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◇本編

1.

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「ゴァーーー!」
「ん?どうしたリリア。何かあるのか?」
「ゴァッゴァーーーゴァッ」
「ああ。来客だな。珍しいな。最近は大人しくしてたのに。あれは.........マリル伯母様だな。父に用事かな?」
「ゴアーーー。ゴァ?」
「父の4つ上の姉さ。ザエフト侯爵家に嫁いでるんだ。名前は知ってるだろ?まあ、強欲で有名だけど力はある。ふふ。伯母にはぴったりだよ」
「ゴア。ゴァッ!」バサバサバサバサッ。
「ごめん、悪口だな。良くないな。リリア、そろそろ時間だな。窓開けるか?あんまり遅くならないでくれ、心配だから」
「ゴアッ」
「ああ。俺の可愛い白の御使い様?ふふ。首輪を着けるぞ?首伸ばしてくれ」
「ゴア」

 そう言って彼はワタシの白い首に真っ赤なルビーの付いた紋章入りの首輪を着ける。迷子札の代わりらしい。いつもの遣り取りだ。

「さあ、これで良い。夕飯までに帰って来てくれよ?食いっぱぐれるぞ?」
「ゴァーーーッ」
「ああ。行っておいで。女神様に感謝を」

 窓を開けながら彼は優しい眼差しで微笑んだ。
 ワタシは窓枠に飛び乗り一鳴きして二階のそこから外へ飛び立つ。風に乗りくるっと旋回してから東に見える切り立った崖の更に上へと目指して飛んで行った。



 ************



 ワタシの名前はリリア。彼が付けてくれた名前。
 ワタシが百合の花みたいだからって。

 彼と出会ったのは巣立ちの練習をしてた時。誤って知らない場所まで出てしまったの。不安になって急いで空を飛んで、またコロニーに帰ろうとした時。

 獰猛な大鷲がいつの間にかワタシの後ろに飛んできていた。

 怖かった。

 逃げて逃げて逃げて..................追い付かれた。

 必死で抵抗したけど黒い鋭い爪で背中を引き裂かれた。
 大きな翼で叩かれた。
 勢いが付いてワタシは地面に叩きつけられ気を失いかけた。身体中が痛くて鳴く事も出来なかった。
 このまま連れ去られて食べられるんだと思った。

 でもそうならなかった。


 彼がワタシを助けてくれたの。


 彼は庭で剣術の稽古をしていたんだって。そしたら突然ワタシが降って来たんだって言ってた。
 白い.........真っ白なワタシが地面に落ちたのを見て急いで駆けつけてくれたって。大鷲に向かって剣を振り回しながらワタシを護ってくれたの。


 その日からワタシ達は一緒に居る。

 ワタシの名前はリリア。

 彼が付けてくれた名前。リリア。


 天界で御使いを担うシラサギにして女神の眷属。


 頭の先から脚の先まで全身が白いシラサギ。目は緑色。


 勿論.........女の子よ?
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