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41.レジンの甦った記憶

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「.................レジン様」

 シーラが不安そうにレジンに歩み寄る。

「! あ、ああ。なんか.........すまん。置いて行かれたな。はは。.........えっと。取り敢えず入ってみようか。ここは昔俺がダヤン達の隠れ家に用意した小屋なんだ。なんか.........普通の家になってるけど」
「隠れ家?」
「そう。改竄前にな。『聖女』である事を隠す為の。まあ、無理だったけど」

 レジンはシーラを伴い割としっかりと造られた木で出来た扉を開ける。建物は石造りだ。いや、もう全くの別物になっていた。中はこれまた調度品が揃った部屋だ。暖炉と1人掛けの椅子が2つ、3人掛けのソファが一つ。食事をする為のテーブルなどが見える。以前は小屋に毛が生えた程度だったし勿論部屋自体も一部屋だったが、どうやらベッドルームは別なようだ。

(これは普通に暮らせそうだ。しかも温泉付き)

「シーラ。冷えてきたから取り敢えず家の中に入れ。俺は薪を持って来る。ついでに馬がいるらしいから餌やって来るな。食糧も有るらしいけど.........先やって来るわ。適度に見て回っといて良いぞ?」
「はい。レジン様」

 レジンはグローブを嵌め、暖炉用に薪を取りに向かう。ふと、空の赤を見た。夕陽が沈む。紫と紺とそれから.........なんだか久しぶりに夜になる空を見た気がする。

「生き急ぐ.........か。確かにな。ちゃんと意識して空なんか見たの何年振りだろうな。晴れか雨しか気にしなかったし」



 このも.........太陽は変わらないんだな。


 *


「寒っ!雪降ってる!まあ、そうか、山沿いだしそんな時期か。収穫祭だもんな。てか.........本当大丈夫かな?彼奴ら」

 レジンは小さな馬小屋で馬に餌をやりながら呟く。正直.........自分が人の命を指図して消してしまう事に戸惑う。


 何故なら.................レジンは記憶を取り戻していたからだ。


 あの魔剣で斬り伏せられた刻に。
 死ぬかと思われたあの刻、頭に走馬灯が走り抜けた。違う世界の事。死んだ理由。この世界に来た。そして.........暖かい腹に入った事。現在に至るまでの年月。ダヤンの言葉。
 レジンは思考で動けなくなりそうな身体に何とか力を入れ薪を両手一杯に担ぎダヤンが造り直した家に運ぶ。王子であった自分が何故こんな知識が有るのか。疑問に思った事もあった。自然に体が動くのだ。経験した事があるように。自分は器用なんだと割り切ろうとしたが、それだけでは答えにならない事も沢山あった。
 だが今なら解る。過去にやった事が有る。或いは何かで見た事が有るのだ。

 .........違う次元で。


(マジか.........。記憶が有るなんて。ダヤンは俺が違う次元からって言ってたよな。単純にそれだけなんだろうか。それは.........答えが有るのかな?知ってどうする?.........今更か)

 レジンは入り口の脇に次々と薪を積んで行った。もしかしたら明日は雪に埋もれるかもしれないから今の内に家の中に入れて置くのだ。王子はそんな事考えない。王なら尚更だ。ふふっと苦笑した。

「過去の記憶便利だわ。温泉水は飲めるか解らんから水も汲んでおこう」

 桶に井戸から水を汲みかめに入れて行く。全くやった事など無いが解る。見た事があるのだ.........映像で。
 記憶が入り乱れるかと思いきや、割とスッキリしたものだった。必要な刻にスッと思い出す、そんな感じだったので混乱せずに済んでいる。

(7日で、ちゃんと考えまとめよう。これからの事)

 レジンは桶から流れる水を見ながらそう考えていた。
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