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24.仰せのままに
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(レジン様.........)
アシュケは指示を出した後、魔術師達が飛行の術が掛かった魔石を使い崖上に兵士を救出して行くのを見ながら飛行艇の屋根に上がったまま戻らない主を思っていた。上り側にふっと寂しげな顔を見たからだ。
(何故あんな顔を........何があるんだ)
後、後少しだけ待つ。戦闘をしている様な音はしていないし、そもそも魔剣を持っていなかった。掌大の魔石をベルトに挟んではいたが.........
心配してウロウロするアシュケの頭の上から不意に声がした。
「アシュケ.................」
バッと顔を上げる。目の先には逆光で顔がハッキリ見えないが、金茶髪の主が立っていた。
「レジンさ.........王」
「ふふ。わざわざ王なんて呼ばなくて良いよ、アシュケ。俺は力など無い唯の男だ。さて、次のシナリオに進もうか」
「.................はい、レジン様。やはりダヤン様が?」
「さあ?随分大掛かりになったが.........悪くない。このバドワージウ国に手を出した奴らに.........お仕置きしに行こうか」
「.........ふふ。はい。レジン様。付いて参ります、どこまでも」
「それこそ大袈裟だよ、アシュケ。言ったろ?俺は唯の力の無い男だって。お前らが居るから俺は前に進めるのさ。感謝している。帰ったら恩赦を弾まないとな。ははっ!」
「それは楽しみです」
レジンがゆっくり梯子から降りてくる。
少し目が赤いがいつもの主だった。
「おそらく魔剣を持って行かれた。色々お痛が過ぎる様だ。見せしめしとくか。あのデカ腹には」
「はい。仰せのままに」
レジンは決して優しいだけの男では無い。王子であった頃から非情な決断も躊躇わず下して来た。本人は腹が黒いと笑うがそうでは無い。その場その場の決断が的確なのだ。今回はシーラを奪われた為の特攻ではあったが、それだけでは終わらせないつもりであろう。もしかすると、国一つ潰すきっかけが出来るかも知れない。
それは....無論、ダヤンなら.........出来る。
(まあ、仕方ないか)
アシュケはふっと笑う。
2人が揃えば不可能など無いと思わせる安心感がある。
自分は着いて行くだけだ。体が動く内は付き従うつもりだ。どんなに役職が上がり、地位が上がっても断固として側に居た。レジンは仕方ない奴だな、と笑う。でも、もう解っているのだ。アシュケにとってそれが人生で一番楽しい事なのだと。
迷惑だろうが、死ぬなら2人の姿を見ながら死にたい。
魔術師に合図をして飛行の術で崖上へ飛ばしてもらう。風を切りながら地面にふわりと降り立った。レジンも同じく地に足を着ける。その姿を見たバドワージウ国の兵士達は「おおおーーー!」と歓声を挙げた。
今崖上にはレジン達飛行艇からの帰還組と信者の暴挙を抑える兵士に囲まれた枢機卿率いる魔術師達と言う構図になっていた。通常であればもう終局に近いが枢機卿の態度が気になる。ニヤニヤ笑っていたのだ。
分かり易い。
ここで笑える程度胸があるとも思えなかったのでおそらく先程得意げにペラペラと話していた《神聖魔法》でも使う気なのだろう。どれくらいの規模のモノを用意しているか判らないがこちらも魔術師がおり、対魔術の訓練もして来ている。
いや、もしかしたら王都に攻撃をして来る可能性もある。そうなれば.........戦争だ。ここは少し様子見をする事にしたレジン。
ダヤンの仕組んだ芝居、いや、素材。
(俺はそれを上手く調理しないとな...........)
アシュケは指示を出した後、魔術師達が飛行の術が掛かった魔石を使い崖上に兵士を救出して行くのを見ながら飛行艇の屋根に上がったまま戻らない主を思っていた。上り側にふっと寂しげな顔を見たからだ。
(何故あんな顔を........何があるんだ)
後、後少しだけ待つ。戦闘をしている様な音はしていないし、そもそも魔剣を持っていなかった。掌大の魔石をベルトに挟んではいたが.........
心配してウロウロするアシュケの頭の上から不意に声がした。
「アシュケ.................」
バッと顔を上げる。目の先には逆光で顔がハッキリ見えないが、金茶髪の主が立っていた。
「レジンさ.........王」
「ふふ。わざわざ王なんて呼ばなくて良いよ、アシュケ。俺は力など無い唯の男だ。さて、次のシナリオに進もうか」
「.................はい、レジン様。やはりダヤン様が?」
「さあ?随分大掛かりになったが.........悪くない。このバドワージウ国に手を出した奴らに.........お仕置きしに行こうか」
「.........ふふ。はい。レジン様。付いて参ります、どこまでも」
「それこそ大袈裟だよ、アシュケ。言ったろ?俺は唯の力の無い男だって。お前らが居るから俺は前に進めるのさ。感謝している。帰ったら恩赦を弾まないとな。ははっ!」
「それは楽しみです」
レジンがゆっくり梯子から降りてくる。
少し目が赤いがいつもの主だった。
「おそらく魔剣を持って行かれた。色々お痛が過ぎる様だ。見せしめしとくか。あのデカ腹には」
「はい。仰せのままに」
レジンは決して優しいだけの男では無い。王子であった頃から非情な決断も躊躇わず下して来た。本人は腹が黒いと笑うがそうでは無い。その場その場の決断が的確なのだ。今回はシーラを奪われた為の特攻ではあったが、それだけでは終わらせないつもりであろう。もしかすると、国一つ潰すきっかけが出来るかも知れない。
それは....無論、ダヤンなら.........出来る。
(まあ、仕方ないか)
アシュケはふっと笑う。
2人が揃えば不可能など無いと思わせる安心感がある。
自分は着いて行くだけだ。体が動く内は付き従うつもりだ。どんなに役職が上がり、地位が上がっても断固として側に居た。レジンは仕方ない奴だな、と笑う。でも、もう解っているのだ。アシュケにとってそれが人生で一番楽しい事なのだと。
迷惑だろうが、死ぬなら2人の姿を見ながら死にたい。
魔術師に合図をして飛行の術で崖上へ飛ばしてもらう。風を切りながら地面にふわりと降り立った。レジンも同じく地に足を着ける。その姿を見たバドワージウ国の兵士達は「おおおーーー!」と歓声を挙げた。
今崖上にはレジン達飛行艇からの帰還組と信者の暴挙を抑える兵士に囲まれた枢機卿率いる魔術師達と言う構図になっていた。通常であればもう終局に近いが枢機卿の態度が気になる。ニヤニヤ笑っていたのだ。
分かり易い。
ここで笑える程度胸があるとも思えなかったのでおそらく先程得意げにペラペラと話していた《神聖魔法》でも使う気なのだろう。どれくらいの規模のモノを用意しているか判らないがこちらも魔術師がおり、対魔術の訓練もして来ている。
いや、もしかしたら王都に攻撃をして来る可能性もある。そうなれば.........戦争だ。ここは少し様子見をする事にしたレジン。
ダヤンの仕組んだ芝居、いや、素材。
(俺はそれを上手く調理しないとな...........)
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