人間三原則

こーぷ

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第2章 ヒューマンバトル

59話 実力差

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「おっしゃ行くぜ……?」

 スクエは不敵に笑うと、カルモナに向かって走り出す。

──ッ!?

 走り出しでスクエは自身のスピードに驚く。

──これが身体スキルのスピードスターの能力か……すげぇーな!

 そして、スクエの右腕には鉄パイプが握られている。

「オラッ!」

 その鉄パイプをカルモナに向かって全力で振り下ろすが、余裕な表情をされながら避けられる。

「随分と大振りだな?」
「──まだまだ!」

 連続で鉄パイプを振り回すが、カルモナには擦りもしない様だ。

──ちっとも当たらねぇーな……

 スクエは当たる気配がしないのか、一度立ち止まる。

「どうした、もう終わりか?」
「んなわけねぇーだろ?」

──この際だしスキルをガンガン使って行くか!

 スクエは鉄パイプを握りしめる力を強めて再び鉄パイプを振り回す──しかし、先程とは違った……

「強斬!」

 スクエがスキルを叫ぶ──すると身体が自動的に動き始めて、カルモナの脳天に向かって、今まででは考えられない程鋭い振り下ろしになった。
 そして、鉄パイプの跡を追う様に赤い光が伸びた。

「レベル1のスキルか……」

 信じられ無いほどのスピードで振り下ろしたにも関わらずカルモナに避けられる。

「まだまだ!」

 強斬のスキルを避けられたスクエは直ぐに次のスキルを発動させた。

「平斬!」

 スキルを発動させると、まともや身体が自動に動くのを感じた様だ──そして次はカルモナの胴体を真っ二つにでもするのでは無いかと思う程の素早い横振りを放ったが、それすらも避けられてしまう。

「くっそ……やるじゃねぇーかよ……」
「だから、最初に言っただろう──俺は強いと」

──こいつ、どんだけ自信あるんだよ!

 すると、次はカルモナが動き始めた。

「避けろよ?」

 カルモナがスクエに向かって走り出しで手に持っている木刀をスクエに向かって振り下ろす。

「おっと!」

 その振り下ろしを鉄パイプで受ける。

「スキルはこう使うんだ」

 スクエはカルモナの振り下ろしを受けている──そしてその状態でカルモナが何やら呟いた……

「強斬」

 すると、今まで力が均衡していた筈なのに、スクエはいきなり自身の鉄パイプで受けている相手の木刀が重く感じる。

──な、なんだ?! 

 そして、カルモナは力押しをする様に木刀を振り切った。

「──ッ!」

 鉄パイプで受けていたが、急にカルモナがスキルを発動させた事により受け切れなくなり、後ろに下がってやり過ごしたスクエ。

 どうやら、この短いやり取りでスクエは悟る。

──こいつ、強ぇ……

 そもそも、見る限り二人の技量には大きく差がある様だ。

──今の俺じゃ勝てねぇーな……

 スクエが、そう感じてしまう程カルモナには何かがある様だ。

「そろそろ、ギブアップしたらどうだ? ──お互いヒューマンバトルの前に怪我はしたくないだろ」
「へへ、気を使ってくれているのか?」

 ギブアップを提案してきたカルモナを一目見る。

「アンタは確かに強い──けど、手が無い訳では無い!」

 スクエは一度だけ、ノラをチラリと見る。

 すると、ノラはコクリと一度頷いた。

「よし、許可も出た事だし、そろそろ本気出すぜ?」

 どうやら、スクエはこれから、ヒーローとしてのスキルを使う様だ。

「おい、カルモナとか言ったか?」
「なんだ?」
「次の攻撃は必ず武器で受け止めろよ? ──避けて、どこかに鉄パイプが当たったら大変だからな」   
「……」
 
 そして、またもやスクエがカルモナに向かって走り出す。

 そして、呟いた。

「グラッチ!」

 すると鉄パイプの先端が赤く光り始める。

「ん?」

 その見た事のない赤い光を気にしながらもスクエの攻撃を受け用と木刀を身構える。

「そんな木刀ぶっ壊してやるよ!」

 赤い光に包まれた鉄パイプをカルモナが持っている木刀目掛けてスクエは思いっきり叩きつけた。

 そして鉄パイプと木刀が接触した……

「──ッ!?」

 驚く表情をしたのは……スクエであった……

「な、なんでだ──なんで折れ無いんだよ?!」

 そこには、赤く光った鉄パイプを木刀で受け止めているカルモナの姿があった。

「何をそんなに驚いている……?」

 スクエの表情を見て不思議がるカルモナ。

──俺の能力が効かねぇ!?

 鉄パイプの先端を見るが、そこにはしっかりと赤い光に包まれていた。

 そして、スクエが動揺している間にカルモナは動き出し、木刀を振り下ろした。

「──ッいっ!」

 スクエは後ろに飛ばされる様に倒れ込む。

「く、クソ……」

──は、早く立ち上がられねぇーと

 鉄パイプを杖代わりにして立ち上がるが、既に目の前にはカルモナが居た。

「苦しませるつもりは無い──強斬」

 スクエの頭に木刀が直撃し、気絶する……

「ス、スクエ!?」

 観客席から慌てて走り寄るノラの表情は信じられない様子であった……

「ほほほ、カルモナご苦労様です──やはり貴方を買って正解だった様ですね」

 地面に膝を突いて奴隷であるスクエを心配そうにしいるノラを見て微笑んでいる。


「それにしても、先程の一撃はスカッとしました──これがヒューマンバトルであれば良かったんですがね……」

 ニヤリと笑うモンティロ。

「さて、私達は帰りますよ」
「はい」


 こうして、笑顔でモンティロは退散し、その後をカルモナが付いて行くのであった……

 



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