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第一章 「番」と「想い」

11.やめないぞ!

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 4日目。
 俺達はある島に降り立つ。豪華客船はそのまま折り返し元の港に帰って行く。

 ここは俺の爺さんの所有する島で居住する為に随分前に買い取った。俺に神族を引き継がせた後、引退して此処に住んでる。因みに婆さんも居るが旅行中だ。予定が合わなかった。ワイバーンで帰ると言うが、いつでも会えるからと断っておいた。爺さんにはサラを会わせないといけない。まあ、面識は有る。


 船を降りてからのサラはキョロキョロと海岸を見たり貝殻を拾ったり、深い森を見上げたり忙しない。

「サラ。楽しいか?」
「うん!初めて見るモノばかりでワクワクするわ。アウィン凄いね!見て?貝殻が大きいの。トゲトゲしてる。ふふ。宝物にする!」

 貝を掴みながらニッコリ笑う。

「..........う.......ん」

 なんか、照れた。俺の妻は可愛い過ぎるな。襲うぞ。じゃなくて.................

「サラ。そろそろ行こう。掴まれ。爺さんの屋敷は森の中なんだ。早く行かないとあの人どっか行っちまうから」
「え?そうなの?うん、ごめんね?」
「今度ゆっくり連れて来てやる。風の奴は基本的に一つの所にじっとしてないんだ。俺や親父は珍しいんだよ。まあ、母親があまり丈夫じゃ無いからってのも有るけど。自分が居ない間に何か有ると怖いしな。親父は神族では無いから尚更だ」

 俺はサラを横抱きに抱えて森の屋敷に向かう為宙を飛んだ。

「お父様は力は無いの?」
「空は少しの間は飛べる。風は完全には操れないけど。まあ、大して要らないかな。あまり力に固執しない。なんせ商会が忙しいから。力を使っても解決しない事なんて山程あるだろ?」
「そうね。お忙しいわよね。私お爺様しかお会いした事無いの。お屋敷にはいらっしゃらないわよね。いつも商会の方にいらっしゃるの?ご挨拶したいな」
「ああ。そうだな。母と一緒にラタタの商業都市に居る。また、連れて行くさ。今回の婚姻の宣誓は、結構..その、まあ、賭けみたいなやり方だったから。勿論、嫌がりはしないと思ったが、ちゃんと事前に確認出来なかったから」
「うん。そうだね。でも船の人達は?」
「あれは半分仕事だ。3日目俺居なかっただろ?一日中分刻みで一気に商談してた」
「.....ご、ごめんなさい。私、寝て食べてまた寝てた」
「ふふ。構わない。散歩の後も結局無理させたしな。3日目は休養日だ」
「.................」
「止めないぞ?何年我慢して来たと思ってるんだ。新婚だしな。いや、新婚でなくてもいつで『パシッ』もがっ」
「ダメ~やらしいからそれ以上言わないでぇ!」

 また口を塞がれた。
 そしてまたペロリと舐めてやる。

「にゃーーーーーーー!」

 慌ててサラは手を引っ込めた。

「ははははっ!さあ、もう着くぞ。前も言ったけど、人外も居る。だが怖がらなくて良い。俺が居るんだからな。笑え、ニコニコ笑え。サラ。俺の妻として」
「..............はい」

 サラが俺を見上げて........ニコリと言う。

「.................それで良い」

 額にキスを落としてぎゅっと抱き締める。
 サラなら大丈夫。


 森の中に突然平地が現れる。だだっ広い大きな屋敷が見える。華美では無い。重厚な石が規則正しく重ねられ、まるで砦の様な風貌だ。何と言うか、男らしい。だが爺さんは物腰の柔らかい優男だ。未だにこの外観に慣れない。
 俺は何で有るのか判らないこれまたゴツい鉄の柵で出来た門の前に降り立ち、サラを立たせた。呼び鈴を引く。カランカランと鳴り響く。するとゴゴゴゴッと言う轟音と共に柵が上がって行った。

「...まあ、いいや。入ろう、サラ」

 俺は手を差し出してサラの右手を掴んだ。サラは.........ポカンとした顔をして門を見上げている。
 うん、分かるけどな。淑女は口を開け放たないと思うぞ?まあ可愛いから許すわ。

「サラ。入るぞ?抱っこして欲しいのか?」
「え!う、ううん、違うわ。ちゃんと歩く!」

 赤く顔を染め頭を左右に振る。きゅっと繋いだ手を握り上目遣いで俺を見る。

 .................今夜また襲ってやろう。昨日休んだし良いよな。

 ニヤニヤしながらそんな事を考えていると、長年爺さんに仕えている執事のヤンが重厚な扉を開けた。

「いらっしゃいませ若様。お久しぶりでございます。5年ぶりくらいでしょうか?」
「ああ。そうだな。代替えして直ぐ此処に移り住んだから。それくらいは経つな。爺さんは?」
「いらっしゃいますよ。珍しく。ふふ。眷族も既に集まりました。奥様初めまして。でも無いのですか、私は姿を見せない様に言われていましたので。直接はお会いした事はございませんでしたが。この館の執事をしておりますヤンと申します。覚えて頂けると嬉しく思います」

 45度の綺麗なお辞儀をしてヤンが挨拶をした。

 するといつもバタバタキョロキョロしているサラがワンピースを少し摘み、ニコリと微笑みながら


「初めまして、ヤン様。わたくしサラと申します。この度アウィン様の妻に迎えて頂きまして、こちらの家名を名乗らせて頂く事になりました。不束者ではございますがこちらこそ宜しくお願い致します」
「流石は若様の選ばれたお方ですね。しっかりなさっておられる。お姿もお声もとてもお綺麗で可愛らしい。ふふ。幸せ者ですね、若様は」
「..................................ありがと」

 何か乗り移ったのか、サラ?いや、最低限は弁えているのか。ちょっと、いやいや、大分ビックリした。令嬢に見えるよ。あ、顔が令嬢モードで笑顔で固まってる。

「さあ、中にお入りください。宜しければお着替えされますか?ドレスをご用意致しております。勿論、若様にもスーツを着て頂きますよ?」
「あー。そうだな。サラを着飾らせてくれ。俺は爺さんに挨拶して来る。サラ、いいな?」
「ええ。アウィン。」ニコリ
「.................いつまでもつかな?」
「.................」ニコリ
「ではご案内いたしますね?サラ様どうぞ此方へ」

 横に控えていた若い侍女数人がサラを客室へ連れて行く。眷族の者だ。


「.........プッッ。ふふふふっ本当可愛い奴」
「メロメロですか?」
「俺が?」
「勿論」
「んーーー。そうだな。今まで触れる事すら躊躇われたから。漸く俺の手に入ったんだ。可愛がるよ」
「ふふ。若い頃の大旦那様の様です。まあ、もっと品が有りましたがね」
「ちっ。仕方ないだろ。同じ人間じゃ無いんだから。きっと婆さん似なんだよ」
「聞かなかった事に致します」
「そーかい。良く解ってるね。」

 俺はふふと笑う。
 ヤンに案内され爺さんの部屋に着いた。


 コンコンッ


「若様がお着きになられました」
「入って良いよ」
 爺さんの声がする。

「爺さん、入るよ」

 俺はそう言いながら扉のノブをガチャリと開けた。

 そこには.................



 眷族と思われる裸の女を侍らせる爺さんが1人掛けのソファに座ってワインを飲むジジイの姿が。




「.................おい(怒)」






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