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◇式前30日の記録
15.真夜中の訪問者⑶
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テオルドは『悪気』を纏い硬化させる。
普段の戦闘の時は鎖帷子を着けるだけなのだが今は何も獲物を持っていない。体術戦になるからだ。腕力、俊敏さが格段に上がる。此のところリリアに『悪気』を吸わせていないので身体から出る程では無かったが潤沢に内部に留まっていた。鍛錬の為に『悪気』に呑まれる事は少なくなって、手足の様に操る事は可能だ。ビオルテルダはやはり異常だったのだ。
テオルドは床をグッと踏み込み暗闇に目を凝らす。『悪気』を使って視力を上げ夜目を利かせた。
「ん?なんだその格好は?」
相手はどうやら寝間着を着ている様だ。顔の表情までは判らないが小さ目の女が立っている。
「それはこちらの台詞ですわ。その姿.........バスローブでございましょう?そんな格好で何をするおつもりでしたの?」
「ああ?......お前に関係無いだろ。どうやって入った?扉の前には護衛が居たはずだ」
「(ちょっと試してみようかしら)ふふ。内緒ですわ」
ヒュッと風が鳴りテオルドの姿が掻き消える。女は指先から糸を出し瞬時に身体の周りを覆った。強度は最高硬度だ。
ガシッと頭の部分を掴まれる。
『ゴリ......... 』
「!!」
『ゴリ....ビキ.........ゴキャ.........ペキ......... 』
糸で出来た繭の鎧の頭の後ろ側を手でこじ開けられた。
「嘘!なんて力!」
女はザッと蹲み込み繭の鎧を脱ぎ捨て窓際まで走る。その間に部屋中に硬質で鋭利な糸を張り巡らせた。だが、指先から伝わるのはプチプチ.........プツ.........と切れて行く振動。そして.........殺気。
『悪気』と似てはいるがこちらの方がより身体を刺すような嫌な気が迫って来る。速い!
バシュッっと再度糸をテオルドの身体に巻き付かせる。脚、胴へ最強硬度。だが、ギギギッと音がして次いでバカンッと弾き飛ばされた。
「ーー!これ程とは.........!」
「.........お前.........『悪気』が無いな.........吸い取れない。どう言う事だ?その糸の様な技.........お前.........何だ?」
テオルドは女を睨み付け呟いた。
「.........(.........でも分厚い刃物はどうかしら?)」
女は左手を右手で掴み、ススス、と擦らして行く。そこには白い糸で作られた先の尖った短剣が現れた。
「.........」
「最後ですわ。確かめさせて下さいませ」
「ああ。これで最後だ」
テオルドはグンッと身体を低くし床を蹴る。女は渾身の力を入れ迫り来るテオルドの肩に短剣を振り下ろした。
『ドッ』
肩にめり込んだと思われた切っ先が硬い身体に弾かれる。女はそのままテオルドによってダァンッと壁に叩き付けられた。同時に首を掴まれ、膝で腹を押さえ付けられ、腕も壁に力尽くで拘束される。
「何だ?これだけか?」
グイッと左手を掴み上げ、折れんばかりに締め上げるテオルド。
「ーーがっ.........くうっ.........ふぅ.........イタタタ。女性に遠慮無く体当たりするなんて、貴族の子息がやる事ですの?テオルド様」
「あ?何だと?」
その時、ベッドの中から鈴がなる様な美しい、だが震える小さな声が聞こえて来る。
「..................誰か居るの?」
「リリア!大丈夫か?不審者が「リリア様、大丈夫でございますよ。少し音が大きかったですね。すいません」.....ん?リリア様?」
「失礼致しました、テオルド様。ちょっと実力を試してみようかと.........。あの、取り敢えず首とか腕を離して頂けませんか?折れますわ」
普段の戦闘の時は鎖帷子を着けるだけなのだが今は何も獲物を持っていない。体術戦になるからだ。腕力、俊敏さが格段に上がる。此のところリリアに『悪気』を吸わせていないので身体から出る程では無かったが潤沢に内部に留まっていた。鍛錬の為に『悪気』に呑まれる事は少なくなって、手足の様に操る事は可能だ。ビオルテルダはやはり異常だったのだ。
テオルドは床をグッと踏み込み暗闇に目を凝らす。『悪気』を使って視力を上げ夜目を利かせた。
「ん?なんだその格好は?」
相手はどうやら寝間着を着ている様だ。顔の表情までは判らないが小さ目の女が立っている。
「それはこちらの台詞ですわ。その姿.........バスローブでございましょう?そんな格好で何をするおつもりでしたの?」
「ああ?......お前に関係無いだろ。どうやって入った?扉の前には護衛が居たはずだ」
「(ちょっと試してみようかしら)ふふ。内緒ですわ」
ヒュッと風が鳴りテオルドの姿が掻き消える。女は指先から糸を出し瞬時に身体の周りを覆った。強度は最高硬度だ。
ガシッと頭の部分を掴まれる。
『ゴリ......... 』
「!!」
『ゴリ....ビキ.........ゴキャ.........ペキ......... 』
糸で出来た繭の鎧の頭の後ろ側を手でこじ開けられた。
「嘘!なんて力!」
女はザッと蹲み込み繭の鎧を脱ぎ捨て窓際まで走る。その間に部屋中に硬質で鋭利な糸を張り巡らせた。だが、指先から伝わるのはプチプチ.........プツ.........と切れて行く振動。そして.........殺気。
『悪気』と似てはいるがこちらの方がより身体を刺すような嫌な気が迫って来る。速い!
バシュッっと再度糸をテオルドの身体に巻き付かせる。脚、胴へ最強硬度。だが、ギギギッと音がして次いでバカンッと弾き飛ばされた。
「ーー!これ程とは.........!」
「.........お前.........『悪気』が無いな.........吸い取れない。どう言う事だ?その糸の様な技.........お前.........何だ?」
テオルドは女を睨み付け呟いた。
「.........(.........でも分厚い刃物はどうかしら?)」
女は左手を右手で掴み、ススス、と擦らして行く。そこには白い糸で作られた先の尖った短剣が現れた。
「.........」
「最後ですわ。確かめさせて下さいませ」
「ああ。これで最後だ」
テオルドはグンッと身体を低くし床を蹴る。女は渾身の力を入れ迫り来るテオルドの肩に短剣を振り下ろした。
『ドッ』
肩にめり込んだと思われた切っ先が硬い身体に弾かれる。女はそのままテオルドによってダァンッと壁に叩き付けられた。同時に首を掴まれ、膝で腹を押さえ付けられ、腕も壁に力尽くで拘束される。
「何だ?これだけか?」
グイッと左手を掴み上げ、折れんばかりに締め上げるテオルド。
「ーーがっ.........くうっ.........ふぅ.........イタタタ。女性に遠慮無く体当たりするなんて、貴族の子息がやる事ですの?テオルド様」
「あ?何だと?」
その時、ベッドの中から鈴がなる様な美しい、だが震える小さな声が聞こえて来る。
「..................誰か居るの?」
「リリア!大丈夫か?不審者が「リリア様、大丈夫でございますよ。少し音が大きかったですね。すいません」.....ん?リリア様?」
「失礼致しました、テオルド様。ちょっと実力を試してみようかと.........。あの、取り敢えず首とか腕を離して頂けませんか?折れますわ」
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