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◇本編

9.

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 その内部屋の外をバタバタと走る音が聞こえて来た。ハアハアと言う息遣いが聞こえ、続いてコンコンと扉をノックする音がしてガチャリと開く。

 リングライド公爵が髪を乱してワタシとシトランを凝視した。

「あ.........あ......... 御使い様.........」
「ゴァーーー?」公爵様だ、大丈夫?

 シトランは黙ってリングライド公爵に近づきクチバシの葉っぱをクイッと差し出す。

「.................賜ります」

 恭しく葉っぱを受け取る公爵。ジッとそれを見る。
 公爵はブルブル震え、そしてバッと顔を上げると急に男の人の顔になった。冷たい.........でも目に力があるそんな男の人の顔。

「ゴァ.........」何が.........
「ゴアーーー!ゴァッゴア」

 シトランは確かに受け渡ししたぞ、と言ってからワタシに向き直り、

『早く帰れよ。今季の繁殖期終わったらまた大分待たないといけないんだから。ダンス見たいだろ?』

 そう言うとワタシの首をクチバシでカカカと啄み、グイッと顔を擦り付けて来た。

「ゴア!」わあ!ゾクゾクするぅ!
「あ!リリア!」

 テオルドが慌ててワタシを抱き上げる。ふわぁ!

「御使い様。うちのリリアには触れないで下さいね。大事に育てて来てるんですから」
「ゴア?」育てる?
「.................」

 シトランは黙ってテオルドをひと睨みすると窓に向かって歩いて行き窓枠に飛び乗って翼をバサリとはためかす。

『おい!リリア!明日天界来るんだろ?用事が有るからコロニーの僕の巣に来いよ?』
『え?うん?』用事?
『じゃあな。』

 そう言い残してシトランは空に飛び去って行った。

「ゴアーー.........」ビックリしたぁ。
「リリア!あの御使い様は雄か?」
「ゴア」そうだよ?
「まさか何かされたのか?」
「ゴ.........ゴア.........ゴァグゥ.................」さ、されてないけど.........番になろうって.........。
「はあ?!なんだって?なんで短い時間にそんな話になるんだよ!」
「ゴアーーー!」そんな事言われてもー!バタバタバタッ

「.........テオルド。なんで御使い様と会話出来るんだ.........。言葉遣いも酷い........まあ、良い。お前も見ただろう?豪華な馬車がエントランスに到着した。何かが始まるぞ。そして、我々のこの先を決める出来事に間違いない。私は急いで秘密裏に王宮に使いを出す。それまでお前が対応するのだ。騎士達は?」
「既に招集の連絡済みです。リリアが落ち着かなかったので」
「そうか。ふん。気持ち悪いな.........。『御神託』の意味も.........これかも知れん」
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