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◇本編

52.

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 あ.................誰か居る?
 敵さんかな?こんな樫の木にまで登ってるなんて。
 ワタシからは少し下に居るその『悪気』を纏った人はこちらには気付いて無い?
 暗くて分からないな。取り敢えずあの『悪気』から遠ざかろう。

 再度羽を広げる。
 その時、嗅いだ事がある臭いに気が付いた。

 それは昔、王様の40回目の誕生日のお祝いで王都に行った時、テオルドに面白がって花火を打ち上げている近くまで連れて行かれたのだ。凄い爆音と朦々とした煙で緊張してグッタリしたな。テオルドが慌ててたっけ。あの時嗅いだあの臭い。

 ツンとした臭い。これは、そう.........


 火薬だ。


 ワタシは目は鳥目だが鼻は良い。人の汗と火薬の臭いがしている。つまり何かを爆発させようとしているって事だよね?花火.........じゃ無いよね?じゃあ、何?

 えっと確か前に武器について書いてあった本には火薬は、鉄とか陶器に火薬を詰めて導火線に火を付けてから投げる.........名前忘れちゃったけど、そう言うやつかな?爆発すると.........爆炎と爆風と飛び散る破片で沢山の人が犠牲になるって書いてあった。


 ........ダ......ダメダメ...ダメじゃない!!!


 ど、ど、どうしよう!どうする?どうしたら.........止めなくちゃ!!火!火を着けられなくしたら.........み、水は無い。か、風?風は.........有る。ワタシの羽をバタバタすれば!


 そうこう考えている間にシュッと擦る音がした。フワリと火が灯る。ワタシは羽をバタバタ扇ぐようにその灯りに向かって風を送る。すると直ぐに消えた。間に合った?良かった~。
 だがまたシュッと擦る音。慌ててまたパタパタ扇ぐ。消えた。ふー.........。

「.................」

「.................」

 3回目。シュッと擦る音。
 パタパタパタパタ。あ、勢いでバランス崩した!グラリと落ちそうになる。ふらりと足踏みしながら右側によろめいた。

 その瞬間、ワタシの羽の先の間を何かが通り抜けて行った。後ろでゴッと硬い物が枝に打つかる音がする。


 ひえーーーーー!
 何か投げられた!バレちゃってる!あ!黒い人がこちらを見ている。


「白い.........鳥?.........まさか.........」
「ゴ.........ゴァ.........」
「御使い?何故ここに.........ふふ。これは良い」

 良くなーーい!マズい!逃げなきゃ!で、でも火薬.........どうする?どうする?考えるんだワタシ!火薬は.........水で湿らせれば火は着かない。水.........液体.........

 樫の木の上から立食パーティーの会場を見る。光が沢山灯っている場所に.........紅茶用のポットやアルコールの瓶が見える。


 あれだ!!
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