー!」
 パタパタ手を振る爺さん。


「子供か!」
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