人間三原則

こーぷ

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第2章　ヒューマンバトル

63話　戦いの後のロメイ

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　そこには、薄暗い部屋の中で毛布に包まりガタガタと震えている、あるリプレスが居た。

「し、信じられねぇ……たかが人間がリプレスを10体以上倒しちまうなんて──そ、それにあのウーヴェさんすら、アイツには勝てなかった……」

　そのあるリプレスとはロメイであった。

　ロメイの様子は常に何かに怯えている様子である。

「く、くそ……に、二度あの人間とは関わねぇーぞ……」

　スクエとウーヴェの勝負の末を見たロメイは、まさかウーヴェが負ける事を想定してないなかった。

　そして、ウーヴェを倒されて、次は自分の番だと考えて、慌てて自分の家に戻った。

　自身の家に戻ったロメイはスクエな恐怖を覚え──既に数日経過した今でも怯えている様だ。

「お、落ちつかねぇーと……」　

　恐怖による手足の震えを抑える為に、ロメイはノーブルメタルを吸おうするが……

「ね、ねぇーぞ……ノーブルメタルはどこだよ！？」

　相当情緒不安定なのか、家中を荒らしながらノーブルメタルを探すが見つからない。

「か、買いに行くしか無い……」

　注文する事で、いくらでもドローン型のイナメイトが運んでくれるのだが、そんな事すら頭が回らない様子である。

「か、金はウーヴェさんの所で働いてたからあるんだよ」

　ブツブツと独り言を唱えながら家を出る。

　しかし、ロメイは常に周りに気を配りながら歩く。
　それは、まるで殺人鬼にでも追い掛けられているのでは無いってくらいに、少し進み背後を確認する。

　こうして、なんとかノーブルメタルを買い、店の外に出た。

「は、早く吸わないと……」

　ロメイは買ったばかりのノーブルメタルを吸った。

「ふぅ……毎回こんな調子じゃ身体が持たねぇ……」

　吸った事により、大分落ち着いたのかロメイは思考がクリアになるのを感じた。

　家に戻る為に街を歩くが、街にある大型ディスプレイを見てロメイが止まる。

「そうか……もう少しでヒューマンバトルが始まるのか……」

　ディスプレイでは、次々とヒューマンバトルの情報が流れていた。

「優勝者にはノーブルメタルを次のヒューマンバトルまでずっとだと……？」

　驚愕の優勝賞品に目を見開くロメイ。
　
　それも、そうだろう。

　現在のロメイは働いていない。

　働いていない為、お金は減っていく一方である。そうすると、ノーブルメタルが買えなくなる事をロメイは危惧している。

「ここ最近は、コイツが無いとまともな精神状態を保ってられねぇ……」

　ノーブルメタルには精神が安定する効果もある為、気分を落ち着かせる為に吸うリプレスが多い。

「もし、優勝すれば……」

　ロメイはある決意をする。

「持ち金全て使って奴隷を買おう……」

　今持っている金を全て使っても強い奴隷は買えないが、ただの奴隷であれば余裕で買える程には持っているロメイ。

「奴隷を買いに行くぞ……」

　こうしてロメイは奴隷が売っている場所を回り始める。

　しかし……結局奴隷を買う事は無かった……

「クソ……なんでだよ……」

　ヒューマンバトルが始まる事が大体的に発表され、ロメイの様な考えを持ったリプレスが奴隷市場に殺到した。

　そして、安くて良い奴隷はもちろんの事、戦闘用奴隷は買い尽くされてしまったのだ。

「お掃除用奴隷で、どうやって戦えって言うんだよ……」

　今までの人生を変える為にと、一発逆転を狙ってヒューマンバトルに参加しようと決めたロメイであったが最初の段階で躓いた様だ。

「俺は何やってもダメな奴だ……」

　精神的に落ちている状態なのかロメイはトボトボと顔を下に向けて歩く。

　その様子は正にリプレスに奴隷にされている人間と同じであった……

　そんな、ロメイが自分の家に帰る為に歩いていると、何やら声が聞こえて来た。

「コイツ！　また盗みに来やがったのか！」

──なんだ？

「お前見てぇーな、小汚い人間に食い物を売るのも嫌気が差すが、金払わないで盗む奴はますます気に入らねぇ！」
「す、すみません」
「許す訳ねぇーだろ！　ぶっ殺してやる！」
「もう、しませんから許して下さい」

　恐らく、リプレスと人間のやり取りだろう。

　ロメイはフラフラと声のする方に釣られて、移動する。

　何故、そんな厄介ゴトがありそうな場所に向かって歩を進めているのか自分自身でも理解して無い様だが、ロメイは騒ぎの場所に到着する。

　そこには、一人のリプレスが、片手で人間の髪の毛を掴み、もう片手で首を絞めていた。

「ヴッ……」
「お前はここで死ぬんだよ！　盗みを働いたんだから、文句は言えねぇーよな？」
「だ、だすげでくだざい……」

　その人間は何故か手をロメイに向かって伸ばして助けを求めて来た……

　そんな人間を見てロメイは、無意識に声を掛けていた。

「そ、その人間を離してやってくれないか？」

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